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日本企業のミャンマー進出加速へ =今春にも欧米の経済制裁解除= | 時事通信社 国際室次長 山川 裕隆【配信日:2012/03/30 No.0205-0834】

配信日:2012年3月30日

日本企業のミャンマー進出加速へ
=今春にも欧米の経済制裁解除=

時事通信社
国際室次長
山川 裕隆


 人口約6100万人のミャンマーが世界から注目されている。軍事政権が幕を下ろし、民政に移管したのを契機に、同国は政治・経済改革を矢継ぎ早に断行し、変化しているからだ。4月1日に行われるミャンマーの国会の補欠選挙後にも、欧米の経済制裁が解除されれば、日本企業の同国への進出は一気に増えそうだ。


 東南アジアの西方に位置し、未開拓の市場と言われてきた人口約6100万人のミャンマー。その国が最近、世界から注目されている。同国では昨年3月に軍事政権が幕を下し、新政権が誕生。それをきっかけに、政治・経済改革が矢継ぎ早に打ち出され、大きく変化しているからだ。4月1日に予定されているミャンマーの国会の補欠選挙が公正に行われれば、欧米の経済制裁は解除されることは間違いない。賃金が安く、親日的な国でもあるミャンマーに、日本企業は一気に雪崩を打って進出しそうだ。

◇矢継ぎ早の政治・経済改革
 ミャンマーでは一昨年11月、20年ぶりに総選挙が実施され、首相だったテイン・セイン氏が昨年3月、大統領に就任し、民政移管した。新政権は産業発展省を新設するとともに、商業相にはミャンマー連邦商工会議所連合会の元会頭を起用した。こうした動きは経済重視の表れと言っても言い過ぎではない。このころから、国内外の企業の中にはミャンマーへの進出を検討する動きが出始めていた。
 その後、新政権は民主化運動指導者アウン・サン・スー・チ―さんとの対話促進や少数民族武装勢力との和解、新聞閲覧やネット規制の緩和などを打ち出した。昨年8月に、スー・チ―さんとテイン・セイン大統領が大統領官邸で会った際、スー・チ―さんの父の写真が飾ってあった。それに、スー・チ―さんは感激したようだ。スー・チ―さんの父は「ミャンマー建国の父」と言われている人だ。
 また、新政権は昨年9月には中国との経済協力案件である北部カチン州の巨大水力発電用ダム「ミッソンダム」の建設中止を決定した。環境破壊への住民批判をかわすとともに中国依存からの脱却を図ることが狙いとみられ、これまでの政権では考えられない決断だ。
 さらに、新政権は2014年の東南アジア諸国連合(ASEAN)議長国に名乗りを上げ、承認された。また、昨年10月から今年にかけて、多数の服役囚に恩赦を与えており、その中には政治犯も含まれている。このように新政権は、矢継ぎ早に改革路線を打ち出している。
 こうした改革の断行は、欧米の経済制裁の解除など国際社会との関係改善につなげ、国民生活を良くしたいとの思惑が働いている。これまでのように、中国一辺倒の外交を改め、欧米や日本などとも友好関係を築き、各国の企業を誘致して、経済力を高める方針に舵を切り替えたわけだ。隣国タイやインドネシア、ベトナムなど東南アジアの国々の経済発展は顕著だ。これまでと同じような政策を続けていては、それらの国に経済力でますます差をつけられるとの危機感がミャンマーの新政権にあったようだ。

◇要人のミャンマー詣で活発
 米国のクリントン国務長官が昨年11月に、改革路線を打ち出しているミャンマーを訪問。米国務長官が同国を訪れるのは実に57年ぶりのことだ。同長官とスー・チ―さんの会談はミャンマーの新政権にとって、同国が変化したことを世界にアピールする絶好の場となった。その後、英国やフランスなどの外相もミャンマーを訪問。
 日本の要人では、玄葉外相が昨年12月に同国を訪問。また、今年1月には枝野経済産業相が東芝や三井物産、スズキ、ヤマハ発動機など大企業の経営者約60人を同行して、チャーター機でミャンマーに乗り込んだ。さらに、日本の経済団体も昨年9月には経団連、11月には経済同友会、12月には日本商工会議所がミャンマーに相次ぎ視察団を派遣した。
 一方、日本の民間企業の動きも活発になっている。丸紅がミャンマーの首都ネピドーに今年1月1日付で営業拠点を開設した。同社はすでに同国で最大都市のヤンゴンに支店を設けている。ネピドーは出張所で、ヤンゴン支店長が兼務している。今春にも日本人駐在員を派遣する計画だ。また、三井物産もネピドーに5月をめどに駐在員事務所を開設する方向で、準備を進めている。既にヤンゴンに拠点があり、ミャンマーでは2カ所目となる。さらに、みずほコーポレート銀行も3月にヤンゴンに駐在員事務所を開設した。
 メーカーでは、婦人服販売のハ二―ズ(福島県いわき市)が3月からヤンゴンで婦人服の生産を始めた。中国の協力工場に製造を委託していたが、中国一極集中を避けるため、人件費の安いミャンマーに進出した。味の素はうま味調味料「味の素」をタイから輸入し、ミャンマーで販売する計画だ。同社は1996年にミャンマーに現地法人を設立したが、休眠状態となっていた。大手農機具メーカーのクボタも今夏をめどにヤンゴンに駐在員事務所を新設する方針だ。
 また、スズキはミャンマーに再進出するため、合弁会社設立に向け検討に入っている。以前、同社は同国で二輪車と自動車を生産していたが、政情不安や需要低迷で撤退した。現在、同国で生産している日系自動車大手はない。
 日本貿易振興機構(ジェトロ)のヤンゴン事務所には、日本企業の来訪者が昨年から急増しており、職員は大忙しだという。同事務所への訪問相談は昨年4-12月の期間、前年同期比50%増の294件に上った。今年に入っても訪問相談が増加し続けていることから、ジェトロでは同事務所の日本人を現在の1人から6月をめどに4人に増員する方針を決めた。

◇賃金中国の5分の1
 ところで、ミャンマーは人口約6100万人で、東南アジアではインドネシア、フィリピン、ベトナム、タイに次いで多い。労働力は豊富な上、賃金は中国やタイの約5分の1と安いのも魅力だ。1人当たりの国民総生産(GDP)は702ドル(10年)で、最貧国だ。中国やインドの大国に接し、交通の要衝でもあり、天然ガスやチーク材、鉱物など資源が豊富だ。また、英国領だったため、英語ができる人も多く、親日的な国でもある。約9割は仏教徒だ。面積は日本の1・8倍もある。
 ミャンマーに進出している日本企業は現在、丸紅や三井物産、豊田通商、三井住友銀行など約50社にすぎない。ミャンマーでは4月1日に国会の補欠選挙が行われる。その選挙が公正に実施されれば、欧米の経済制裁が解除されることは必至だ。それを機に、日本企業のミャンマー進出は一気に増加しそうだ。
 また、隣国タイには日本企業が約7000社進出しているが、昨年の洪水で工場を分散したり、他国に移転する企業が出始めている。そうした企業の中には、ミャンマーを「タイ・プラス・ワン」の国として選択する企業もある。
 4月20日ごろにはテイン・セインミャンマー大統領が日メコン会議に出席するため、来日する予定だ。その時に、同大統領は日本企業に対しミャンマーへの投資を呼び掛けるとともに、タイなどに比べ大幅に遅れている電力や道路、通信などのインフラ整備を日本側に強く求めるものとみられる。

◇ベトナムのライバルに
 日本企業が約1500社進出しているベトナムや、日本企業の進出が100社を超えたカンボジアはミャンマーを外資企業誘致での強力なライバルとみて、警戒し始めている。ベトナムやカンボジアを進出先として検討している外資企業がミャンマーに進出先を変更する可能性もあるからだ。いずれにしても、ミャンマーは注目を集めそうだ。

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