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あらためて分かった東北工業の実力 | 一般財団法人 貿易研修センター 国際交流部長 福良 俊郎【配信日:2011/4/28 No.0194-0795】

配信日:2011年4月28日

あらためて分かった東北工業の実力

一般財団法人 貿易研修センター
国際交流部長
福良 俊郎


 3月11日に東日本を襲った大震災の影響で、東北地方の製造拠点が特に電子製品や自動車部品の分野において、日本国内のみならず世界的サプライチェーンの要となっていることが明らかになった。東北地方の復興は、こうした世界的競争力を持つ部品・素材メーカーの再興にかかっており、日本の産業競争力維持にも不可欠といえよう。


長引く生産停止

 東日本大震災の影響で自動車メーカーなどの生産が停止し、再開に時間がかかっている。 最大手のトヨタ自動車は3月14日~26日、自社および関係ボディメーカーの生産を休止。堤工場(愛知県)とトヨタ自動車九州(福岡県)におけるハイブリッド系車種の生産は3月28日に再開したものの、国内全工場での生産再開は4月18日までずれ込んだ。本田技研工業もすべての拠点における生産活動再開は4月11日となった。

 自動車メーカーの生産停止が長引いたのは何故だろう。トヨタグループの関東自動車岩手工場、本田の栃木製作所など組立工場の被災もあるが、なんといっても影響が大きいのは取引先の部品メーカーの被災によって部品供給が滞ったことである。

 各社ともサプライチェーンの構築に際しては、特に2007年7月の新潟県中越沖地震時の教訓から、特定工場への依存度を引き下げるようにしていた。しかし、今回の震災は被害地域が広範囲にわたり、影響を免れるのが難しかった。また、いったん停止した工場を再開しても、部品の供給状態をみながらの生産というところも多く、電力供給の制約もあることから、短期間にフル操業に戻るのは難しそうだ。

 部品の供給不足の影響は日本国内にとどまらない。トヨタは部品の供給不足に伴う生産調整のため、北米の車両工場、エンジン・部品工場を4月後半の数日間、稼働停止すると発表した。フォードは4月初め、日本製部品の不足に備えベルギー・ゲンクの工場を5日間閉鎖した。また、日本製色素の入手難により一部のボディカラーの受注をストップしたと伝えられる。

日本の供給力に国際的関心

 日本製部品や素材の供給停止問題については外国メディアも強い関心を示している。日本の工場からの製品供給が途絶えると世界中の生産活動に支障が生じる(米ブルームバーグ・ビジネスウイーク誌)ためであり、世界の景気回復への懸念材料の1つ(USニューズ&ワールドレポート誌)と捉えているからだ。

 具体的品目として、英エコノミスト誌は三菱ガス化学と日立化成の樹脂やクレハのポリマーをとりあげ、ブルームバーグ・ビジネスウイーク誌はソニーのラップトップ・コンピュータ用バッテリーや信越化学とSUMCO(旧三菱住友シリコン)のシリコンウェーハなどの例を紹介している。

 主要企業は毎日のように自社の拠点の復旧状況をホームページに掲載し、供給責任を意識した情報発信に努めている。状況把握は自社設備に限るわけではない。岩手県奥州市、宮城県仙台市および同県松島町と被災地域に3つの拠点を持つ半導体製造装置大手の東京エレクトロンは、600社を超える一次取引先の状況も確認するとしている(3月17日付記者発表)。

ICTやデバイスに強い東北

 東北地方は日本経済の中でどういう位置を占めており、どのような産業を持つのだろう。

 東北経済産業局の資料「平成22年版東北経済のポイント」によると、東北6県の人口は日本全体の7.4%である。域内総生産は日本全体の6.4%であり、製造品出荷額は同5.5%にとどまる。製造品出荷額の都道府県別順位では福島県の20位が最高であり、東北各県は必ずしも全国有数の工業県というわけではない。しかし特定製品については東北のシェアが高く、情報通信(ICT)機械では14.8%、電子部品・デバイス・電子回路では12.9%に達する。

 経済産業省が今年3月公表した工業統計調査「我が国の工業」によると、東北各県で出荷額が全国1位である製品は別表のとおりで、電子部品やデバイスが多い。全国1位ではなくとも青森の半導体・IC測定器(2位)、亜鉛地金(3位)、岩手のフラットパネルディスプレイ製造装置(2位)、宮城の蓄電池の部分品・取付具・附属品(2位)、理化学用・工業用ファインセラミックス(2位)などの重要産品がある。自動車関係では岩手県がカーヒーターで2位、ピストンリングで3位にランクされる。また、東北地方以外で深刻な被害を受けた茨城県はシリコマンガン、プラスチック積層品、ピグメントレジンカラー、フレキシブルプリント配線板など合計25品目で出荷額日本一となっている。

 こうした工業力は、各県の長年にわたる企業誘致の成果かと思っていたが、それだけではないらしい。大手電子部品メーカーに勤める友人によると、東北地方には厳しい競争に耐えて競争力を磨いてきた優秀な中小企業も多いという。

東北各県の出荷額全国1位製品(平成20年)
青森県 その他のフェロアロイ
岩手県 過りん酸石灰、プリント配線板用コネクタ、消火器具・消火装置の部分品・取付具・付属品、その他の非金属用金型・同部品・附属品
宮城県 コントロールユニット、鉛管・板、レーザーダイオード、磁気ヘッド、水産食料品副産物、磁気テープ(生のもの)、外部記憶装置の部分品・取付具・附属品、抵抗器、スイッチ、普通合板、その他の水産練り製品、海藻加工品
秋田県 ラジオ受信機、その他の貴金属・宝石製品(装身具・装飾品を除く)の附属品・同材料加工品・同細工品、照明用・信号用ガラス製品、マネキン人形・人台、曲輪・曲物、カメラ用レンズ、固定コンデンサ、けいそう土・同製品、集成材
山形県 B重油、ハイファイ用・自動車用スピーカシステム、35ミリカメラ以外のカメラ、豆電球・クリスマスツリー用電球、鉛筆、デジタルカメラの部分品・取付具・附属品、看板・標識機・展示装置(電気的、機械的なもの)、他に分類されないガラス・同製品、変成器
福島県 その他の航空機、携帯時計側、バリウム塩類、ハイファイ用アンプ、蓄電池の部分品・取付具・附属品、光ディスク(生のもの)、作業用革靴、印刷装置の部分品・取付具・附属品、金属製パッキン・ガスケット(非金属併用を含む)、りん酸ナトリウム、液面計(レベル計)、ガラス長繊維・同製品、その他の伸銅品(洋白伸銅品を含む)、光ピックアップユニット・モジュール、測量機械器具の部分品・取付具・附属品、テレビジョン用チューナ(ビデオ用を含む)、有機ゴム薬品、電話交換装置の附属装置、写真機・映画用機械の部分品・取付具・附属品、ワイヤフォーミングマシン
(出所)経済産業省「我が国の工業」(平成23年3月)より筆者作成。
(注)製品の名称は平成21年工業統計調査商品分類による。各製品の詳細は以下のURL参照。
http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kougyo/gaiyo/sonota/bunrui/pdf/h21-reiji.pdf
東北の拠点再興が日本製造業の生き残りに不可欠

 英エコノミスト誌は今から7年前の2004年4月、”(Still) made in Japan”と題する記事を掲載し、人件費高などの問題を抱えながらもたゆまぬ努力によって世界的に競争力のある製品を国内で作り続けている日本を賞賛した。同記事によれば、日本製品が中国などの低賃金国によって駆逐されない理由の1つは、「競争相手が実現できないほど洗練され複雑な製造システムを統合し、次世代の製品に投資し続けているから」である。昭和末期以降、電気機械を手はじめに、こうしたシステムの一翼を担ってきたのが東北や茨城の製造拠点である。これらの拠点再興は被災地域の復興のみならず、日本製造業の生き残りのためにも不可欠だといえよう。

(4月19日 記)

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