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復興3年目の現状と展望 | 岩手県 理事兼復興局副局長 佐々木 和延【配信日:2013/06/28 No.0220-0894】

配信日:2013年6月28日

復興3年目の現状と展望

岩手県 理事兼復興局副局長
佐々木 和延


 岩手県は、平成23年3月11日に発生した東日本大震災津波で、沿岸部を中心に甚大な被害を受けました。亡くなられた方は4,672人、行方不明者も1,150人(平成25年4月30日現在)となっています。全・半壊となった家屋は約2万5千戸、現在も約3万7千人の方々が応急仮設住宅での不自由な避難生活を送っています。
 こうした中、発災直後からこれまで、全国また世界中の皆さんから多くのご支援をいただいております。この場をお借りしてあらためて御礼申し上げます。


これまでの県の取組
(1) 岩手県東日本大震災津波復興計画の策定
 本県では発災から5ヶ月後の2011年8月11日に、「岩手県東日本大震災津波復興計画」を策定しました。
 目指す姿である「いのちを守り 海と大地と共に生きる ふるさと岩手・三陸の創造」の実現のため、復興に向けた原則として、「安全の確保」、「暮らしの再建」、「なりわいの再生」の3つを掲げ、まちづくりのグランドデザインや具体的取組の内容を示した「基本計画」、施策や事業を示した「実施計画」によって構成しています。計画期間は8年間で、今年度は「基盤復興期間」の最終年度となります。
 計画策定後の状況の変化を反映させるために、昨年8月に「復興実施計画」を改訂し、また、来年度から「本格復興期間」に入ることを踏まえ、今年度中に復興実施計画(第2期)を策定することとしています。

復興計画の構成及び期間
復興計画の3つの原則
(2) 社会資本の復旧・復興ロードマップ
 加えて、本県では「社会資本の復旧・復興ロードマップ」を公表しています。
 今後のまちづくりや公営住宅整備など県民生活に関わりの深い社会資本の分野を選んで、事業の実施箇所や規模、平成30年度までの工程見通しを示すもので、被災者や被災企業の方々はもちろん、復興を支援してくださる皆様にも役立てていただくことを目的としています。昨年6月に第1弾を作成し、以後定期的に改訂を行っています。

(3) いわて復興ウォッチャー調査
 さらに、本県では、復興状況を定期的に把握するため、被災地の方々の復興感に関する「いわて復興ウォッチャー調査」を3ヶ月ごとに行っています。
 今年5月の調査結果では、被災者の生活の回復度について「回復」との回答がようやく半分に達したところです。自由記載欄には「高台移転などの住環境の整備が進まないことへの不安」の回答が多くあり、被災者の方々は、復興はまだまだ進んでいないと感じている状況がうかがえます。

復興の課題
2013年5月の大槌町の様子 この写真は、今年5月の大槌町の様子です。
 被災地では、被災建物の解体が進んで更地が広がっているような状態がまだ多く、その先にある本格的なまちづくりはこれからというところです。
 上で述べたウォッチャー調査の結果は、「被災者の方々が、目に見える復興の進捗があまり見られない中で停滞感を感じている」ということを意味するものであり、復興の加速が必要です。そのための重要な3つの課題とそれへの対応は以下のとおりです。

(1) 専門的な人材の不足
 被災市町村ではマンパワー不足がさらに顕著になっている状況です。具体的には、まちづくりや災害公営住宅の建設等のハード事業を担う技術者、それから、被災者の心身の健康を守る保健活動等のソフト事業を担う人材など、各分野の専門的知識を有する人材の確保が必要となっています。自治体間連携でカバーしきれないようなマンパワー不足については、国が主体的に動いていく必要があると考えており、国に対して「国による任期付職員の採用制度の創設」、「民間企業等からの職員受入れ支援」などについて要望・提案をしています。

(2) 現場にニーズに十分即していない財源措置
 復興に必要な財源は巨額なもので、国に様々な財源措置をしていただいているわけですが、地方の裁量は十分とは言えません。例えば「復興交付金」は、高台移転や災害公営住宅等について翌年度計画分まで前倒しで交付とか、砂浜の再生に利用可能とかいうようにようやく対象の拡大が図られています。しかし、そもそも交付対象が5省40事業に限られており、これから一層必要になってくる「なりわいの再生」に関する事業は認められる範囲が極めて狭く、柔軟な活用の観点ではまだまだ課題があります。
 復興の加速には、国費による充実した支援を基本に、財源の確保・充実が必要です。国庫補助負担率の引き上げ、補助対象・期間の拡大などこれまでも国に対して強く要望・提案をしています。

(3) 土地利用手続きの長期化
 「安全の確保」のために早くやらなければならない防潮堤事業の土地に関してサンプル調査をしたところ、所有者不明や相続手続の未処理など、用地取得に時間がかかる土地が約4割あるということが分かりました。
 復興まちづくりの実現には、土地の権利者から事業用地を確保したうえで、復旧・復興事業本体に着工するという流れとなるため、用地確保という最初の段階がボトルネックとなって長期化してしまうということも懸念されます。
 これについては、スピードアップを図るため様々な工夫や改善策に取り組んではいますが、そうした現場の努力による改善を重ねても、膨大な労力と時間を要することから、行政手続を抜本的に簡素化するための「事業用地の円滑な確保に向けた特例措置」のような「大震災特例」が講じられるように、国に要請しています。

未来を掴んで引き寄せる復興の加速
 被災地の復旧・復興、被災者の生活再建を加速し元に戻すことだけではなく、未来のあるべき姿をぐいっと掴んで引き寄せるような「加速」も必要です。
 このため、本県では、長期的視点で新しい三陸地域の創造を目指すためのリーディング・プロジェクトとして、復興計画に「三陸創造プロジェクト」を掲げました。この中から代表例として2つのプロジェクトを採り上げてご紹介いたします。
 
(1)「国際リニアコライダー(ILC)」の誘致
 ILCは30キロメートル以上の直線の地下トンネルに建設する素粒子物理学分野の大規模研究施設のことで、電子と陽電子を光速に近いスピードに加速して衝突させた瞬間を観測することで、ヒッグス粒子の究明であるとか、宇宙の起源・物質の根源といったものを解き明かす世界的なメガプロジェクトです。
 この誘致が実現すれば、関連企業の立地による新産業の創出、また、多くの研究者やその家族の居住による国際化など、東北が世界に開かれた国際的な頭脳拠点になることとなります。
 現在、この最先端の研究施設を世界のどこかに建設しようということが検討されていますが、東北各県の結束により、ぜひ復興のシンボルとして岩手で推進されるよう働きかけていきたいと考えております。

(2) 再生可能エネルギーの推進
 三陸の地域資源を活用した再生可能エネルギーや省エネルギー技術を推進し、災害にも対応できる自立・分散型のエネルギー供給体制を構築、環境と共生するエコタウンの実現を図ろうというものです。
 現在、被災地の建物への太陽光発電の導入、県内各地でのメガソーラー、大規模風力発電、地熱発電の立地計画が進んでおりますし、地域の特性を活かした小水力発電や木質バイオマスの熱利用なども進展しています。また、三陸の海は高い海洋エネルギーポテンシャルがあるとされており、海洋再生可能エネルギーの導入や開発の拠点化が十分に可能と考えています。

未来に追いつく復興
 復興によって「危機」を「希望」に変え、すべての県民が、それぞれの希望を持つことができる「希望郷いわて」を実現するというのが、130万岩手県民共通の目標です。それは、復興計画の8年で過去である3.11時点に戻すのではなく、8年後の岩手のあるべき姿をビジョンとして描き、そのあるべき未来に8年かけて追いつく復興を推進するということです。
 岩手の復興が、日本全体の復興と再生につながるように、あるべき未来に向かって、復興を進めていきたいと思います。引き続きのご支援をぜひよろしくお願い申し上げます。
(本ページの英語版はこちら)

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