第95回-2 中央ユーラシア調査会 「日本とキルギス共和国の経済関係強化に向けて」経済産業省通商政策局 ロシア室長 小嶋 典明【2009/05/22】

日時:2009年5月22日

第95回-2 中央ユーラシア調査会
「日本とキルギス共和国の経済関係強化に向けて」


経済産業省通商政策局 ロシア室長
小嶋 典明

1. ビジネス・フォーラム開催までの経緯
小嶋 典明     今年2月にキルギスでビジネス・フォーラムを開催したので、きょうはそれを中心にお話ししたい。キルギスのバキエフ大統領が2007年11月に日本を公式訪問し、この際、福田総理と会談を行い、共同声明の中で貿易経済関係強化のために必要な環境整備に努力することを表明、互いに取り組みを進めていくことになった。また昨年7月には経済産業省の山本香苗政務官がキルギスを訪問、バキエフ大統領らと会談し、投資環境整備ネットワークを設立することで合意している。
 キルギスでは10年ほど前に、当時の金属鉱業事業団と三井金属資源開発の関係者が人質になった事件があった。そうしたことから金属関係の方には若干、警戒感がある。また国内の鉱物資源に関する情報があまり出されていない点も、企業が進出しにくいことの要因になっている。
 投資環境整備ネットワークでは今、設立に向けた最終的な準備を行っている。このネットワークは、経産省としては中央アジアの各国とつくっていこうと考えており、まずウズベキスタンとの間で昨年立ち上げた。双方の国にネットワーク型の組織をつくり、それを事務局でつないで情報交換し、セミナー、フォーラムも開催していこうというものだ。日常的にはビジネス情報の交換を行い、それぞれにホームページを立ち上げ、相手国に関する情報を載せる。ビジネス・マッチングも行う予定である。なるべくお金をかけずに互いの交流を深めていくことを考えており、最終的な打ち合わせを行ったうえで、6月か7月にも立ち上げたいと思っている。

2. ビジネス・フォーラム開催と今後の協力
 次に本題のビジネス・フォーラムだが、今年2月25日にビシュケクで開催した。日本側は周辺国からの参加も含め40人、キルギス側が80人で、思ったより人が集まり盛況だった。日本側からは私が行ったほか、現地の臨時代理大使も参加、さらに石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)、日本貿易振興機構(JETRO)、国際協力機構(JICA)から現地の所長らに出席していただいた。キルギス側は経済発展貿易商副大臣や大統領付属投資会議の事務局長らに出席していただいている。初日は会議で、2日目は経済特区、外資企業を視察した。
 セッション1では日本とキルギスの貿易投資関係発展のための政府間の試みということで、先ほどのネットワークについて私から紹介した。またJICAからは一村一品運動ということで、アジア・アフリカでの取り組みを紹介し、キルギスでも石鹸やドライフルーツに関して一村一品をやっているようで、うまく行っている事例が紹介された。キルギス側からは、現在のキルギスの経済情勢、展望、そして外国企業の投資誘致のためにどのような支援をし、投資環境整備に関与しているかということが紹介された。また、なかなか経済運営がうまく行かない部分もあるので、日本と協力しながら進めていきたいということだった。
 セッション2はキルギスにおける投資有望分野ということで、1つはエネルギー分野、具体的には水力発電を日本とも協力してやりたいという話があった。また鉱物資源に関する話もあったが、やはり出てきた情報はまだまだ不十分で、いろいろな人に話を聞いてみると、キルギス自体、あまり自分の国の鉱物資源の状況がわかっていない可能性もあるとのことだった。例えば調査を日本に依頼するという動きがあれば、政府開発援助(ODA)などでの対応も考えられると思う。また軽工業では繊維関係、手工芸品で結構よいものをつくっており、そういうものが紹介された。このほかITにも取り組んでいて、日本との協力を考えたいということだ。セッション3では欧州復興開発銀行(EBRD)から、キルギスの経済情勢に関するプレゼンテーションがあったほか、キルギス側からは法律事務所の方が投資法制などに関する若干専門的な話をした。
 2日目は視察で、1つは自由経済特区、これはビシュケクから1時間ほど車で行ったところにあるのだが、ここで中国企業のテレビ工場、イラン企業の洗剤工場、アラブ首長国連邦(UAE)企業の塗料工場、そしてトルコ系企業のペットボトル工場と印刷工場という5つの工場を見学した。この特区は153ヘクタールの敷地で、特区内の100%外資企業は3、4割に上るということだ。製品の7割以上を輸出した場合には、部品や材料を輸入する際、関税で大幅に優遇される。そして輸出の際にも優遇があり、7割を輸出できれば、かなり活動的には楽になるようだ。特区内では酒やタバコのような物品税がかかるもの以外は製造可能で、所有者や社長もキルギス人である必要はない。電気、ガス、水道、警備をした費用は、国内で販売したものの2%を特区に納めればそれでよく、それ以外はキルギス政府の負担になるということだ。まだ空きがあるので「日本企業もぜひ」とのことだった。また特区の外になるが、キルギスに進出している外資系の有力企業として、コカコーラの工場、そしてドバイの企業とキルギス政府の合弁によるタバコ工場も見た。
 こうした活動を継続し、まもなく立ち上がるネットワークを活用して、キルギス政府にもさらに投資環境の整備を進めることを要請し、われわれとしても協力できる部分はどういうところか考えていきたい。キルギスは人口が524万人程度でまだ所得が低く、内陸国でもあるため貿易投資には難しい面がある。今回のフォーラムには日本の商社やメーカーにも参加していただいたが、例えばODA案件などがあればともかく、そうでないとなかなか出にくいとのことだった。ただ今回のフォーラムには、IT関係のベンチャー企業の方も参加されていて、そうした人に伺うと、キルギスへの関心はあるということだった。ITに限らず、中小、ベンチャー企業についても、何か橋渡しができればと考えている。またキルギスではなかなかよい手工芸品をつくっているので、そういう物を扱っている業者に紹介し、少しでも貿易投資を活発化させていきたい。
 キルギスにはこれまで日本食のレストランがなかったというが、昨年日本人がビシュケクに店を出した。食のつながりからも、交流を深められると思う。大きなところはなかなか難しくても、小さいところからやっていこうと考えている。

(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

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担当:総務・企画調査広報部