平成20年度 第4回-2 国際情勢研究会 「世界金融危機に直面する中国の政治動向」 東京大学 大学院法学政治学研究科教授 高原 明生【2008/11/14】

日時:2008年7月18日、場所:(財)貿易研修センター

平成20年度 第4回-2 国際情勢研究会
「世界金融危機に直面する中国の政治動向」


東京大学 大学院法学政治学研究科教授
高原 明生

高原 明生 中国では今年は改革開放30周年といわれ、日本でもそのように報道されている。しかし本当に改革開放30周年なのか、というところをまず問いたい。改革開放30周年と中国共産党が言っているのは、78年12月に開かれたいわゆる三中全会、第11期中央委員会の第3回総会で改革開放路線が始まったとされているからだ。ところが実は、鄧小平以前に華国鋒も、改革と開放をやろうといっていた。開放の方は割と知られていて、日本も含めた外国からたくさんのプラントを輸入し、急速な工業化をやるとしていた。そして78年半ばには、華国鋒も生産関係、経済制度の改革を大胆にやらなければいけないと唱えていた。
 私がいいたいのは、1つは、中国共産党はものすごい宣伝力を持っているということだ。そして今年、改革開放30周年といっている1つの理由には、シンボルとしてのこの言葉が持つ力が関係している。「改革開放」を鄧小平が始めたことにより、中国庶民の生活がこんなによくなった、中国の国力はこんなに高まった、と過去30年の中国共産党の統治を正当化する、その有力なシンボルとして今、この概念が使われているのだと思う。
 中国は今、難しい時期に差しかかっている。先日開催された第17期中央委員会の三中全会では、3つの大きな議題があった。1つは当面のマクロ経済の問題、金融危機にどう対処すればよいかという話だ。9月に来日した中央政策研究室の副主任、鄭新立氏の話では「9%を切ったら大々的に財政出動する」ということだった。そして10月には第3四半期のGDP成長率が9.0%ということになり、今や断然、財政出動するのだという状況になっている。もう1つの重要な課題は、農村改革だ。会議の前は、場合によっては農民に土地の所有権を渡すのではないかという話まで中国のメディアに出ていた。しかし実際には、土地の私有化はやはり認めない、したがって土地の用途も変えられないと強調する結果になった。さらにもう1つの課題は人事で、于幼軍という文化部の副部長が中央委員を解任された。数年前の深?市長時代の汚職、腐敗問題を取り上げられて解任されたのだが、汚職、腐敗は誰にもまとわりつくようなことで、解任の背景には権力闘争が絡んでいた可能性も否定できない。
 胡錦濤政権が強調しているのはバランスのとれた発展で、都市と農村の間のバランス、沿海や内陸といった地域間のバランス、経済成長と教育水準、衛生水準の向上など社会発展との間のバランス、生態系のバランス、国内の発展と対外進出のバランスを特に重視するとし、それを「科学的発展観」と称してきた。しかし地方は自分のところの状況しか考えないので、均衡発展か快速発展かという意見対立には中央対地方の論争も絡む。
 中国人の対日イメージは最近、どの世論調査を見てもよくなっている。おそらく四川大地震の際の救援隊などに対する評価が効いているのではないか。また胡錦濤政権になり、持続可能な発展が重視されるようになったので、日中の波長が合ってきたのではないかと思う。日中の良好な政治関係は、しばらく続くのではないか。

(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

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担当:総務・企画調査広報部