第95回-1 中央ユーラシア調査会 「我が国の中央アジア・コーカサス外交-最近の動きについて」外務省欧州局中央アジア・コーカサス室長 北川 克郎【2009/05/22】

日時:2009年5月22日

第95回-1 中央ユーラシア調査会
「我が国の中央アジア・コーカサス外交-最近の動きについて」


外務省欧州局中央アジア・コーカサス室長
北川 克郎

1.中央アジア・コーカサス地域の重要性、我が国との関係
北川 克郎     日本から見ると、この地域は欧州とアジア、ロシアと中東を結ぶ十字路にあたり、地政学的重要性がある。この地域の安定はユーラシアや世界の安定につながるという意味で、非常に重要だ。そしてもう一つ、この地域にはエネルギー資源が非常に豊富で、こういった資源を必要とする我が国にとりこれらの国々との付き合い方は重要になる。これらを踏まえ、われわれは(1)民主化、市場経済化、地域内協力の促進、(2)エネルギー安全保障のための資源外交の展開、(3)テロとの戦い-をこの地域との外交の基本方針にしている。
 特に近年は首脳外交も活発化になり、ここ2、3年だけでも、8ヵ国のうち5ヵ国の首脳が来日した。我が国からも小泉純一郎元首相が2006年8月にウズベキスタンとカザフスタンを訪問し、活発な外交を展開している。さらに大臣レベル、政治のハイレベルなどで頻繁に往来を深めるべきと考え、いろいろな方に行っていただき、各国の首相や大臣にも日本へ来ていただいている。またソ連からの独立後、ほとんどの国で既に大使館を立ち上げたが、特にこれまではなかったグルジアに今年1月に大使館がオープン、来年にはキルギスに常駐大使を派遣する方向で今、準備している。
 これらの国々とはまた、経済・投資、企業の進出に関しても、最近関係が深まっている。各国とは投資協定、租税条約を締結する取り組みも進めている。さらに文化的交流も推進しており、現地での日本文化の紹介、現地の文化を日本で紹介する取り組みを行っている。
 また「中央アジア+日本」対話というのが、日本政府の対中央アジア外交における大きな枠組みになっており、2006年6月には東京で第2回の外相会合を開いた。特に中央アジア諸国の地域内協力がそれぞれの国の発展に不可欠と捉え、われわれはそのための触媒となり、様々な協力を行うことを目標に進めている。協力分野の柱は、政治対話、地域内協力、ビジネス振興、知的対話、文化交流、人的交流の5分野である。
 コーカサス地域のうちグルジアとアゼルバイジャンについては、ウクライナ、モルドバとの間でGUAMという地域的な枠組みがあるので、「GUAM+日本」ということで地域と日本の協力の枠組みをつくっている。さらに国際場裡における協力、第三国との連携・協力として、この地域の国々とは単なる二国間関係にとどまらず、それ以外のマルチの分野の取り組みでもいろいろ意見交換をし、協力してもらっている。一番重要なものは国連改革で、日本の安保理常任理事国入りを含めた安保理改革については、この地域の8ヵ国に非常に好意的に受け止められ、支持してもらっている。  

2. 中央アジア諸国における最近、近い将来の注目すべき動き
 次に各国の状況だが、キルギスでは大統領選挙が7月23日に行われる予定で、客観的な見方としては現職大統領が非常に有利だといわれている。そしてマナス基地からの米軍撤退だが、今年2月にキルギス側からアメリカ側に米軍駐留期限の終了を通告した。協定では180日以内に米軍を撤退する必要があるとしているが、現時点でも米軍は活動を行っており、本当に180日となる今年8月18日までに撤退するのか、最後まで予断を許さない状況だ。
 金融、経済危機の影響については、特にカザフスタンで大きいと思う。カザフスタンは国内総生産(GDP)がこの地域では特に多いだけでなく、国内経済の体制も、比較的早期から西側の経済体制を取り入れている。昨年の経済危機、金融危機などの影響で、建設業、不動産業の成長が急激に減速し、それに原油価格の大幅な下落も加わって、国家経済全体の成長率が急激に落ち込む事態になっている。政府はいろいろな対策をとっているが、まだ危機を完全に脱却したとはいい切れない状況だ。
 ウズベキスタンについては、危機の影響は非常に小さいと聞いているが、出稼ぎでロシアやカザフスタンへ行っている方からの送金が減る、あるいは各国からの投資が減る、一次産品の価格が低下する、といった悪影響が見られる。
 そしてこの地域を語る上で、水問題は避けて通れない。特に近年、問題の深刻さが増している。簡単にいうと、上流国であるキルギス、タジキスタンから、夏の時期に必要な水があまり下流国へ流れない。これは冬の寒い時期の電力需要のため、水をダムなどに蓄えておくためだ。その一方で、冬になると上流の国々が一気に放水するので、凍結した川の上を流れ、下流域では洪水が起きてしまう。現在はキルギスやタジキスタンにおける新規のダム建設をめぐって、下流域にあるウズベキスタンとの関係が緊迫化している。

3. コーカサス地域の状況
 コーカサスでは、アルメニアとトルコの関係改善の動きがある。アルメニアとトルコの国境は閉鎖されていたが、今年4月にスイスの仲介で、アルメニア、トルコとの3ヵ国の間で包括的枠組みが合意され、ロードマップが定められたという発表がなされた。しかしその後、具体的な動き、フォローがあまり見受けられない状況だ。またナゴルノ・カラバフ問題についても、昨年11月のロシア大統領のイニシアティブによる3ヵ国の首脳会談、今年5月の二国間の首脳会談などがあり、外交努力が続けられているが、現時点では解決策が見つかるのか、全く不透明な状況にあることに変わりはない。
 グルジア・ロシア関係に関する最近の動きとしては、ロシア側が南オセチア、アブハジアとの間で国境警備に関する協定に署名し、それによってロシアの国境警備隊が南オセチアとアブハジアに配備される事態が起きている。国際社会における努力としては、ジュネーブ会合というのが開かれており、次回の会議は7月1日に開かれる。
 われわれは各国だけではなく、地域機関の動きも注意を持ってフォローしている。例えば上海協力機構(SCO)では、今後も加盟国やオブザーバーという組織的な立場を得なくても、テーマごとに協力できるところは協力し、議論に参加するという方針で臨んでいきたい。
(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

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担当:総務・企画調査広報部