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中小企業の風評被害からの復活とジェトロ青森 | 日本貿易振興機構(ジェトロ)青森貿易情報センター 所長 唐牛 富貴子【配信日:2012/03/30 No.0205-0837】

配信日:2012年3月30日

中小企業の風評被害からの復活とジェトロ青森

日本貿易振興機構(ジェトロ)青森貿易情報センター
所長
唐牛 富貴子


 三方を違う海に囲まれた自然が豊かな農林水産業を生業とする青森県。「攻めの農林水産業」として海外販路開拓・拡大のため、ジェトロ青森は企業と共に挑戦する。


<青森県内震災の影響>
スイスの百貨店での販売風景(震災前)

スイスの百貨店での販売風景(震災前)

 2011年3月11日に発生した大地震は、青森県にも大きな被害をもたらした。被害総額は、八戸市を中心に約1,320億円(11月現在判明分)にも及んだ。また、2011年4月以降、全線開業した東北新幹線による経済効果を享受できる重要な時期を迎えられるはずであった。しかし、県内観光産業を中心に各種中小企業の売上は大幅に落ち込み、併せて、原発事故の風評被害がのしかかり、これまで順調に延びていた各社の輸出額も「取引停止」通告で外資収入も閉ざされてしまった。不安と落胆の中、日本産輸入停止のためそれら商品が他国商品へと入れ替え始められていることを知り、青森県企業の取引再開のための新たな挑戦が始まった。それら企業を紹介する。

●山野りんご株式会社
 青森県を象徴する岩木山山麓で、1947年発足した片山りんご株式会社から2010年山野りんご株式会社へと社名変更。全国でも有数のりんご生産者であり、同社の輸出は1999年の英国に始まり、その輸出先は中国、スイス、ドバイなど十数カ国に及んだ。日本で初めてGLOBALGAPを取得した企業だ。2011年2月、新規開拓国ドイツ訪問で得た商談成立への手応え。そのサンプル輸送直前の原発事故発生。全ての取引は停止となった。山野社長は「単にりんごを売るのではなく、ブランドを売る」ことを重視、あえて“Apple”とせず“Ringo”と呼び、高価格であることの説明を丁寧に販売員や消費者に説得し続けてきた。積み重ねた汗と努力は、1日で白紙となった。しかし、ジェトロ青森は2012年2月再び、山野社長をドイツ、スイスへ派遣した。スイスでは販売品目拡大の合意、ドイツでは昨年の合意を継続すべく商談成立。同社の売上構成に於ける輸出シェア目標30%に向けてまた歩み始めた。

●有限会社柏崎青果
ベトナムでの「黒にんにく」の販売風景

ベトナムでの「黒にんにく」の販売風景

 同社は、全国生産日本一の長いも、にんにく、ごぼうをはじめ青森県特産野菜の生産・流通・加工・販売(6次産業)を確立させている農業法人である。創業1991年、独自の野菜の加熱乾燥技術で漢方薬メーカーのツムラに原料を納入。 2008年米国へ長いも輸出を果し、それを機に海外販路への模索を始めた。特に「にんにく」に付加価値をつけた「熟成おいらせ黒にんにく」の開発は同社の原動力となった。2010年7月、海外販売戦略の取り組みを「海を越えろ、青森県産品!儲かる農業へのチャレンジ」と題し発表して名誉賞授賞。同社は、「黒にんにく」を主力製品として海外バイヤー招聘商談会や海外見本市ジェトロブースへの出展など積極的に参加、海外輸出先を台湾、香港、フィンランド、シンガポールへと順調に拡めていった。ベトナム、スイスでは中国産黒にんにくと競合、価格面では勝機はない。しかし、「安心・美味・健康的」と富裕層から注目を受け、店頭へ並んだ。 そして2012年4月、「ジャパンブランド」を取り戻すため、柏崎社長はベトナムへ飛ぶ。

●有限会社アルパジョン
サンフランシスコでの見本市出展の様子

サンフランシスコでの見本市出展の様子

 創業者で社長の松坂和治氏は八戸市出身。若い頃にフランスで修行し、在京の外資系ホテルでパティシエとして腕を振るった。そして1994年、故郷・八戸市に戻り、青森の風土によって育まれた四季折々の食材に誇りと感謝の念を自社コンセプトに創業。2001年販売開始した真心の伝わる商品は、あるテレビ番組の放映からメディアに大きく取り上げられ、通信販売やインターネットのショッピングサイトで人気を集めた。そして、上海万博開催を機に上海に2店舗出店。しかし、2010年に日本で口蹄疫が発生、中国に乳製品を輸出できず撤退。その後も海外バイヤー招聘商談会やミッションへ参加するなど海外へのチャレンジは続き、いよいよ台湾企業からの大口オファーを受ける。そして原発事故、それに伴う風評被害が起こった。それでも尚、海外取引に伴う壁を乗り越え、そして、商品の安全性や会社のコンセプト、思いを直接伝えることの重要性を知り、商社に負けないノウハウを得るために直接貿易を目指し、果敢に世界へ挑んでいる。

●「まるごと青森県」とジェトロ青森
青森県産の米国モニタリング調査の様子

青森県産の米国モニタリング調査の様子

 豊かな自然に囲まれ、米、野菜、果実、畜産、水産等のバランスの良い生産品目とカロリーベースの食料自給率が121%(全国第4位)という強みを生かした青森県産業。その活性のため、海外販路に意欲を持つ上記を含む企業16社から構成したグループ「まるごと青森県」。生産者で構成された商社として世界を闊歩する日まで、ジェトロ青森は支援し続けたい。


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