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連載 メコン圏と日本 No.7 – カンボジア1 カンボジア経済の現状と日本の経済協力 | 国際協力機構(JICA) カンボジア事務所 次長 平田 仁【配信日:2012/10/31 No.0212-0864】

配信日:2012年10月31日

連載 メコン圏と日本 No.7 - カンボジア1
カンボジア経済の現状と日本の経済協力

国際協力機構(JICA) カンボジア事務所
次長
平田 仁


 成長著しいASEAN諸国の1つであるカンボジアは、中国プラス1の日本企業の進出先としてもにわかに注目を集めつつある。このカンボジアの現状及び日本の関わり方につき考察する。


1.China+1
 2010年の中国旧正月、ベトナムのテト後、労働者が工場に戻らず、労賃の上昇が拡大したことから、日本の製造業は、次の進出先としてカンボジアを真剣に見られるようになりました。実際に、2010年にミネベアさんがカンボジア進出を決められる等、同年、投資認可額は35百万ドルを記録し、2010年は日本企業による「カンボジア投資元年」と呼ばれるようになりました。その後も2011年に75百万ドル、2012年8月現在で4億ドルと、日本企業の投資のスピードは増しています(グラフ参照)。また、投資分野も、縫製分野、ミニチュアモーター、自動車ワイヤーハーネス、家電用ワイヤーハーネス、更にはプラスチック成型部品、ウッドチップ用植林等と多角化が進んでいます。

対カンボジア日系企業投資認可実績 2.カンボジアの特徴
 カンボジアは人口1400万人、国土は日本の約半分ですが、その大半がメコン川とトンレサップ川によって作られた平地であり、コメを中心とした農業生産に適した国です。GDPの約3割が農業セクターであり、労働者の7割が農業に従事し、その大半がコメを生産しています。30歳以下の人口が約7割と若い国でもあり、毎年約30万人が労働市場に加わるため、農業以外の雇用先として、製造業、サービス業が期待されています。

5歳以上就労者分野別割合  70年代から長い内戦の時代が続きましたが、98年以降は、フンセン首相率いるカンボジア人民党(CPP)が選挙の度に議席を増やし、政治と治安は安定し、2011年まで過去10年間の経済成長率は平均7.7%成長(IMF)を記録しています。輸出品の大半がアメリカ、EU向け縫製品であったため、リーマンショックによる欧米の景気後退の影響を受け、2009年は0.1%成長に減速しましたが、2010年には6%成長に回復し、2011年は6.5%、今年は7%近くの成長が見込まれています。農業、縫製品輸出に加え、観光セクターも経済成長のエンジンの一つです。12世紀から14世紀にかけて発展したアンコール文化の遺跡群があるシェムリアップには毎年2百万以上の観光客が訪問し、カンボジア政府よると、2012年第1四半期(1月~3月)の観光客数は99万人となり、対前年同期比で27.8%の大幅増加となっています。
 カンボジア政府は、2020年までにGDPを2倍にする目標を掲げており、その目標を達成するため、FDIを梃にした製造業分野の成長に大きく期待をしています。FDI振興策として、カンボジア政府は、税優遇措置等の恩恵を受けられるSEZ(経済特区) 制度を設け、現在、23 か所のSEZが認可され、既に8 か所が運用を始めています。日本企業の多くは、SEZ内に建設した工場で生産を行っています。(主なSEZ及び進出企業、以下のとおり)

プノンペン:ヤマハモータース、味の素、ミネベア、住友電装
タイセン:スワニー、ヨークス
シアヌークビル:泉電子、アスレ電器
シアヌークビル港:王子製紙
コッコン:矢崎総業

3.カンボジアの開発課題
 急速に成長を遂げているカンボジアですが、周辺国と比べると、インフラ整備、保健、教育分野等の開発状況は遅れています。道路ネットワークの舗装率は、一桁国道では99.1%ですが、二桁国道では30.2%と極端に低下し、州道、地方道では1.7%以下となっています。また、電力供給については、世帯電化率は約20%、人口の約84%が未電化農村地区に居住しており、蓄電池や薪、木炭を使用している状況。教育セクターでは、近年初等教育の就学率は全国で90%以上となりましたが、中等教育では40%以下にとどまっています。平均余命(2009)は、日本83年、フィリピン76年、ベトナム72年、タイ70年などに対し、カンボジアは61年です。
 2012年4月に日本政府が定めたカンボジア向け国別援助方針においては、経済成長を通じた貧困削減の実現のため、経済インフラの整備、民間セクター新興、農業セクター開発の3分野により重点が置かれています。
 経済インフラの整備については、JICAは、ホーチミンとバンコクを繋ぐ「南部経済回廊」に対する支援を重視しています。現在、無償資金協力によってメコン架橋である「ネアックルン橋建設計画」を建設中であり、2015年3月に完成が予定されています。ベトナム国境からプノンペンまでを繋ぐ国道1号線は、メコン川の東をADB、西を日本の無償資金協力で整備しており、ネアックルン橋の完成によって、物流に大きな変化が生まれることが期待されています。また、プノンペンとタイ国境(ポイペト)までを結ぶ国道5号線の拡張も現在計画されています。国道5号線はタイとカンボジア間の貿易の基幹物流網であると同時に、北西部に位置するコメの大生産地バッタンバン州と消費地であるプノンペンを結ぶ基幹道路でもあります。今後、物流の急速な増加によって、既存の片側1車線道路のキャパシティが問題となることが見込まれており、JICAは今後、計画的に5号線の事業化調査を実施し、円借款を活用した国道5号線の拡幅等を進めて行くことを検討しています。また、電力分野においては、電力の安定供給のために必要な、送電線、変電所の整備に対する投資、地方電化のための小水力発電に対する投資を有償資金協力、無償資金協力を活用して支援している他、カンボジア電力公社(EDC)の電力技術者の能力向上のための技術協力プロジェクトを実施して行きます。
 民間セクターの開発については、投資環境改善のため、投資受入れ窓口であるカンボジア開発評議会(CDC)にジャパンデスクを設け、投資を検討されている日本企業の相談を受け付け、投資関連情報の提供を行っています。ここ最近、ジャパンデスクを訪問される日本企業の数は、一昨年9月の59社、昨年同月の90社から本年の109社と拡大しています。(中小企業に特化したデータはなし)日本語の投資ガイドブックの作成も投資環境情報発信の一環であり、投資手続き、税制優遇制度、インフラ状況、生活環境等の情報を毎年更新して、配布を行っています。また、過去3年間、毎年1回、カンボジア投資セミナーを開催し、CDCのソクチェンダ大臣による投資環境のプレゼンや進出された日本企業の経験談の紹介を行い、今年7月の大阪、東京でのセミナーには、合計で442人に参加頂きました。
 カンボジア唯一の深海港であるシアヌークビル港に対しては、99年以降、JICAはコンテナターミナルの整備に対する支援をしており、コンテナ輸送は9%の成長を示しています。港の後背地に隣接するSEZの建設にも円借款が活用されており、2012年5月に引き渡しが済み、輸出型の産業の誘致を進めています。既に、最初の契約先として 王子製紙さんの子会社であるHarta社さんが進出を決め、工場建設が進められています。
 農業分野においては、生産性が向上してきたものの、まだ周辺諸国と比較して低いコメの生産能力の向上のため、灌漑施設に対する投資や、灌漑施設の維持管理、営農に必要な技術協力を引き続き実施して行きます。

4.今後
 カンボジアは、タイとベトナムに挟まれた小国ですが、急速にインフラの整備、人材育成を進めており、今後、中国からの投資移転先として、益々有望な国として発展していくことが期待されます。長く続いた内戦からの復興の段階は終わり、新興国として高い経済成長を続ける国として、また、メコン地域の均衡ある発展のため、今後も日本との関係が強まっていくことが予想されます。

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