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通商白書2012(後編) ~世界とのつながりの中で広げる成長のフロンティア~ | 経済産業省 通商政策局 企画調査室【配信日:2012/10/31 No.0212-0867】

配信日:2012年10月31日

通商白書2012(後編)
~世界とのつながりの中で広げる成長のフロンティア~

経済産業省 通商政策局 企画調査室

3-1 業の海外事業展開の広がりと成長機会の取り込み
 我が国企業の海外事業展開は、大規模製造企業によるグローバル・サプライチェーンの展開というイメージでは捉えきれない広がりが見られ始めている。輸出や対外直接投資は中小・中堅企業にも広がってきており、またこれまで「内需型」と言われてきたような非製造業等の業種の中でも海外事業活動への積極的な取組が見られる(第10図、第11図)。地理的には北米・欧州への投資はシェアとしては低下傾向にあり、中国等のアジアへの投資が急増し、またこれら地域の市場としての重要性の増大を反映して卸売業・サービス業や、製造業でも卸売機能の海外事業展開が目立ってきている。

第10図 業種別の海外現地法人数の推移 第11図 海外子会社保有企業数(製造業、従業者規模別)  他方、我が国では「6重苦」と呼ばれる事業環境の悪化が強く意識され、また日本企業が対外M&A等、対外直接投資を強化する動きが見られたこともあって、産業空洞化への懸念の高まりが見られた。一般的には、対外直接投資と国内の事業活動は代替的というよりも補完的と考えられる場合が多く、現段階で対外直接投資が国内の生産や雇用の減少に結びついているという明確な証拠には乏しい。しかし、今後、我が国経済の成長力が減退し、新たな雇用機会へのシフトが進んでいかない場合には、国内の事業活動を海外へ代替する空洞化現象への懸念が現実のものとなる可能性にも留意する必要がある。他方、海外事業展開は、企業内の資源配分の効率化、技術・ノウハウの波及効果、研究開発インセンティブの高まり等、国内事業の生産性の向上やイノベーションの促進につながる機会となるものである。海外事業展開の裾野を今後さらに広げていくことが、新たな成長機会となっていく可能性がある。

3-2 サービス業の海外事業展開の可能性
 特にサービス業に着目すると、現状では我が国は輸出・輸入額とも主要国と比べて大きくはなく、収支としては赤字を計上しているが、赤字幅は縮小傾向にあり、対アジアでは既に黒字化しているなど、変化の兆しも見られる(第12図)。近年では、我が国独自の価値により差別化を図ることで海外市場でも一定の評価を得るサービス業の事例が出ている。我が国サービス業が培ってきたノウハウやブランドといった無形の価値を、海外に向けて発信していく余地があることを示していると考えられる。更に、サービス機能と製造業との結びつきによる製品の高付加価値化や競争優位の強化も期待される。

第12図 主要国向けサービス収支の推移 3-3 事業環境整備に向けたドイツ、韓国の取組
 企業の海外事業展開を、国内の成長力へと取り込んでいくためには、国内の事業環境の整備が不可欠である。この点、ドイツや韓国による取組が参考になる。ドイツはEU域内の為替リスクのない単一市場のメリットを享受するだけなく、労働市場改革、法人税引下げや研究開発促進等の事業環境整備に取組、ドイツ企業の競争力強化に寄与した。韓国も、大企業に加え中小企業も含めて国内企業の海外事業活動を積極的に支援し、海外市場における存在感を拡大する一方で、法人税引下げ、自由貿易協定、起業促進等の事業環境の改善を進めるとともに、国内産業高度化を積極的に支援してきている。我が国においても経済連携の促進や立地補助金といった事業環境の改善の取組や、平成23年度税制改正における法人実効税率の5%引下げ等により我が国企業の競争力強化を進めているところであるが、こうした取組以外にも諸外国は様々な取組を行っており、我が国も学ぶべき点が少なくない。

4-1 我が国企業の取組を後押しする貿易投資環境の整備
 今後、我が国経済と世界経済との繋がりを更に強化して海外の需要を獲得するためには、FTA/EPAの推進、WTO等を通じた世界・地域規模でのルールの形成等、我が国の貿易投資環境の整備が不可欠である。

4-2 ニーズの変化に対応した海外事業活動支援
 外需の中でも、とりわけアジアを中心とした新興国等におけるインフラ整備需要を取り込み、パッケージ型インフラ海外展開を推進することで、他国の成長を我が国の成長に繋げることが引き続き重要である。加えて、我が国経済の新たな成長エンジンとして、伝統と文化によって培われた我が国の魅力を活かしたクールジャパンの海外事業活動の拡大が期待される。
 また、近年、中小企業による海外事業活動は増加してきているものの、海外事業活動を開始するハードルを下げるための支援策の整備とともに、不足されているといわれている「グローバル人材」の確保・育成が求められる。

4-3 急務となる立地競争力強化策
 海外に成長機会を広げるとともに、国内の立地競争力強化も重要である。そのためには、平成24年から実施している法人税引き下げに加え、アジア拠点化に向けたグローバル企業の立地促進、立地補助金の整備への取組が必要である。
 中長期的な取組としては、今後の我が国経済をリードする新たな成長分野として、課題解決型産業(ヘルスケア・子育てサービス、医療機器、省エネルギー)、クリエイティブ産業(観光、文化)、先端産業(次世代自動車・航空機・宇宙産業等)の育成が重要である。

終わりに 貿易立国の今日的意義
 「貿易立国」という言葉は今日頻繁に使われているが、元来は戦後復興の方向性を議論する中で提示された考え方の一つであり、「一国経済の問題を世界的な規模の上で解決すること」を主張するものであった。「一国経済の問題」は、時代によって変わりうる。「貿易立国」についてまとまった記述を置いている1976年通商白書では「我が国経済の安定的発展を図り、国民生活の向上を確保していくためには、貿易の安定的発展が必要不可欠である」とし、「内外経済の動きにダイナミックに対応するとともに(中略)より高度な国際分業関係を形成していくことが要請される。これが貿易立国日本の進む道であろう。」と論じている。
 2011年は、稀に見る厳しい通商環境の年となったが、そうした中でも財・サービスを通じて我が国独自の価値を海外に対して発信し、成長力を国内に取り込んでいこうとする動きに広がりが見られる。この白書を通じて「貿易立国」の今日的な意義への理解を深める一助となることが期待される。

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