第94回-3 中央ユーラシア調査会 「カザフスタン・ウズベキスタン出張報告」日本貿易振興機構(JETRO) 海外調査部ロシアNIS課長代理 下社 学【2009/01/29】

日時:2009年1月29日

第94回-3 中央ユーラシア調査会
「カザフスタン・ウズベキスタン出張報告」


日本貿易振興機構(JETRO) 海外調査部ロシアNIS課長代理
下社 学

1. カザフスタン:09年の成長率、政府は3%程度と予測
 12月にウズベキスタンとカザフスタンへ出張した。2カ国を訪れたきっかけは、グローバルな世界金融危機の影響が中央アジアにどのように出ているかを調査することだった。一言で申し上げれば、大体予想していたとおりだったが、カザフスタンの方がより打撃が大きいという気がした。言い方を変えれば、カザフの方がより直接的、ウズベクにはもう少し間接的な影響が出ているように感じた。
 カザフでは、中央銀行の方からお話を伺った。それによれば、インフレはもうカザフでは沈静化したので、これから実体経済を浮上させるために、マネーサプライなどを拡充するということだった。これは自画自賛しているように聞こえるが、実際にそれなりの実績を上げている。個人的に一番面白かったのは以前、貿易研修センターで招聘されたドスム・サトパエフ氏にお会いしたことだ。この方はいろいろなカザフのメディアにも登場され、いわゆる政府批判的なことを平気でいっている。危なくないのかと思うほどなのだが、今回も言いたい放題だった。しかし非常にシャープで、まず「原油価格が落ちており金融危機だが、カザフ経済はどうか」と尋ねたところ、「極めてシリアスだ」という。そして面白かったのは、「外国投資家への圧力が以前にも増して強くなる」といっていたことだ。危機で国家の歳入が減ると、歳入以外のいわゆる石油安定化基金の積み立ても減少する。するとより保守的な政策を政府が取るようになり、外国投資家への圧力が強まる。また「2009年の経済の見通しはどうか」と伺ったところ、政府は3%ぐらいの見通しで、かなりモデストな予測ということだった。これまでは10%で来ていたので、3%という勇気も相当なものだ。
 カザフについては、われわれには石油やウランなど資源が経済を牽引しているように見えるが、実際には建設、不動産といったサービス部門が成長に相当寄与している。そしてそこに流れていたマネーがまさに断ち切られたがゆえに、これだけ経済の落ち込みが見られるということだと思う。サトパエフ氏いわく「政府は09年については3%程度の成長といっているが、2%でも高いのではないか」ということだった。
 先ほどの「外国投資家への圧力」にも通じるだろうが、今後は経済全般に対する政府のコントロールが強化されるだろう。その一端として既に昨年11月の時点で、政府は大手4銀行の株式を25%までを上限に取得するとしている。資本注入という名目で、政府に発言権、経営に参画する余地が出てくる。これには銀行の反発も当然あり、カズコメルツバンクのアスタナ支店副店長の話では、確かに銀行と政府の間に一種の対立のようなものがあるという。ただその副店長いわく、カズコメルツバンクにとっては政府が資本注入して購入する株式のポーションは大した影響力を持つシェアにはならないということだった。
 またサトパエフ氏は、「カザフはこの世界的な経済危機でCISの中で一番影響を受けている」といっていた。ロシアやウクライナも相当影響を受けていると思うが、彼曰く「カザフが一番」だという。原油価格が下落し、急に金回りが悪くなって商業銀行がお金を借りられなくなり、それが不動産部門に回らなくなった。まさに八方ふさがりのような状態だが、一方で「一番早く金融危機の影響を被ったがゆえに、一番早く脱却できるだろう」という大胆な論旨を展開されていた。またサトパエフ氏によれば、「カザフはこれまでイージー・マネーに慣れ過ぎた」という。要は手軽にお金を借りて不動産に投資し、バブルになって皆地に足がつかなくなりふわふわしていた。「07年のサブプライムのときに、もう少し学んでおけば、今になってここまであたふたしなくてもよかった」ということだった。

2. ウズベキスタン:個人事業者が活発化
 ウズベキスタンでもいろいろな方にお話を伺ったが、ここはカザフよりインタビューの内容がセンシティブだ。1つは政府系のシンクタンクへ行き、行く前から話の内容はわかっているというようなところなのだが、それでも「一応、聞いておかなければ」ということで行った。ここは経済調査センター(CER)というが、それでも気の利いたお話をしてもらえたという気がする。
 ここの所長はウズベク人だが、比較的正直に答えてくれるといわれている方だ。「原油価格が落ちているが、お宅の国ではいかがか」と伺ったところ、当然ながら「石油をそれほどつくっておらず、カザフのように国外市場、ヨーロッパ市場でも資金調達も行っていないのでダメージはあまりない」という。むしろいろいろなコストの引き下げが、有利に働いているということだった。これは本当かわからないが、事実無根ではないだろうという気がした。成長率は09年の見通しも、政府発表では8%で、カザフのようにペシミスティックではない。
 そして欧州復興開発銀行(EBRD)のタシケント事務所の方にも聞いたところ、「09年は厳しい年になる」といい、理由は3つあるということだった。1つは、出稼ぎ送金の大幅な低下だ。彼の見立てでは、08年がウズベク人の出稼ぎ労働のピークだったという。主な行き先はやはりロシアやカザフで、ドバイや韓国にも行っている。年間20-25億ドル程度が送金されたといわれるが、「実際には40億ドル相当になるだろう」といっていた。統計の信憑性はあるものの、40億ドルならGDPの20%程度に相当する。
 そして第2に、輸出の減少がある。これはやはりウズベクの輸出産品、綿花、金、そしてGMウズベキスタンがつくっている車で、ロシアなどで売っているが、ロシアの自動車市場が相当縮小している。そして第3に、所得減少に伴うサービス業の低迷がある。要はウズベク経済でもサービス業が占める割合が近年大きくなっているので、そこが低迷するという見立てだ。ただ「サービス業が低迷する」といっているが、他方で面白かったのは、「個人事業者は非常に活発化している」ということだった。活発化している背景には何があるのかというと、2005年5月にウズベクでアンディジャン事件があり、やはり当局も第2のアンディジャンが起きることには相当神経を尖らしている。したがって政府は個人事業者の活動を規制緩和する、といったガス抜き的な措置をやってきた。それが今、ようやく少しずつあちこちで芽が出て、個人事業者が活発化しているところだとEBRDの方は指摘されていた。

開催風景
(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

詳細PDF


詳細PDFをご覧いただくにはIISTサポーターズ(無料)へ登録後に発行されるユーザ名、パスワードが必要です。またご登録後は講演会・シンポジウム開催のご案内をお送りさせていただきます。
ユーザ名、パスワードを忘れてしまった会員の方はこちらからご請求下さい。

Keirinこの事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。



担当:総務・企画調査広報部