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実践的防災学の創設と展開を目指して―東北大学の災害科学国際研究所の発足 | 東北大学災害科学国際研究所 教授 今村 文彦【配信日:2014/3/31 No.0229-0924】

配信日:2014年3月31日

実践的防災学の創設と展開を目指して
―東北大学の災害科学国際研究所の発足

東北大学災害科学国際研究所 教授
今村 文彦


 東日本大震災後に東北大学で発足した災害科学国際研究所を紹介します。災害科学の深化、実践的防災学の展開をしています。


1. 東日本大震災と災害科学国際研究所の発足
 今般の東日本大震災は、巨大地震・巨大津波・原子力発電事故等の複合的な大災害であり、これまでの個別の課題に対して対応してきた「科学技術システム」の弱点・限界を浮き彫りにした。この中で、歴史的・世界的大災害を経験した総合大学となった東北大学においては、今回の経験を踏まえて従来の防災計画論では対応できない低頻度巨大災害に対応するための新たな学際的研究集団組織として「災害科学国際研究所」を設置した。東北大学では70年ぶりの新研究所であり、震災から僅か1年あまりで創立したことになる。
 2011年東日本大震災の実態と教訓を明らかにし、我が国の復興への具体的貢献と未来の巨大災害への備えを先導する研究拠点が、災害科学国際研究所が役割である。東日本大震災の経験と教訓を踏まえた上で、わが国の自然災害対策・災害対応策や国民・社会の自然災害への処し方そのものを刷新し、巨大災害への新たな備えへのパラダイムを作り上げたい。このことを通じて、国内外の巨大災害の被害軽減に向けて社会の具体的な問題解決を指向する実践的防災学の礎を築くことを目標とする。
 当研究所には、高い志と強い危機意識をもった文系から理系まで7部門36分野の研究者が集結し、災害科学の深化および実践的防災学の構築視点から学究的な研究を日々推進している。詳細はHPをご覧いただきたい。
http://www.irides.tohoku.ac.jp



2. 東日本大震災での巨大地震・津波の分析 -災害科学の現状
 今回の地震を気象庁は、東北地方太平洋沖地震(Mw9.0)と命名した。震源は、宮城県沖であり、想定されている地震の少し沖に位置していた。当初は、福島県・宮城県・岩手県沿岸を中心での活動であったが、すぐに、北は青森、南は、茨城・千葉方向に広がり、現在の余震の分布も、東北・関東地方での太平洋沖の広範囲に至っている。主な断層活動の範囲は、南北約500km東西約200kmであると推定されている。過去、この地域は、三陸沖、宮城県沖、福島県沖、海溝沿い、など個別地域でそれぞれ評価されていたが、今回、一気に連動し超巨大地震が発生したことになる。
 このような巨大地震が海底で生じると津波が発生する。東北地方太平洋沖地震による津波は、過去に無い姿を示していた。沿岸500km以上に渡り10m以上の津波高さを示し、最大遡上は40mを超えていた。極めて大きな規模であり、しかも、防波堤や防潮堤をも破壊するパワーを有していた。特徴としては、宮城・福島沖での海底変化(断層のすべり量)が大きいこと、しかも、日本海溝沿いの値が大きいことが示唆されている。深い海域で大きな海底変化が生じると、それだけ大きな規模の津波が発生する事になる。実際、各地で津波が観測され、2つの成分が三陸沖に伝幡する中で、押しのピーク(波の山)を一致(位相)させて、来襲した状況を示していた。今後、地震波、地殻変動などの解析結果、津波の遡上高さ分布などと照合させながら、巨大津波の発生メカニズムが解明していきたい。

3. 実践的研究の始まり
 研究成果を地域に還元し、活動に活かした活動が現在求められている。ここでは、2件の連携したプロジェクトを紹介したい。これらのプロジェクトは,復興庁による平成 25年度「新しい東北」先導モデル事業にも採択され、東北発の津波防災アクションの確立・普及・拡大を目標に、実践的防災学の一翼を担っている。

3.1 カケアガレ!日本 プロジェクト
 「カケアガレ!日本」は、その被災地である宮城県岩沼市で2012年に始まった。まだ、復旧の最中であったが、地震津波のリスクがまだ高く、地域住民の意識を維持するためにも不可欠であった。東日本大震災の教訓や経験を活かした津波避難訓練プログラムの企画と実施、津波避難対策に関する地域課題の解決や津波に備えた避難行動の習慣化を目指した産官学連携のプロジェクトである。さらに、「カケアガレ!日本」は従来型の、義務的で受け身な避難訓練ではなく、参加者がまるで地域のお祭りに参加するように、自分ゴトとしてとらえられる定例行事として実施できればと考えている。過去に津波の被害があった地域や、今後被害が想定される地域にひろく展開し、各自治体の住民が防災を継続的に語り継ぎ、体験していくことを目指す。

3.2 生きる力市民運動化プロジェクト
 日本は世界でも有数の「自然災害大国」であり、日本人は長らくその災害と共存してきたし、これからもその必要に迫られている。必要な態度は、災害に正面から向き合い、「正しく脅えること」。自然災害の脅威を正しく理解して、過度に恐れたり絶望的にならないこと、逆に無視したり軽視しない、自分だけは大丈夫だと楽観視もしないこと、さらに、自然災害の脅威を科学的知識として理解し、それに対する事前の備えをおこうこと、そしていざという時に、生きぬくための正しい判断と行動ができる知力・気力・体力・コミュニケーション能力を高めること。これらの能力こそが、"災害と共存して「生きる力」"であると考えている。「生きる力」が自然災害から命を守り、生活を守り、社会を守ることにつながると期待している。国民一人ひとりが自然災害から生き抜くための力を身につけるためのアクションプランや啓発ツールを開発し、普及させることを目指す「『生きる力』市民運動化プロジェクト」を2013年1月に立ち上げた。そのプロジェクトの成果が、「みんなの防災手帳」である。2014年4月には、宮城県多賀城市で全戸に配布される。

4. 国際研究拠点の形成に向けて
 今後、我々の災害科学の研究が、日本の復興はもちろん世界の災害軽減に貢献していくために、地球規模で災害のメカニズムを解明し、将来に備える「グローバルな視点」とその国や地域の独自性、多様性、価値観などをつぶさに研究する「インターナショナルな視点」の融合が不可欠と考えている。
 そのため国際的な連携を深めている。米国ハーバード大学、ハワイ大学、英国ロンドン大学、ドイツ航空宇宙センターと連携し強固な災害研究の推進を行っている。加えて、APRU(環太平洋大学協会)において、マルチハザードプログラムを立ち上げ、災害研究の推進、国際社会・政策への貢献、キャンパス安全の点検、サマークールの実施などの活動を開始している。
 国際的なマルチ連携も目指している。その1つが国連防災世界会議の開催である。この会議は、防災に対する国際的な取り組みの観点から、1990年代を「国際防災の10年」とし、1994年に横浜市で第1回国連防災世界会議を開催し、災害に強い社会の構築と事前の準備による被害軽減などを基本認識とする「横浜戦略」を採択した。その後、国連防災戦略事務局(UNISDR)が2000年に設置され、2005年に、第2回国連防災世界会議は会議の理念を盛り込んだ「兵庫宣言」と今後10年間の国際的な防災戦略の指針となる「兵庫行動枠組み(HFA)」を採択して閉幕した。これらは、現在、世界の防災政策の中心となっている。
 この第3回目の会議が、2015年3月に仙台市で開催される事が国連で決定された。各国政府代表、国際機関、NGO、学術機関、企業などが参加する予定である。GPは防災関係者の集う、世界的に最も重要な会議と位置付けられている。
 災害科学国際研究所も、当日の経験や教訓を発信すると伴に、防災学術研究の国際的中核としての役割、また、減災・防災の政策立案等に支援する事により国際社会への貢献を示したい。またこの国連会議を起爆剤として東北の復興に拍車をかけるための仕掛けを産学官民の連携により構築していきたいと考えている。

(516KB) 災害科学国際研究所のミッション

(668KB) 研究所発足後10年間の主要研究

(608KB) 出版:ニューズレター(季刊誌)
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