2009年度アジア特別講演会(3)-2ものづくり企業、中国ビジネスへの挑戦「中国天津市における自動車解体技術協力について」 吉川工業 株式会社 取締役・営業統括部長 小南 雅稔【2009/11/12】

講演日時:2009年11月12日、場所:西日本総合展示場 新館3階 303・304会議室

2009年度アジア特別講演会(3)-2ものづくり企業、中国ビジネスへの挑戦
「中国天津市における自動車解体技術協力について 」


吉川工業 株式会社 取締役・営業統括部長
小南 雅稔

主催:財団法人貿易研修センター
共催:九州経済産業局、(独)中小企業基盤整備機構、九州経済国際化推進機構

小南 雅稔北九州市と天津市の覚書締結
 吉川工業は1920年に創業、新日本製鐵の協力企業として89年にわたって鉄鋼事業を行ってきた。この間、いろいろな技術、理論関係の研究開発をしている。吉川工業の事業は現在、鉄鋼事業、エレクトロニクス事業、エンジニアリング事業という3つの柱で成り立っている。今日お話するリサイクル事業は、エンジニアリング事業の中でやっている。
5月25日に中国の天津市で、北九州市の北橋健治市長と天津市の黄興国市長の前で、資源の再利用を促進していくための覚書に調印した。それを少し発展させたものとして、11月8日には日本の直嶋正行経済産業相と中国国家副総経理李の立会いの下、吉川工業と天津市の廃棄自動車解体企業が覚書に調印した。調印に至る経緯だが、5月7日に北九州市と天津市による日中間の循環型都市に関する協力の推進にかかる覚書の締結があり、これについては平成19年末に福田康夫総理が天津市を訪問した際、天津市と日本の間で省エネルギー、環境協力について検討することになったのが始まりだ。そして天津市から北九州市に、循環型都市協力に関する要請があった。その後、両市による検討と合意形成を経て、5月7日に両市長が覚書を締結、黄市長にはわれわれの会社を訪問していただいた。5月25日には北九州市と天津市の日中循環型都市協力事業、エコタウン協力をきっかけに、両市企業が自動車リサイクル分野での協力を開始した。協力事業では、天津市の循環型都市構築を実現するため、北九州市のエコタウンおよび中国との環境協力の経験を踏まえ、天津市の現状に則した効果的な政策支援を実施し、企業間交流を促進することが目的になっている。
 そして日本の経済産業省と中国の国家発展改革委員会の間で、省エネルギー、環境分野における協力の継続強化に関する覚書の調印がなされた。またそれを支援する形で国から市へ降りてきて、北九州市と天津市の間で覚書が締結された。その中では覚書に基づく協力の実施として、(1)天津子牙工業園のマスタープラン策定を支援する、(2)循環型経済、リサイクル分野の企業間交流を促進する、(3)天津市の行政、企業関係者の訪日研修を行う-としている。

中国の自動車リサイクルと吉川工業のELV事業
 中国の自動車保有台数は、2010年に5000万台から7000万台まで拡大する見込みだ。一方、廃車の台数は2005年までには150万台で、2010年には平均で約200万台になる見通しだ。ただ違法販売市場であり、適正な許可事業者による処理はこれよりはるかに低く、50万台強という感じだ。許可業者は市場での廃車買取競争に勝てないため、天津市では理論上3万台の廃車に対し、1万台程度しか回収できないのが実状だ。われわれもこの1万台をベースにしながら、事業化を検討していこうとしている。一方、中国における自動車リサイクルは現在、手作業がほとんどで、リサイクル率は高いが環境保全面では低い技術水準だ。モータリゼーションが進展する中国で循環型社会の構築がうまく進まなければ、将来大量な使用済み自動車が生み出され、「廃車の処理システム不足」、「不法、不適正の自動車改造・解体行為」、「環境意識の希薄さ」などから環境汚染が深刻な社会問題を発生させるだろう。
開催風景 吉川工業のELV事業では、吉川方式をとっている。これはライン解体方式で、車を製造するラインと逆工程を行く形だ。自動車をつくる場合、コンベアに乗せたりするが、当社では吊って移動していくハンガー方式だ。最初に「受入確認」の段階で、確実なマニフェストの管理を行い、ここでは外装・機能部品関係、要するにリユースできるものはとってしまう。次に「液類回収」があり、エンジンオイルやガソリンなどを回収する。それに続く「非金属回収」では、プラスチックやガラス関係の適正な処理をし、「解体」段階で足回り、エンジンやミッションをリユース、リサイクル市場へ送る。続く「非鉄回収」では、銅やアルミを回収する。これを「圧縮成型」し、高純度プレスで銅を0.3%以下に持っていく。この方式ではライン化による高効率化で解体設備の集約ができるほか、環境設備、廃液等の発生場所も集約でき、高効率かつ確実な処理ができる。

天津市におけるELV解体工場への支持
 今回、われわれは天津市に、超資源循環型ELVリサイクルシステムのコンセプトとして、(1)環境にやさしいリサイクル、(2)Car to Car、高級鋼をもう1度高級鋼にしたい-という2つを挙げた。1つ目についてはシュレッダーダストの発生しないプロセス、全部リサイクルシステムを導入し、鉄・非鉄部品の徹底分別と樹脂類の高度な分別を行っている。また地中・河川・海洋・大気への環境汚染防止ということで、燃料・廃オイル・廃冷却剤の工場内での完全な回収を行っている。そして完全な区画管理によって、油汚れのない工場にしている。さらに「自動車リサイクル法」の許可基準を達成した環境保全施設ということで、環境を考慮したものになっている。リサイクル率は吉川方式では99%、シュレッダー方式では85%だ。また当社のマテリアルリサイクルは、89%となっている。2つ目については、一般的な解体業者では低品質鋼材になるが、当社の場合は異なり、もう1度、自動車鋼板に使えるだけのものに解体できる。鉄スクラップの高純度化を実現するプロセスとして、モーター・配線など銅分の徹底事前除去ができる。そして高純度プレス屑生産で、精緻な解体を行う事により銅の含有率を0.1%にすることが可能だ。ハーネス関係を完全にとっていくことにより、Car to Carが可能になる。
 弊社は天津市の今後のELV事業計画に関し、「高効率で環境にやさしい最先端の超資源循環型ELV解体リサイクルシステム」を提案しようとしている。その内容を4つ挙げると、(1)ライン化による効率的な解体・回収、(2)集中管理による確実かつ効率的な廃油・廃液処理、(3)反転・無重力装置による作業負荷軽減、安全性向上、(4)製造品・回収品の容易な高品化が可能になる-ということだ。天津市新会社との協力の基盤を活かし、今後は協力を継続、強化していく。天津市の新会社は静海子牙工業園にあるが、まずそこでELV解体工場に向けた検討への支援をしていく。新会社が設立されたのは5月28日で、行政の方は来年の7、8月には操業開始ができるといっている。おそらくそちらに向かって進む必要性があるだろう。現在、吉川工業ではELV解体工場に向けた検討、F/S調査を行っているところだ。

(文責:貿易研修センター・講師肩書は講演当時)

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担当:総務・企画調査広報部