第28回 IISTアジア講演会 「グローバル金融危機とアジア経済の今後」常葉学園大学教授・評論家 副島 隆彦【2009/01/27】

講演日時:2009年1月27日

第28回 IISTアジア講演会
「グローバル金融危機とアジア経済の今後」


常葉学園大学教授・評論家
副島 隆彦

副島 隆彦米オバマ政権の経済政策
 2009年1月20日に、バラク・オバマ新大統領の就任式があった。オバマ新政権の経済政策が次第に明らかになっている。なによりもまず景気対策として「巨大な財政刺激策(公共投資)」を実施する。それと減税が中心である。これらの政策実行で効果が出るのは8ヶ月以後といわれている。 
 2007年8月17日から始まった歴史的な大事件となるであろう、サブプライムローン危機から世界の金融市場が混乱し、住宅ローンの証券化から始まり、金融崩壊が資金供給を鈍らせ、やがて実体経済(タンジブル・エコノミー)にも悪影響を与えるようになった。これら大不況入りの悪影響が全世界へ波及し、減産による雇用の削減が顕著となっている。
オバマ政権に課せられた急務は、これらの大不況サイクルを断ち切ることである。ガイトナー財務長官とサマーズ国家経済会議委員長ら、クリントン政権時代からの経験を積んだ実務派を起用したが、これで乗り切れるとは考えない。景気刺激策、巨額の公共投資で更に政府部門の財政赤字を膨らませることになり、長期的には米国の衰退が進行するのではないだろうか。
 オバマ新政権の経済政策は、要約すると次のようなものである。 
クリーン・エネルギーの開発、金融取引への監督の強化、国民皆保険の公約、この間に減少した300万人の雇用創出、道路・橋架・学校などの公共工事の発注、環境エネルギーや社会保障分野への投資を柱とする大型景気対策である。 
 これらの諸政策には国民の期待も大きいが、同時に政府部門の累積の財政赤字の巨額の積み増し(総計5兆ドル、450兆円規模)となる。目先の金融機関の破綻阻止と、ビッグ3などへの公的救済資金の投入(08年10月~09年9月)だけで、財政赤字は1.2兆ドル(110兆円)膨らんだ。財政事情はかなり深刻である。
 オバマ政権の政策課題を、より具体的に要約すると、(1)景気対策(ニュー・ニューディール)、(2)税制改革(弱者救済、格差是正)、環境破壊(クリーン・エネルギー開発)、医療保険制度改革(国民皆保険)が骨子である。これらのうち景気対策の財政出動は、今後の2年間で約8000億ドル(70兆円)規模である。直面する失業問題と「グリーン・ニューディール政策」で、迫り来る大恐慌突入から脱出できるか、全世界が注目している。

グローバル金融危機と今後のゆくえ
 1850年代に石油掘削に成功したアメリカでは、1860、70年代にはスタンダード・オブ・ニューヨーク、ニュージャージーが設立され、1870年代にはカスピ海、1880、90年代にはサウジアラビアの石油を掘り、石油によるエネルギー革命が起こり、世界を変えていった。そして、1931年、それまでのスターリング・ポンド体制が崩壊、金とポンドの交換は停止され、1944年7月米ドルを世界の機軸通貨とするブレトンウッズ体制=IMF体制が成立した。
 しかし、このグローバル金融危機でフランスのサルコジ大統領は「もはや米ドルはキー・カレンシー(機軸通貨)ではない」と断言し、ヨーロッパ、BRICsなど、日本を除く各国は、新たな通貨体制に向けて動き始めている。私の説では、IMF体制(金・ドル体制)はニクソン・ショックで終わりを告げ、以後現在までの37年間はドルの信用力を石油で裏打ちした石油・ドル体制とする「修正IMF体制」であったとみている。しかし、この「修正IMF体制」もこの金融危機で2011年か12年頃には崩れるだろう。その後はコモディティ・バスケットという新しい通貨体制に移行するだろう。石油だけでなく、天然ガス、非鉄、金属、レアメタルなどを評価して通貨バスケットに入れようということだ。食料品、小麦からトウモロコシ、肉から全部入れ、それらを担保する世界通貨体制をつくるだろう。そして、おそらく中国、ロシアなどによって、中央アジアの辺りに世界決済銀行がつくられるのではないだろうか。そして、アジアに世界の中心が移っていくだろう。

(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

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担当:総務・企画調査広報部