第36回 IISTアジア講演会 「中国人民解放軍の動向とアジア諸国の対応」桜美林大学 国際学部教授 佐藤 考一【2009/11/27】

講演日時:2009年11月27日

第36回 IISTアジア講演会
「中国人民解放軍の動向とアジア諸国の対応」


桜美林大学国際学部教授
佐藤 考一

佐藤 考一 中国の国防予算は2007年の公表額で、3509億2100万元(5兆4778億円)で、この年に日本の防衛予算を超えたといわれ、装備の充実、開発に力を入れている。さらに活動範囲も広範であり、技術習得にも積極的である。また、中国海軍はソマリア沖には商船の護衛で出てきているし、洋上給油艦の数も増え、日本と同様の5隻となっている。ミリタリー・バランス(MB)の数字を見ると、兵員は100万人程度削減され、通常兵器については装備の近代化を進めている段階であるが、それがあまり大きな数字になって出てきていない。なお、核兵器は増えている。しかし、単純な「中国脅威論」に陥らず、台頭する中国に冷静に向き合うことが、我々には求められていると思う。
 中国は日米とは軍事演習を行ったり艦艇の訪問をしたりするが、関係が悪くなったり、国内で問題があると途絶えるなど、ぎこちなく交流している。一方、東南アジア諸国連合(ASEAN)や上海協力機構(SCO)、南西アジア諸国とかなり接近し、アメリカの手が及ばない自国の影響圏を確保できないかと考えているようである。また中国は、『和諧世界』、「和して同ぜず」、「仲良くするが、あなたたちと私たちとは違うので私たちのことには干渉しないでください」といった姿勢を西側諸国に対してとることを、上海協力機構諸国やアフリカ諸国などへも呼びかけている。
 次に、中国に対して、日本やアジア諸国はどう対応すべきかであるが、中国側は一枚岩ではないということもあり、一方的に敵視する必要はない。左手に盾を持って、右手で握手をするようなイメージだ。何か向こうがやってきたら、盾で防ぐという対応でよいと思う。日本のシーレーンは中国沿海部が長く、何かをされたときのために抑止力を準備しておくことは必要だが、長期の戦争を考えることは非現実的だ。こちらから戦争を仕掛けることはしないという考え方であるべきだ。
 尖閣列島の大正島(赤尾嶼)、そして魚釣島といった島を守るためにはどうしたらよいかだが、われわれは南シナ海で過去に起きたこと、そして今、行政的に中国がやっていることを把握しておく必要がある。通常は管轄水域の国際法解釈の問題に関しては、2つの国があった場合、排他的経済水域の境界をどうするかというと、両国の沿岸からの中間線を取るというのが常識だ。日本はこれを中国に提示しているのだが、中国は日本に対しては、大陸棚の延長線を主張しており、国際法の解釈では譲らず、時間をかければそのうち自分たちに有利な解決の時期がくるといった考え方が国内にあるようだ。
開催風景 また日本は核兵器を持たないという政策をとっているので、核戦力に関しては、ASEAN+3や東アジア・サミット、国連外交などを通じて対処する必要がある。そしてミサイル・ディフェンス、弾道ミサイル防衛(BMD)の開発協力などは、積極的に進めるべきだろう。さらに軍事・汎用技術の流出への対策も考える必要がある。
 日中両国間では今後、信頼醸成や共通の安全保障問題で協力し、少しずつ緊張緩和を図っていくことが一番望ましい。また、中国は多頭の龍のように、各省庁が個別バラバラに動くので、全ての場所と協力関係を結ぶ必要があり、1つの組織の中でもトップだけでなく、現場の人とも協力できるような関係をつくっていくことが重要であろう。

(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

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担当:総務・企画調査広報部