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花巻市観光産業の現状と復興・再生 | 岩手県花巻市 商工観光部長 高木 伸【配信日:2013/01/31 No.0215-0878】

配信日:2013年1月31日

花巻市観光産業の現状と復興・再生

岩手県花巻市
商工観光部長
高木 伸


 花巻市は北東北における観光拠点として、年間200万人を超える観光客をお迎えしています。2011年の東日本大震災が花巻市の観光産業に与えた影響と、その後の現状をお知らせするとともに、今後の観光戦略、被災地復興を含めた再生戦略についてご紹介させていただきます。


花巻市の公式キャラクター「フラワーロールちゃん」

花巻市の公式キャラクター「フラワーロールちゃん」です。市内の観光案内・道路サインなどにも表示されています。

 花巻市は、「北東北」(青森県・秋田県・岩手県)の玄関口にあたり、周囲を「十和田八幡平国立公園」や「早池峰国定公園」に囲まれた、自然豊かな地方都市です。
 まちの中央を東北地方最大の大河「北上川」が流れ、その川沿いに市街地が形成されています。市街地から少し離れるとブナの原生林をはじめとした森林が広がり、「奥羽山脈」に沿って点在する12箇所の温泉群が「県立自然公園・花巻温泉郷」を形成しています。
 花巻市で生まれた詩人・童話作家の「宮沢賢治」が『イーハトーブ(理想郷)』と称した自然、風土のなかで、農業・商業・工業・観光、それぞれの産業が調和したまちづくりを進めています。
 このなかで「観光」は、今後の定住人口減少を見据えた交流人口の拡大と、経済活力の向上を図る重要なキーワードであり、戦略的構想「観光立市イーハトーブはなまき構想」を掲げ、魅力ある観光地の形成と、おもてなしの醸成に努めているところです。

東日本大震災
 2011年3月に発生した「東日本大震災」。花巻市も「震度6弱」の激しい揺れに見舞われましたが、幸いにも被害の程度は小さく、数日間の停電と、ガソリンなどの燃料不足、食料・物資の不足といった不便さが半月ほど続いたものの、比較的早い段階で普段の生活を取り戻すことができました。今回の震災にあたり、国内外から心温まる義援金や、たくさんの励ましの言葉をいただきましたことに、改めて感謝いたします。
 震災直後から花巻市は、被害の程度が小さかったことや、甚大な津波被害を受けた沿岸部と内陸部との結節点に位置すること、空港や高速道路などの交通インフラが整っていること、そして花巻温泉郷をはじめとした宿泊機能が高いことなどから、「災害救助・救援」の広域的な拠点としての役割を担うこととなり、全国から集まった警察官やボランティア団体、自衛隊機・消防車両などの搬送基地として、被害地域への救助・救援、支援活動が展開されました。

鹿踊り

【鹿踊り】1,200年前から続いている花巻市の郷土芸能です。県内に様々な流派があり、「花巻まつり」の際には数十団体が集合し連舞します。

観光産業への影響
 こうした救助・救援活動は震災後3カ月ほど続きましたが、当然その間は、温泉地をはじめとした宿泊施設は支援関係者や沿岸部等から避難されてきた被災者の方々で一杯となり、まずは「観光よりも救援」といった状況が続いたところですが、そうした動きも次第に縮小され、夏本番を迎えるころには震災前の状況に戻りつつありました。
 それでも、余震に対する警戒感や、福島第一原子力発電所事故に伴う放射線への不安感などから観光客の回復は遅れ、しばらくは震災前を大幅に下回る状況が続きました。特に、放射線に対する「風評被害」は深刻で、市内の空間線量や食材などは基準値を大きく下回っており、市民生活にも全く影響がない状況でしたが、「東北=汚染」といったイメージが広く流布し、観光客の回復を妨げる大きな要因になりました。
 そのため、まずは風評被害の払拭を図ることが重要なテーマになった訳ですが、これが容易ではなく、「安全」をアピールすることの難しさを痛感しました。あれこれと手だてを考えても、結局は「現状ありのままを、繰り返し丁寧に発信する」といった地道な作業以外に有効な術はなく、ある程度の時間がかかることは覚悟のうえで、宿泊関係者や観光団体、市などが同じ情報を共有し、「安全さ」の発信に努めてきました。

観光産業の現状
 そうしたなかで、2011年7月に、花巻市から50㎞ほど南下した「平泉」がユネスコ世界遺産に登録されるという明るいニュースが届き、国内の一般観光客に回復の動きが見え始めました。さらに、今回の震災で「雨ニモ負ケズ」をはじめ「宮沢賢治」の精神が改めて脚光を浴びたことで賢治ゆかりの地を訪れる観光客が大幅に増加し、気がつけば震災前を上回る観光客の入込が2011年の秋口以降続いています。
 この好調さは現在も続いており、2012年3月から観光庁が展開している「東北観光博」や、同4月からの「いわてデスティネーションキャンペーン」(JR各社と岩手県などが連携した誘客イベント)のほか、花巻市独自のイベント効果等も相まって、宿泊客・入込数ともに、震災前を1割程度上回っています。

 それでも課題があります。一つは、根強い「風評被害」です。国内の一般観光客は回復しましたが、震災後急激に落ち込んだ「外国人観光客」と「修学旅行などの教育旅行」は回復が遅れています。特に、外国人観光客にあっては、震災前の「7割減」の状況が続いており、持ち直しの兆しが見えません。
 もう一つの課題が「観光客の街なか誘導」です。花巻市は市域が広いため、宿泊施設や観光拠点が比較的分散しており、宿泊・滞在型の観光スタイルが定着しつつあるものの、市民がそれを実感することができません。今後、交流人口拡大による地域活力の向上を図るうえで、中心市街地をはじめとした街なかへの観光客誘導を強く意識する必要があります。

花巻温泉の中の桜並木

【桜並木】花巻温泉の中の桜並木です。花巻市は、桜や梅、桃などが一斉に咲くため、その短い時期は市内全体が桜色に染まります。

胡四王山からの早池峰山

【胡四王山からの早池峰山】胡四王山は宮沢賢治が愛した場所で、現在「宮沢賢治記念館」が立っています。早池峰山は当市のシンボル的な山で、山岳信仰でも知られています。その一体はヨーロッパアルプスを彷彿させます。


ワインシャトー大迫

【ワインシャトー大迫】花巻市のワイナリー「(株)エーデルワイン」です。同社のワインは毎年世界のワインコンクールで上位の賞を受賞しており、昨年は金賞、本年も出展9品がすべて銀賞以下に輝きました。本年は、国内産ワインコンクールでも専門家部門で金賞を受賞しています。

今後の観光戦略
 繰り返しになりますが、「観光産業」は今後の地域経済を支える大きな成長・戦略分野です。花巻市には、リゾート型ホテルから古くからの湯治場まで多様な「温泉」群があり、宮沢賢治や高村光太郎、新渡戸稲造など数多くの偉人・先人ゆかりの場所があります。また、日本酒・ワインといった地域ブランドや、「イーハトーブ」の原風景、四季折々の風情に出会える豊かな自然など、多くの観光資源に恵まれています。
 今後も、これら観光資源のブラッシュアップやパッケージ化を進め、観光地としての魅力アップを図ることは勿論ですが、加えて、前述した「街なか誘導」を図るための一つの戦略として、「どこでも宮沢賢治を感じることができる」をキーワードに、市民と一体となった「賢治によるまちづくり」を昨年から始動させています。

外国人観光客誘致
 そのなかで、インバウンド「外国人観光客誘致」は、今後の観光産業を飛躍的に発展させる大きなアイテムです。花巻市は現在、ホットスプリングス市・ラットランド市(いずれもアメリカ合衆国)、ベルンドルフ市(オーストリア)、大連市西崗区(中国)と国際姉妹都市・友好都市協定を結んでおり、相互の人的な交流や経済交流を進めています。そうした国際交流の下地を生かした新たな観光戦略、外国の方々が訪れやすい、国際感覚を備えたインフラ整備が、今後の大きなキーワードと考えています。

未来都市銀河地球号

【未来都市銀河地球号】JR花巻駅近くの道路壁面に描かれている「壁画」です。ブラックライトに反応し、夜間浮かび上がります。(昼間はただの白い壁面です)。宮沢賢治の「銀河鉄道」をイメージしたものです。

復興・再生に向けて
 今被災地では、懸命な復興活動が進められています。花巻市から沿岸被災地までは約90㎞。現在急ピッチで工事が進められている「東北横断自動車道」が全線開通すれば、僅か1時間少しの距離です。同じ被災県の内陸自治体として、花巻市は沿岸被災地の復興・再生をしっかりと支える役割・義務があります。
 これまでも物的な面では様々お手伝いをさせていただいてきましたが、今後は、経済活動を含めた「活力」の提供が必要です。また、震災を風化させない、多くの方々に被災地を訪れていただく、そういった交流の拡大も必要です。
 そのためには、現在も取り組んでいる「被災地アンテナショップ」の運営や、「被災地応援ツアー」を盛り込んだパッケージ商品の発信など、花巻市が持つ観光のインセンティブを生かした支援方策をより強化し、被災地と一体となった観光復興にも積極的に関わっていきたいと考えています。
 皆さまの継続した支援を、今後もよろしくお願いします。

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