平成21年度 第4回 アジア研究会 ●報告1「ホンダのASEANビジネスとメコン地域諸国における諸課題~ビジネス環境を中心に~」本田技研工業株式会社 渉外部 主幹 村岡 直人、●報告2「CLMVの投資環境と中国の接近」経済産業省 貿易経済協力局 技術協力課 課長補佐 折山 光俊【2009/12/03】

日時:2009年12月3日

テーマ「メコン経済圏におけるビジネス展開の可能性」

平成21年度 第4回 アジア研究会
報告1「ホンダのASEANビジネスとメコン地域諸国における諸課題~ビジネス環境を中心に~」


本田技研工業株式会社 渉外部 主幹
村岡 直人

村岡 直人 ホンダはモビリティをキーワードに、モビリティにかかわるものなら何でもチャレンジするカルチャーをもっている。1948年に二輪でスタートし、その後は小型エンジンを搭載した発電機、耕運機、芝刈り機、除雪機といった汎用製品を生産、販売、そして四輪車に進出した。四輪車では最後発メーカーだが、現在は売り上げの8割ほどが四輪車だ。そしてロボットやジェット機、太陽光電池などにも取り組んでいる。
 昨年の世界における二輪車販売台数は1500万台で、約3分の1のシェアだ。そしてその8割以上は、アジアとオセアニアにおける販売になっている。中国は最大のマーケットだが、模倣品が席巻しているため、シェアでは1割を切る。一方、インドやインドネシア、ベトナムなどでは大きな販売台数を実現している。四輪の販売台数では依然として北米のウェイトが高く、中国やアジアの販売は増えているが3割程度になっている。日本における販売台数のウェイトは少なく、海外が9割近いのだが、海外販売については基本的に現地生産がベースになっている。そしてもう1つ、「二輪から四輪へ」というポリシーがあり、ほぼすべての国でまず二輪で進出、その後に四輪へ進出している。
 アジア各国の二輪車の生産・販売台数を見ると、インド、インドネシア、ベトナムで生産台数が多いが、二輪車の特徴は生産台数と販売台数がほぼ同レベルということだ。また部品の現地調達も徹底的に進めており、その比率は100%近い国が多い。従って国ごとにビジネスがほぼ完結しており、商品や部品のやり取りはあまりない。このため、関税や輸出入の手続きはあまり問題にならない。二輪車の市場規模は非常に大きく、その国だけで現地生産をしても十分なスケール・メリットが得られる。また国によって好まれるモデルが異なるため、共通の開発はタイや日本で行い、それぞれの国で微妙に異なるモデルを開発、生産している。
 一方、四輪車については、タイでは生産台数が16万台、販売台数が9万台で、生産が販売を大きく上回る。これは約半分を輸出しているということで、タイは重要な輸出拠点だ。また部品については各国で集中生産し、相互にやり取りしている。タイでは二輪の市場が成熟してきており、ホンダではタイをアジアにおける商品開発の中核に据え、また環境に配慮した開発の先駆けとしても位置づけようとしている。
 ベトナムでも二輪車、四輪車の双方を製造販売しており、二輪車の生産能力は150万台だ。ベトナムの二輪車市場については、国境を接していることから中国車の流入が多い。2000年以降、中国車が大量に入ってきて、マーケットのほとんどが席巻されたこともあった。中国製の模倣品は値段がホンダの製品の2分の1から3分の1で、流通経路も非常に複雑化しており、対応に苦慮している。カンボジアとラオスについては、ホンダの資本による生産は行っておらず、いわゆるT/C契約となっている。カンボジアへは部品をベトナムとタイから、ラオスへはベトナムから供給し、生産委託、技術供与をしている。四輪は生産しておらず、完成車を若干、輸出している。ラオスの生産規模は小さく、カンボジアでは直近は少し厳しいものの、順調に拡大している。
 ホンダのASEANにおけるビジネスは、ほとんどの国で、T/C契約で委託生産をする段階から、資本を投入して現地生産するようになってきている。また現地生産が進展した後、部品をできる限り現地で調達している。そしてタイのように、開発の現地化もやっていくことになる。その段階とほぼ並行し、二輪から四輪へということで、ASEANでのビジネスを進化させてきた。今後も経済成長に従い、こういったことを実現していきたい。また現地化のビジネスを進めているので、海外で生産し部品を現地調達する一方でコア技術の開発を日本で行うとなると、対価をどのように回収するかという問題に必ず突き当たる。中国やインド、ブラジルなど、あらゆるところで知財対価回収の問題に突き当たっており、ここが1つの大きな課題だと思っている。

報告2「CLMVの投資環境と中国の接近」


経済産業省 貿易経済協力局 技術協力課 課長補佐
折山 光俊

折山 光俊 日本企業が海外進出する際には、労働者の賃金や電力料金などのコストが1つの検討材料となる。賃金に関しては、ベトナムでは1500ドル以上の年間負担額だが、ミャンマーのヤンゴンでは3分の1程度だ。ミャンマーとベトナムは、この中間に位置する。私の感覚では、ラオスとカンボディアの賃金は実経済と比べて割高だ。これは都市生活者が嗜好品などを購入する場合、国産品がほとんどなく、輸入品を購入せざるを得ないためだ。さらに工業が遅れていても、観光客や援助関係者など在留外国人が落としていくお金が少なくないので、経済がゆがんだ形になっている。ミャンマーは幸か不幸か鎖国状態にあるため、賃金が非常に安く、経済もゆがんでいない。一方、電力料金についてはかなりの幅があり、水力発電があるラオスは有利、カンボディアは東南アジア諸国連合(ASEAN)で最も高い水準だ。ミャンマーでは停電が多く、自家発電が必要になるのでコストが高い。
 総合的に考えると、実はタイの競争力は非常に強い。労働コストはASEANでも高い方だが産業集積が進んでおり、部品の調達で有利だ。また、労働者の質も高い。一方、繊維製品の価格競争ではカンボディアが有利だが、状況は変わりつつある。ラオスに関しては、タイの補完として活用する使い方がリスクも少なく、コストも安い。ミャンマーには圧倒的に安い労働力、繊維や靴のLDC特恵などがあり、非常に魅力的だ。ヤンゴンからの輸出はマラッカ海峡経由で不利な条件だが、バンコクまでの陸路が整備されれば問題は解決される。さらにベトナムに関しては、組立産業ではタイとかぶる部分がある。勤勉といわれる労働力や比較的安い賃金がメリットだが、問題は裾野産業の欠如だ。またベトナムの場合、ミャンマーよりも経済成長が著しく、水準も高いので、国内市場向け産業のチャンスもある。
 付け加えると、どうも日本は人材育成機関の育成が下手だ。産業がない段階では、当該産業固有の技術を持った人材は育たない。産業がなければ人材も育成できず、人材がいなければ投資家に対するセールストークがないという鶏と卵の議論になってしまう。一方、各国に投資する場合のリスクだが、基本的にどの国でも手続方法は明確にされており、規制業種も担当官庁も決まっている。しかし実際には、申請する際に話合いをしながら内容を固めていくことが多い。また外国為替関係では、基本的に各国とも外貨による利益送金が認められている。その一方で、国内での外貨決済は、カンボディアを除いて禁止されている。
 それ以外の注意事項を述べると、カンボディアは申請処理手続でいろいろ問題があるほか、インフラが整備されていない。ラオスについては投資認可がケースバイケースで、色々な条件を付けられることがある。また、インフラにも注意が必要だ。さらに外貨決済ができないことにも、注意しなければならない。ミャンマーの最大のリスクは、厳しい外貨・貿易管理にある。またインフラは極めて悪く、電力供給は極めて不安定だ。ベトナムでは、2009年から卸・小売が自由化されたが、実際に店舗を開設する場合には人民委員会の許可が必要とされる。そして最後に中国の接近だが、ベトナム以外の国では、中国の投資額がずば抜けて多い。またミャンマーでは、ミャンマー国籍を取った中国人が起業しているという話も聞く。

(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

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担当:総務・企画調査広報部