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東日本大震災からの復興 | 経済産業省東北経済産業局 東北経済産業局長 豊国 浩治【配信日:2011/10/31 No.0200-0814】

配信日:2011年10月31日

東日本大震災からの復興

経済産業省東北経済産業局
東北経済産業局長
豊国 浩治


 東日本大震災からの復興が始まった。震災直後に半分程度となった工業生産も工場の再開につれて80%程度まで回復。しかし、津波被害の激しい沿岸部では回復が遅れ、政府の思い切った支援策の下で懸命な努力が続いている。


 東北地方は3月11日の地震・大津波で、甚大な被害を受けました。死者・行方不明者合わせて2万人近くという被害の大きさには言葉もありませんが、この数字よりも、震災直後に津波の被災現場を訪れたときに壊滅的な様子は今も忘れることが出来ません。それまで人々が生活をしていた家や仕事場、さらには学校や病院までもが巨大な津波に襲われ跡形もなく崩れ去っていたのです。東北の地に先人が営々と築き上げてきたものが瞬時に崩れ去り、これを取り戻すことができないのではないかという思いにさえとらわれました。
 その後、東北の人々は回復に向かって懸命な努力を開始します。震災後の東北経済の状態を東北6県の鉱工業生産指数で見ますと、3月は64.6にまで落ち込みました。これは、3月11日以前は通常通り操業が行われたことを考えると、震災で生産がほぼ半分にまで落ち込んだことを示します。ところが、4月が71.7、5月が81.5と着実に回復する動きがみられました。7月には85前後まで回復しました。東北経済産業局が工場の再開状況を調べた結果でも、4月頃から被害の軽い地域を皮切りに工場の再開が始まり、サプライチェーンの寸断で影響を受けた自動車関連がやや遅れて再開に動いたことがわかりました。今後秋頃までにはさらに生産を再開する企業は増える見通しとなっています。まさに、民間企業の回復の力とスピード感には驚くばかりです。

鉱工業生産指数(季節調節済み)の推移
 ただし、残りの10数%程度の企業が事業の再開になお時間を要しています。これらの多くは沿岸部に立地し工場全壊といった大きな被害を受けた企業です。東北地方の太平洋沿岸部には製紙、セメント、石油精製等の大手企業の主要工場が立地するほか、中小企業も多く立地しています。海の近くの立地メリットを活かした水産業、造船業に加え、自動車や電子関係の部品産業もあります。いずれも地域経済を支える重要な企業ばかりで、これを再生・発展させていくことが地域の復旧・復興に不可欠です。津波の被害を受けた地域では、まだガレキが仮置き場に積み上げられていているような状態ですが、それでも、店を流された人が仮設の商店を作って営業を始めたり、工場が全壊した事業者の方が空き工場を探して事業を再開したりといった動きが始まっています。
 東北経済産業局の目下の最大の課題は、政府の震災対策予算を活用し、これら中小企業の復旧・復興、さらには二重ローン問題等への対応を着実に実行することです。政策へのニーズは震災発生から復旧・復興へと時の経過とともに変わってきました。震災の発生直後は当面の資金繰りが緊急の課題となり、金融相談やつなぎ資金の融資に奔走しました。時期が年度末であったこともあって資金繰りが原因となっての倒産や失業が心配されましたが、金融機関が返済猶予に柔軟に対応し、当面の問題は乗り越えることが出来ました。5月には第一次の補正予算が成立。政府系金融機関の災害貸付(一部は無利子)、災害対策債務保証の無担保保証の拡充が実施され、金融面での措置はほぼ整っています。
 当面の資金繰り対応が終わり、夏から秋になると、企業が復旧・復興へ向かうことになります。この段階になると、工場が津波で全壊した企業でも事業再開の具体的な検討が始まりました。この段階になると、工場再建のための資金手当てが大きな問題となります。震災で工場を失った中小企業にとって、事業の再開は容易なことではありません。被災した事業者から実情を聞くと、震災の前に銀行からの借り入れで建てた工場や設備が一夜にして壊滅し、後に借入金だけが残った。工場を再建しようとすれば更なる借り入れが必要となるが、返済能力を超えるため銀行も相談に応じてくれないことが少なくないと言います。地震・津波は地域全体の広い範囲に被害をもたらしているため、地域全体にこうした企業が拡がっており、そのままにしておけば地域経済全体が復興出来なくなるということになりかねません。
 今回、政府は前例にとらわれない踏み込んだ決断をしました。阪神淡路の大震災のときでも、民間企業の設備投資はあくまで民間の事業であるという理由で、低利融資は行うものの補助金は適用しないこととされました。しかし、今回の災害の大きさを踏まえ、地域経済全体の復興に繋がるような中小企業の復旧・復興の取り組みに対して補助金で支援することとしました。また、独立行政法人中小企業基盤機構が被災地の市町村と組んで仮設の工場や商店のための施設を建設し、これを無償で貸与する制度を始めました。これらの制度を利用して既に事業の再開に漕ぎ着けた中小企業も出始めています。津波で何もなくなってしまったところに工場の建設が始まり、やがて人が働き始める。こうした目に見える復興の動きが被災した人たちの大きな励みをなったことは言うまでもありません。
 中には、被害が甚大で既往債務の返済負担も重いため、これらの支援措置を利用しても資金の調達が出来ない企業があるのも事実です。これが二重ローン問題で、こうした企業に対しては、2次補正予算で盛り込まれた債権買取機構を通じた事業再生を行っていくことになります。
 これら補正予算の規模や内容について、国会でも様々な議論がありましたが、関係者の努力もあって、震災からの復旧・復興の枠組みとしては概ね十分な仕組みが出来たと考えています。これからの問題は、この政策を適切に運用して現場が成果を上げられるかだと思っています。東北経済産業局では、地域の企業や自治体の方々と協力して現場主義で政策の運用に取り組み、震災からの復旧・復興を実現したいと考えています。これからも、皆様のご理解とご支援をよろしくお願いします。


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