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大震災から3年を経た東北経済 ~課題の克服と今後の成長戦略~ | 経済産業省 東北経済産業局 局長 守本 憲弘【配信日:2014/4/30 No.0230-0927】

配信日:2014年4月30日

大震災から3年を経た東北経済
~課題の克服と今後の成長戦略~

経済産業省 東北経済産業局 局長
守本 憲弘


 震災後3年が経過し、経済指標は回復してきたが、沿岸部の住宅・商業復旧や水産加工業の稼働率向上などは始まったばかりである。東北地域全体の成長力を強化しつつ、復興を更に推進していく。


1.東北経済の状況
 2013年11月、東北の鉱工業生産指数は、震災前の2010年の水準を超えた。しかも、その指数は、日本全体の水準よりも高くなった( 図表1参照 (309KB) )。この背景には、(1)震災のダメージから立ち直ろうと懸命の努力を続けた産業界の貢献、(2)工場や社屋の復旧を支えた国や自治体の支援(注)、(3)高水準の公共事業など復興需要高まり、などの要因がある。また、日本のみならず、世界各地から届けられた支援や励ましのメッセージの数々は、被災地域が復興に向けて立ち上がるための有形・無形の大きな力となった。この場を借りて感謝を申し上げたい。

(注)工場や社屋の復旧に対する補助率3/4の補助金、中小企業基盤整備機構が整備して被災企業に貸与する仮設工場、仮設店舗、各自治体の復旧費の補助金、公的金融機関の低利融資等。

 この間、東北を牽引する産業にも変化があった。リーマンショック前まで、東北の鉱工業生産の1/3を占めていた電気・電子機械産業は、2012年には、1/4以下に低下し、変わって、自動車を中心とする輸送用機械器具産業が6%から11%に伸長した。また、電気・電子機械産業の内部でも、テレビ、デジタルカメラ、ゲーム機等の部品製造から、成長を続けるスマートフォンやタブレットの部品製造へと重点が移動している。比較的早期に地震の被害から復旧した内陸部の製造業は、こうした産業構造の変化を受け止めて、自動車産業への参入や、海外からのスマートフォン部品の受注を拡大している。
 住宅建設も好調である。災害復興公営住宅のような公営住宅のみならず、個人の自宅建設や賃貸マンションの建築も、東北全体で高水準にあり、景況感を支えている。こうしたことから、東北地域全体全体を見ると、2014年4月からの消費税率上昇に伴う消費の減少も大きなものとはならず、比較的堅調な推移が予想されている。

2.津波被災地域における街の再生の難しさ
 一方で、「復興は進んでいない。」という声も根強く聞かれる。その理由は、深刻な津波被災地や、原発による避難区域への住民の帰還が、当初想定されたようには進んでいないことである。
 震災や原発事故に伴って、自宅を離れ、仮設住宅などで避難生活を送る人の数は、震災直後の2011年3月には約47万人と想定された。避難者数は、同年12月に約33万人に急減したが、それから2年3ヶ月後の現在においても、26万7千人を数えている。その背景には、津波により深刻な被害を受けた地域で、再び住民を受け入れるための高台移転や沿岸部の土地の嵩上げなどが、土地の権利関係整理の為の市町村の人員不足や公共事業の集中による作業員不足などにより、当初計画から見ると、遅れつつあることが挙げられる。これに伴い、元の場所から避難し、仮説店舗で営業している商業についても、従来の場所での営業再開のタイミングが明確になっていない地域がかなり残っている。

3.水産加工分野での課題
 また、障害を乗り越えて、工場などの復旧を進めている産業においても、困難な課題を抱えている場合がある。水産加工業はその例である。もともと、三陸海岸は、世界三大漁場に数えられる水産基地であり、そこで水揚げされる新鮮な海産物を加工して出荷する水産加工業も盛んだった。その性質上工場は沿岸部に集中していたため、津波による被害は甚大だった。そうした工場群の相当程度が、国や県の手厚い支援を活用して施設を復旧した。しかしながら、せっかく復旧した設備が低い稼働率に悩んでいる( 図表2参照 (34KB) )。一つには、被災して復旧するまでの間に、これまで取引のあった卸事業者、小売り事業者は、他地域の水産加工業者から同種の商品を調達するようになり、東北の水産加工業者が事業を再開しても、一旦失った販路が回復しないためである。また、独自ブランドを有するなどにより、販売先は確保できていても、従業員の減少を回復できないために操業を抑制している場合も少なくない。かつては、周辺地域の家庭の主婦などを雇用することが多かったが、その多くは内陸や高台に家庭ごと避難しており、沿岸部に働きに出てくることが難しい。外部から人を採用しようとしても、工場の周辺はまだ住居建設の準備が整わず、住む場所がないなどの問題がある。

4.今後の産業復興の取り組み方針
 こうした状況に対処するため、東北経済産業局では、震災四年目に当たり、下記のような取り組み方針を定め、今後の産業復興を進めていくこととしている。
(1)沿岸部の地域商業の復旧については、市町村との連絡を密にし、住民の帰還に合わせた市街地の復興計画の策定を促しつつ、補助金による商業施設の建設支援や仮設商業施設の建設による地域商業の集積促進を進めていく。
(2)三陸海岸の水産加工業の新商品の開発や販路の拡大を進めるため、水産庁、関係自治体、(一社)東北経済連合会、JETRO、中小企業基盤整備機構と協力しつつ、戦略的な商品開発や海外の販路開拓を集中的に支援する。
(3)既に復旧が進んでいる内陸部の製造業等については、後述する東北地方の成長戦略に基づいて、更なる高度化を支援する。

5.東北地方の成長戦略
 震災からの復興とは、深刻な被災地域を震災前の姿に戻すということではない。むしろ、その過程で、従来足りなかったものを補いながら、その周囲の地域も含めた広域的で長期的な成長の基盤を構築していくことが重要である。そのため、昨年11月から本年3月にかけて、東北7県知事、各地域の代表的な企業経営者、東北を所管する国の支分部局を含めた東北地方競争力協議会を開催し、今後この地域が取り組むべき方向性をまとめたところである。
 そこでは、下記のような点が合意され、今後この内容について、自治体、産業界、国が情報と意識を共有し、実現のため取り組んでいくこととされている。
(1)復興の過程で、若い人材による新たな事業の創造や、既存の事業の連合体による独自ブランド作りなど、これまで見られなかった新たな取り組みが生まれている。これらに着目し、東北の成長力となるよう大切に育てていく。
(2)お祭りや地域の産品などの東北の豊かな文化遺産や地域資源を最大限に活用するため、東北地方全域の関係自治体や経済会が協力して、海外に向けてインパクトのある発信を行い、東北を訪問する観光客を拡大し、また、東北の産品の認知度を高めていく。
(3)ものづくり産業に関して、世界的な自動車の製造・研究開発拠点や医療機器の生産・開発拠点を東北地方に育成するため、自治体、産業界、国が協力して事業環境を整備し、それらの産業への地元中小企業の参入を推進していく。また、将来のものづくりを担う人材を地域全体で育てていく。

図表3 東北地域の成長戦略 (261KB)

 東北地方は、個性ある歴史・文化遺産、豊かな食産業、美しい自然と、先端産業が併存する、観光客にとっても、企業にとっても魅力のある地域である。震災では大きなダメージをうけたが、そこから立ち直る過程で、東北地域全体の産官学が協力し、視野を海外に広げ、観光客の受け入れや産業の拡大を図っていく機運が高まっている。これからの東北の復興の進展と成長に注目していただきたい。
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