アジアラウンドテーブル

アジアにおける環境ビジネスの現在・未来
−第30回アジアラウンドテーブル要旨−

21世紀における大きな課題である地球環境問題。環境負荷の増大が懸念されるアジア地域の環境問題と環境ビジネス振興の必要性、日本とアジア地域の環境プロジェクト協力の可能性と方法論を討議した今回のアジアラウンドテーブル※。会議をコーディネートされた安藤氏の基調講演と中国、タイ、マレーシアの環境への取組みをご紹介します。(※アジアラウンドテーブルはアジアクラブ主催の国際会議。今回は高知県との共催で行われました。)

「自律的発展期に入った環境ビジネス市場」
エコビジネスネットワーク代表  安 藤  眞
 環境ビジネスとは、環境へのダメージの改善を図るために、技術及び環境改善機器、あるいは環境製品、サービスを提供するものです。21世紀、環境問題は避けて通れない課題です。今後、環境ビジネスの市場は拡大せざるを得ない状況が出てくるでしょう。
 現状でも30兆円の市場規模を有しています。将来、この市場がどういう形で広がるのか環境省が将来予測をしておりますが、それによると2010年に47兆円、2020年に58兆円という市場規模が予測されています。つまり、自動車産業の40兆円弱、建設産業の56兆円という規模をはるかに上回る新しい産業が2010年、2020年にかけて創出されるということです。
 環境ビジネスの事業アイテムも非常に拡大しています。私たちの調査によると、だいたい800事業アイテムまで広がってきています。環境ビジネスというと、リサイクル・ビジネスという発想を持つ人が多いのですが、リサイクルだけではなく、大きく裾野を広げつつあります。800事業アイテムを支える、各事業所は、第1次産業から第3次産業、つまり全産業にわたって環境ビジネスが創出されてきています。その主な担い手は、大手の企業による市場のシェアが大体4割で、残りの6割が地域の中堅・中小企業です。
 これまで環境ビジネスへ、産業界がどういう参入の仕方をしてきているかを見ると、大きく2つの形があります。1つは既存製品のグリーン化の進展です。例えば自動車メーカーであればエコ・カー、トヨタはハイブリット・カーと呼びますが、製品のグリーン化、つまり環境配慮型の製品づくりを行うことです。また、製品のグリーン化は単に企業のイメージ戦略を超えて、世界市場の急速なグリーン化をにらんだ21世紀の重要な企業戦略の一つとなっています。製品のグリーン化を積極的に進めている日本の大手企業、例えば自動車、OA機器、あるいは家電メーカーは、21世紀の世界市場のグリーン化に対応するため、製品のグリーン化を図っているわけです。そして、生産ラインのグリーン化、もしくは産業のグリーン化も同時に行われています。このグリーン化を図るために、環境改善の世界標準規格、グローバル・スタンダードであるISO14001※の取り組みが世界的に進展しています。
 日本の企業、特に第2次産業は元気がないと言われますが、世界市場を相手にするメーカーは非常に地道な努力を続けています。将来的に世界の市場がグリーン化すればするほど、日本のグリーン製品が再び世界市場を席巻することは、決して遠い将来ではなく実現するのではないかと思います。
 環境ビジネスへのもう1つの入り方は、それぞれの事業所が持っている得意技、コアの技術を活かして環境製品、あるいは環境改善機器を開発する方法で、地域の中堅・中小企業の環境ビジネス参入するにあたって、選択する1番多いケースです。周知のように環境関連機器というのは、実は多くがローテク機器なのです。環境ビジネスというと、新規ビジネスという発想を持つ人が多いのですが、決してそうではなく、現業の延長上に環境ビジネスがあり、先ほど述べた800ほどの事業アイテムがあるということです。ですからどんな業種の事業所においても、環境ビジネスのチャンスを2つや3つは持っている。現業を基に、いかに環境に関わる技術、事業を開発するかを考えていく。環境という尺度を持った上で、新しい環境法制をどう読み取るかによって、事業チャンスが大きく広がってきています。
 環境ビジネス創出のさまざまな要因、環境ビジネスへの追い風が強く吹いています。まず、この4、5年、日本の環境関連予算は年々拡充しています。環境ビジネスが創出しやすい条件が整いつつあります。
 また、環境法が矢継ぎ早に法制化されてきております。新しい環境法の立法化が環境ビジネスの創出の要因になります。たとえば食品廃棄物リサイクル法が法制化されると、新たな環境改善機器産業が創出され、5,000億円くらいの新たな市場が形成されます。環境、あるいは廃棄物の適正処理、廃棄物リサイクル法が法制化されることによって、次々と新しい環境ビジネスのチャンスが生まれてきます。
 それと、一部では環境ビジネスを創出しやすい規制緩和策が徐々に打ち出されつつあります。これまで環境ビジネスが立ち上げが少なかったのは、規制とか許認可の多さにも原因がありました。たとえば風力発電は40から45の規制をクリアする必要があり、平均3年ほど時間が必要でした。これからは、日本でも環境ビジネスの創出のための規制緩和が起こるでしょう。
 さらに、ISO14001を取得した事業所はすでに13,000事業所ありますが、これは世界第1位であり、第2位のドイツですら6,000まで至っておりません。ISO14001を取得した事業所はゼロ・エミッション、つまり廃棄物を減らしたり、出た廃棄物をリサイクルしたり、省エネ・省資源の取り組みをしたり、有害な化学物質を生産ラインから排除していく、製品の中に有害な物質を使用しない、あるいは工場の敷地の汚染土壌を改善するなど、それぞれの目標を立てる取り組みをしております。その取り組みを支援するために、環境機器や装置の提供、あるいは改善するための新たなコンサルティングが生まれてきたりします。事業所が環境改善を図るための環境ビジネスも生まれてきます。
 最後の追い風は、グリーン・コンシューマー(緑の消費者)という環境配慮をして製品や商品を買うという新たなタイプの消費者の登場です。比率としては、まだ全消費者の3%にしか過ぎません。しかしこの3%を少ないと読むか、トレンドをつくるコアが形成されたと読むかによって、企業活動生産活動が違ってきます。たった3%ですが、今後減ることはあり得ません。私は、10年以内に全消費者の30%が環境配慮をした商品を買うようになると予想しています。そうなれば、事業活動や消費者に提供する製品やサービスのあり方を考え直さざるを得ません。ちなみに環境と福祉のトップランナーといわれるスウェーデンはグリーン・コンシューマーが70%以上にのぼります。環境商品を日常的に使う、環境グッズを提供するメーカーにとって、大きなビジネスのチャンスが生まれつつあるということです。
 環境ビジネスの事業アイテムが800あると言いましたが、環境ビジネスには2つのタイプがあります。1つはハード系の環境ビジネス、技術を活用してさまざまな技術あるいは事業を開発することで、従来型の公害対応技術に始まって、廃棄物の適正処理及びリサイクル、あるいは新しいエコ・マテリアルの素材開発や製品化などがあります。
 その一方で、ソフト・サービス系の環境ビジネスも幅広く創出され始めています。例えば、環境影響評価、環境と教育を連携した事業、金融においても環境配慮などを投資尺度の1つとする投資信託であるエコファンドの創設、または環境賠償責任保険が商品化されたりしています。物流においても、今後は廃棄物は立派な資源で、いかに効率よく運搬させるかという内航船や鉄道を利用した静脈物流という分野も次々と新しい事業が開発されてきております。
 今後環境ビジネスのどういう分野が主流になるかについて触れたいと思います。わが国は資源が乏しい国で、海外から調達したり、製品として輸入したりして、毎年約21億トンの資源が産業活動や日々の生活に投入され、これが製品やエネルギー、食糧として、いろいろな形で消費されます。しかし毎年実質11.5億トンがストックされます。これをどのように資源として再利用していくかが大きなテーマになりつつあります。環境ビジネス創出の重要な発想として、Re-buildが基調になると思います。産業活動というのは、従来スクラップ・アンド・ビルドという考えの下に、地下資源やエネルギーを大量に使って、大量に製品を作り続けてきました。しかし21世紀においてはスクラップ・アンド・ビルドを産業活動の中にインプットしても、将来的には不可能で、その延長上においては将来世代の持続可能な社会はまずあり得ない。私たちに求められるのはスクラップ・アンド・ビルドからRe-build、つまり再生という発想です。Reduce, Reuse, Recycle, Repair, Reform, Retrofit, Renewalなど、これからの環境ビジネスにおいてRe発想、まして今後資源循環型社会を展望するときに、このRe発想は非常に重要です。今後環境ビジネス創出において、地域で発想するときに、Reという言葉を軸足において事業スキームを作っていただきたいと思います。
 地球環境問題というのは日本だけの問題ではなく、地球上の生きとし生けるすべてのもの問題です。今後、日本の公害経験および技術をもって、アジアとの連携によって新しい環境産業の創出をどう興していくか、それに関わる環境ビジネスのプロジェクトあるいはサポート、その方法論を今日のシンポジウムで見出せればと思います。(文責編集部)

※ISO14001:1996年に発行された環境マネジメントシステムに関わる国際規格。企業が環境に対する負荷を減らしていくために、自ら決めた改善計画および改善活動に対して、審査登録機関が審査・認定するもの。
―中 国―
上海の環境改善計画
華東師範大学副教授  達 良 俊
 上海はご存知の通り急速な経済発展を遂げつつあり、大きな変化を経験しています。急速な発展を危惧する声も出ていますが、一般の市民たちにとっては喜ばしいことです。都市の施設を改善するために上海市政府は年間584億元を投入しており、2001年に比べると14.2%の増です。上海は2003年から環境改善のための第2次3カ年計画に入りました。第1次3カ年計画では上海市として主に5つの分野に重点を置きました。水環境の改善、大気の改善、固形廃棄物の処置、緑化建設、そして重要工業団地の環境総合改善です。プロジェクトは計110件が実施され、総投資額は342.92億元に達しています(換算レート1元≒15円)。
 上海市は3カ年環境計画と同時に市全体の第10次5カ年計画が策定しました。この中で上海市における大気環境保全計画などの実施が批准され、2005年までには主な汚染物の排出総量が制定されました。その中で重要と考えられているのは、二酸化硫黄です。上海、国ともに煤塵を重く考えています。また、工業活動による粉塵の産出や、水質に関して言えばCOD※やアンモニア、窒素などの排出総量が規定されています。さらに工業固形廃棄物の総合利用率の目標も95%に設定しています。2005年に、二酸化硫黄を14%、CODは9%削減を目標にしています。
 環境保護への資金投入は上海市の国民総生産の約3%を占めます。近年で見ると、年平均で200億元近くの環境へ投資となり、上海政府の努力を評価に価するものと思います。
 上海市の環境改善と建設の新動向を説明いたします。まず、第1に、科学的な発展観を確立しなければなりません。根本的な考え方として物的な成長から、人をもって本位とする考え方にシフトすることです。まず、グリーンGDPという発想のもとで、GDPを再評価すること、また都市と農村の格差の再認識も必要です。つまり農村問題をうまく解決できなければ、中国の将来的な発展の妨げになるということです。さらに朱鎔基総理の時代には食糧問題はないという判断があり、耕地が多くの工業団地に代えられましたが、これからは農村を重要視するためにも農耕地の重要性を再度考える必要があります。農村との格差も数字だけで言えば95年で2.7倍、2002年では3.1倍に拡大しています。
 新しい目標としては、3つの生態原則があります。それは、生態建設を主とする持続可能な発展を確立する、国土生態安全の体系の構築、山や河川の生態文明社会の構築です。基本方針としては、生態・経済・社会効益の統一で、その中で生態効益をまず優先することです。これは諸外国も同じで、特に中国の場合は今まで20年の発展の中で経験したこと、つまり洪水の問題や黄砂や砂漠化の問題が深刻になってきたことです。上海市は生態型都市を目指しており、そのために環境建設などを全面的に展開しているわけです。上海市は世界における経済、金融、貿易、港運のセンター的な役割を担う都市を目指しております。具体的な目標としては、国際大都市に相応する空間システム、新型産業システム、社会事業システム、生態環境保全システム、都市景観システム、基礎施設体系の6つです。ここでメインとするのは、おいしい飲み水、きれいな空気、安心できる食物を住民に提供し、清潔な土地で生活できるようにするということが上海市政府としての目標です。
 次に産業廃棄物の回収革命、中国では革命という言葉を使いますが、つまり循環型の経済、社会を目指した考え方です。テレビや家電製品などの保有台数は非常に多く、テレビだけでも4億台あり、冷蔵庫は1.3億台、洗濯機は1.7億台、パソコンは1600万台あります。これからも回収革命がなぜ必要かはわかると思います。とくにゴミ焼却については、従来埋め立てが主でしたが、これからは焼却システムに変換しつつあり、今は一日1,000トン処理能力をもつゴミ処理場が2つ稼動しております。
 もう1つは都市の近自然型の森づくりで、園林都市になったのですが、これから都市と農村を一体化する都市森林生態系を作っていきます。今は14.2%の森林率ですが、万博までには25%に上げていきます。横浜国立大学名誉教授・宮脇昭先生の指導のもとで、上海における実験用モデル林を作っています。上海だけでなく青島や寧波などでも実験的に進めています。
 最後になりますが、「都市生活をもっと豊かに」が2010年の上海万博のテーマになりますが、上海としてもこれからの自らの努力によって生態環境をいっそう改善させて、このスローガンの実現に向け努力を続けるつもりです。(文責編集部)

※COD:化学的酸素要求量。海や湖の水質汚濁の目安となる数値。
― タ イ ―
タイの環境管理と環境ビジネス市場
マプタプット工業団地事務所長 カセームシー・ホームチューン
 タイでも、ここ30年から40年間、多くの公害問題を経験しました。特に大気、水の汚染です。幸い日本政府から数多くの公害対策の技術移転を受け、たいへん感謝しております。私自身もJICAのサポートによって、いわゆる土壌の廃棄物の管理ならびに大気汚染の管理についての訓練を受けました。
 公害をコントロールするには、1つの体制が必要です。具体的には業界内において、公害対策を講じていくことが重要です。タイでは、工業団地オーソリティを30年前に作りました。これは工業省の下部組織で、2つの役割があります。業界に対して規制に準じるように対応し、許認可を与える、また、施設などを提供してサポートすることです。
 コアのビジネスは、許認可、廃棄物処理に関しての施設の提供や、土地の管理も行っており、環境安全管理のサービスを行っています。工業団地ではどの場所であれ、5つのEシステム、つまりEconomy, Equitability, Environment, EducationそしてEthicsを提供する必要があります。13の州において、このような活動により、250億ドルの投資が行われ、雇用は37万人、計30の団地があります。環境の面では、すでに20カ所がISO14001の認証を受けております。教育では、技術ベース、知識ベースの教育を提供しておりますし、Ethicsに関しては業界における企業化精神を育て、廃棄物処理を行っているところにPPPという原則に従って活動しております。
 工業団地が環境管理においてどれほど効果的であるかということですが。タイ政府は現在、環境システムの改善のための作業中で、インフラを提供しております。道路の周囲の緑化、水道水の供給、マプタプットでも排水の処理システムがあります。電気通信分野の施設も整っており、電力についても5カ所に大小の発電所があり電力を供給し、地域における民間企業にも供給しております。
 環境安全システムの面では、エンジニアと科学者がチームをつくって査察をしますが、そのための自動化機器類も備えています。たとえば汚染管理、空気の質の管理、水質管理などです。日本政府の協力によって、実証ユニット装置を設置しています。周辺には寺院や学校などがあり、緊急時の対応や防災活動も行っています。異なるレベルがありますが、レベル1は業界内、レベル2は他の業界、他の市町村とも協力するなかで、工業団地がその要になります。レベル3となると、州知事が長となり責務を果たします。私どもは技術的な情報でサポートし、その後実際の活動が行われます。
 マプタプット工業団地が設立された1989年以降、ISO14001に関して、工業団地の70%の企業が認証を受けています。2005年までには通常の工業団地をエコ産業工業団地に変えていく計画があります。2004年中には完成する見込みです。工業開発、産業開発というのは、新たな開発なのか、あるいは改善なのか。民間セクターの企業活動を考えると、人々やコミュニティの生活の質が改善されるかどうかが重要です。企業活動の中で廃棄物の生成を削減する、あるいは排ガスを削減して、資源、原材料に関わるコストの削減を図ります。そうしたプロセスの中で、地域社会に対する影響もあるわけです。私どもとしてはエコ工業団地というコンセプトを普及させたいと考えております。原材料とエネルギーの消費量を最低限に抑えること、また廃棄物処理量を抑えることによって、社会、環境、経済のバランスをとって行こうというものです。
 マプタプット工業団地には、製油、非常に大きな石油の精製プラントがあります。この中から出てくる廃棄物を、すべてをわれわれだけで処理することはできません。処理のネットワークが協力して廃棄物をシェアする必要があります。その例として2001年と2002年の比較ですが、約3.5%が焼却され、1.6%が埋め立てに使われます。埋め立てに使われる分は安全処理を施し、使った場所もわかるようになっています。91%の廃棄物はリサイクルされ、一般家庭からの廃棄物は99%が埋め立てに使われています。少数が堆肥に使われます。リサイクル可能な廃棄物、例えば石油精製工場ですが、原油には常に硫黄分が入っており、廃棄物として出てきます。それを原材料として肥料工場で酸化硫黄を作り、石膏をつくり、土壌改良剤として使用可能にします。レンガにして歩道に使うこともできます。タイ北部ではいろいろなクラフト製品がありますが、例えば水晶の結晶は廃棄物処理の対象でしたが、処理にも経費がかかるので女性用のアクセサリーや置物などに使われています。繊維のスクラップもハンドバックや木材がお香になっています。
 最後に、来日前に、廃棄物の状況に関して質問をいただきましたので、お答えします。廃棄物への対応する国のマスタープランがあります。何を達成するかですが、工業分野からは廃棄物の回収率を80%に高め、一般家庭の廃棄物回収率は50%に高め、水利用に関しても戦略的なプランを志向します。バイオマスを植物栽培に使うことができますし、またクリーンプロダクションということで長年にわたって多くのプロジェクトも育ててきました。工業団地が廃棄物の回収などから成果を挙げていることをご理解いただければと思います。(文責編集部)


―マレーシア―
マレーシアの環境問題
SIRIM/環境・エネルギー技術センター総括責任者 ザイナル・アビディン・モハマド・ユソフ
 マレーシアではコーポレート・ガバナンス、言い換えると貿易環境の改善が重要視されています。2000年に政府はコーポレート・ガバナンス法を制定しました。マレーシアの企業がより透明性を高め、説明責任を果たすことで、すべての当事者、環境管理も含めてさまざまな要件を満たすことを目指すものです。
 マレーシアの環境問題で、特に強調されているのが河川の水質、大気汚染、騒音、あるいは表層水などの問題です。水質の汚染源としては、製造工業、アグロ・ビジネス、パーム油、ゴム産業、家庭排水などがあげられます。大気汚染としては、特定廃棄物、つまり政府で指定している廃棄物で、特定の方法で処理しなくてはならない廃棄物、化学物質、危険物質などです。ここ数年に出てきた1つの大きな問題は、固形廃棄物、特に都市ゴミの問題です。基本的には埋め立て処理をしています。クアラルンプールは1日あたり2,400トンの固形廃棄物を出しております。ゴミを出したまま2カ月放置しますとペトロナスのツインタワーの高さに達します。
 また、現在直面している問題として、埋立地からの浸出液による飲料水の汚染があります。政府は都市ゴミを焼却する方針で、将来焼却場の建設を計画していますが、NGOや市民からの抗議運動も多く、難しい問題となっています。しかしクアラルンプールの近くに第1号の焼却場を建設する予定です。他のオプションとして、リサイクルを厳しくするプログラムの強化といった代替案を考えております。
 マレーシアにおける特定廃棄物の問題ですが、政府は107のカテゴリーを明確化しています。特定の方法で処分しなければならないものとして限定しています。現在、コラディアラムという企業を中心として廃棄物処理を行っています。クアラルンプールの南の州にある設備でこのセンターに全国のすべての特定廃棄物を集めております。鉱滓、スラッジ、重金属、炭化水素、石油関係が大きな項目となっています。これらはすべて特定廃棄物として集積センターに収集されます。次が化学薬品その他です。法整備を整えることによって、さまざまな産業廃棄物の規制を行っていますが、危険廃棄物は年間およそ40万トンに及びます。
 産業排水の問題ですがマレーシアでは膨大な量の廃水が出ています。とくにパーム油の産業からです。年間1,200万トンのパーム油を生産していますが、1トン当たり3トンの廃水がでてきて、1.5トンの固形のバイオマス※1の廃棄物が出ます。したがってパーム油産業は産業廃棄物の面でもたいへん重要です。過去にはこのようなパーム油の工場はプランテーションの中にあり、そのまま流されておりました。その後研究も進み、NEDOの協力を得て、さまざまな廃水処理施設の研究を行い、パーム油の廃水処理を検討したところ、実験室でつくったものをハイドロフィック・リサイクルテンション・タイム、またCODの除去に効果的な方法が発見されました。現在は、パーム油工場においては生物学的な水処理を行っています。堆積物が出てきますが、これは肥料としてパーム油のプランテーションに還元されます。つまりプランテーションの中ですべてが完結しているわけです。
 マレーシアは世界最大のゴム生産国ですが、ゴム産業はBOD、COD※2値の高い廃水を伴うのが問題です。悪臭の問題もあります。すでにさまざまな処理施設が検討されています。処理施設の例として、ゴム手袋の工場の処理施設には150万USドル投資し、ベルギーの技術を使っています。もう1つは繊維産業からの廃水があります。衣料品工場、テキスタイル工場ではさまざまな装置を使って繊維産業の廃水処理を行っております。
 農業バイオマスのもう1つの例として、ECとアセアンのコージェネレーション・プログラムがあります。ECは自家発電の設備を導入することにより、アセアンでバイオマスを活用しようとしており、このプロジェクトにおいては、技術を活用してさまざまな企業が参画しています。調達コストにはEC諸国の助成金を一部導入しています。
 私は環境エネルギー技術センターの人間ですが、適切な廃棄物処理システムを作る仕事をしています。SIRIMはマレーシアの産業界と緊密な協力をしながら、クリーン・テクノロジー・プログラムを実行しているところで、さまざまな製造活動の中でクリーンな技術を導入しております。したがってSIRIMは日本の企業と協力することにより、危険を発見し、処理技術の開発までともにやっていきたいと考えています。また、日本の技術を解決策として、マレーシアの環境問題に適用していきたいと希望しております。(文責編集部)

※1 バイオマス:生物資源を表す概念で、「再生可能な、生物由来の有
機性資源で化石資源を除いたもの」。農林水産物、稲わら、食品廃棄物、家畜排せつ物などで、エネルギーや新素材として利用できる。
※2 COD:化学的酸素要求量。海や湖の水質汚濁の目安。

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