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連載 メコン圏と日本 No.5 – ベトナム2 ベトナムの工業化の課題と日本企業の役割 | COPRONA株式会社(コプロナ) 代表取締役副社長 ダオ ユイ アン【配信日:2012/08/31 No.0210-0856】

配信日:2012年8月31日

連載 メコン圏と日本 No.5 - ベトナム2
ベトナムの工業化の課題と日本企業の役割

COPRONA株式会社(コプロナ)
代表取締役副社長
ダオ ユイ アン


 2015年にアセアン10ヶ国と中国を含めた経済圏が誕生する。闇雲に周りの国々と同じことをやっていれば、ベトナムに勝算があるのか。ベトナムの長所を生かした産業戦略をもってやるべきだ。


1. ベトナムの今
 先ず、弊社のことを一言で紹介すると、日本と残りのアジア諸国をビジネスでつなげようとするベンチャーである。目標はあくまでアジア全体と高いが、まずは日本の中小企業のベトナム進出支援と日越ビジネス・マッチングや文化交流をメインとしたベトナムとの事業で、アジアの突破口を開きたいと考えている。 私はベトナムのダナンという中部の都市に生まれて、18歳の時にドンズー日本語学校の留学プログラムで来日して以来、日本にいる時間の方が圧倒的に多いが、仕事柄でよくベトナム出張しており、ベトナムの生活感覚を忘れていない。下記の表はあくまで私個人の体験に基づいたものだが、ある程度ベトナムでの生活をイメージして頂けるのであろう。

表:ベトナム生活の数字  ベトナムは昨年からの金融引締政策により、多くの企業が倒産していると言われているが、先月行ったホーチミンとダナンではあまりその印象がなかった。活気のあふれた雰囲気は相変わらずだ。事業に失敗して自殺したという話もあまり聞いていない。仕事がなくても何とか食べていける土地柄だからだろうか。
 ホーチミンの居酒屋で高校の同級生と久しぶりの再会を果たしたが、日曜日の昼間という理由か満席の状態だった。

 ダナンの空港に降りたら妹の旦那さんがレクサスに乗って迎えにきてくれた。4月に新しいホテルが完成して、毎日のように満員御礼の状態だという。因みに彼は建設会社の社員という顔も持っている。

2. ベトナムの工業化の課題
 ベトナムに対するODAが再開される1990年代のはじめから、海外からの直接投資(FDI)が増え始めた。当初は大手企業が多かった。工業団地の大きな敷地を確保し、自前の工場を建て、数千人単位の従業員を雇い、ラインで組み立て作業をやらせるのが主流だった。そして、気付けば20年が経とうとする今になっても、ベトナムで(工業的な)モノづくりという文化がまだ根付いていない。例えば、電気関係の会社で勤務している友人に「会社が何を作っているのか」と聞くと、電気メータを作っているというが、よく聞くと部品は全部中国や台湾から買ってきて、会社では組み立ての作業だけをやっているという。それでもモノづくりをしていると彼は言い張る。あるいは、昨年の11月にホーチミン市で地元企業向けの生産管理セミナーを開催した時に幾つかの現場を見学する機会があった。5Sを導入していると誇らしげに紹介してくれた社長を問い詰めると、どうも5Sは生産管理そのものだと考えているようだった。
 そんな中で、ベトナム政府が2020年までの工業立国を目指すという目標を掲げ、そのために裾野産業育成が急務だということで、北部のハイフォン市と南部のバリアブンタウ省を裾野産業の育成拠点と指定し、育成のサポート事業に日本政府の協力を求めている。
 その効果なのか、今年からベトナムの各地方よりたくさんの使節団が来日している。彼らの目的は一つ、日本企業を誘致することだ。「我々には安い労働力と広い土地と優遇策があるからぜひ来てください、そして汚染事業以外ならなんでもやって下さい」は彼らの得意文句だ。労働集約型のモデルがどれだけベトナムをダメにしたのか、彼らは まだ気づいていない。
 そもそもベトナムはどんな産業を発展させるために工業化を進めるのか、確認する必要があると思う。工業団地に誘致したい産業のランキングはいつも自動車産業、電気電子、ハイテック等がトップを占めているけれど、それでいいだろうか。ベトナムはモノを大量に安く作ることでは中国に勝てないし、かといって先端モノをやるベースと力も持っていないように思われる。ベトナムしかできないことをやらなければならない。そのためにはベトナムの魅力を再確認する必要がある。

3. ベトナムの魅力
 先ずは、ベトナムは食材の王国だと思う。しかし、その食材に付加価値を加えることができていないベトナム。養殖・栽培・保存・加工・管理技術を導入・改善し、海外での販売ルートを作ればいい話だが、日本企業のできることがいっぱいある。 
 次に、ベトナムは自然エネルギーの大国である。平均日照時間は日本に比べても多く、 風もモンスーン発達地域のためポテンシャルが大きい。今はベトナムの電気代が安いので、売電事業の魅力が見えないが、ベトナムでグリーン・エネルギーが絶えず大量に作られていくことを想像してみてほしい。「世界のグリーン充電所」、そんなベトナムの未来も考えられるのであろう。
 もう一つ。ベトナムは大自然に恵まれており、海外の観光客に人気だ。しかし、観光産業はまだ「見せる」ことしかやっていなく、リピーターを確保しにくいのが現状。ベトナムの観光産業が発展するポテンシャルを十分に持っている。ひと工夫すればというところだが、この辺は日本企業に学ぶことが多いと思う。観光産業が発展すれば、バス会社・ホテル・飲食店といった裾野も広がっていくのであろう。  しかし、何と言ってもベトナムの一番の魅力は人材だと思う。ベトナム人の私が言うのもなんだけれど。一般的に人が誠実で、情け深く、向上心も強い、しかも親日である。もちろん個人差はある。仏教の思想の影響が大きいためか、ベトナム人の考え方が日本人のそれに近いものがある。そして、ベトナム人が日本人に対して歴史由来の変な感情をほとんど持っていない。日本人とベトナム人がお互いのベスト・パートナーになれると思う。

4. 結び
 2015年にアセアン10ヶ国と中国を含めた巨大な経済圏が誕生する。その時にやみくもに自動車だの、電機電子だの、周りの国々と同じことをやっていれば、ベトナムに勝算があるのだろうか。国際競争に負ければ雇用が奪われ、経済に大きなダメージを受けるのが必然的だ。ならば今から、ベトナムの長所を徹底的に生かした産業戦略をもって産業育成をやるべきだと思う。そのためには、日本企業の貢献が必要不可欠である。Win-Win関係になるはずだ。

COPRONA(コプロナ)株式会社URL:http://coprona.com/

(原文:日本語)

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