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連載 (全4回) 「ASEANの経済統合と日系企業の動向」 第1回:アセアンの経済発展の中で進化・変化する企業の動向 | 株式会社ニッセイ基礎研究所 上席研究員 アジア部長 平賀 富一【配信日:2014/4/30 No.0230-0928】

配信日:2014年4月30日

連載 (全4回) 「ASEANの経済統合と日系企業の動向」
第1回:アセアンの経済発展の中で進化・変化する企業の動向

株式会社ニッセイ基礎研究所 上席研究員 アジア部長
平賀 富一


 アセアン(東南アジア諸国連合)において諸国の経済発展が続き、その世界経済に占めるポジションが向上し、さらに2015年の経済共同体(ASEAN Economic Community:AEC)のスタートが近づく中で、日本企業をはじめ各国企業のアセアン地域を巡る活動や取組みに、様々な興味深い変化や事例が生じている。
 本連載では、主として企業活動の視点から、近年の重要なポイントや変化、キーワードなどをご紹介することにしたい。第1回の本稿では、アセアン市場で起きている興味深い動きや変化について総論的にご紹介し、それを踏まえた第2回以降ではより具体的なテーマにつき代表的な企業のケースも例示しつつ述べることにしたい。


1. アセアンへの注目度の高まり
 20113年11月に公表された国際協力銀行(JBIC)による「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告:2013年度海外直接投資アンケート調査結果(第25回)」の結果は、近年の日本企業のアセアン重視の傾向を象徴するものであった。本調査は1989年以来毎年実施されており、その中の日本企業(製造業対象)による中期的(今後3年程度)有望事業展開先国・地域」に関する設問・回答結果の集計(同調査報告書p.20:下図参照)があるが、今回の結果は非常に興味深い内容であった。すなわち、国・地域の得票率の順位において、92年の同設問の開始以来初めて、インドネシアが首位にランクされ、他方、92年から首位を継続してきた中国が4位になった。また3位にタイ、5位にベトナムという上位の「常連」に加え、ミャンマーが8位、フィリピンが11位と順位を上げ、ラオスも初めて20位に入った。その結果、ブルネイを除くアセアン(東南アジア諸国連合)の9カ国が上位20カ国入りした。(上記以外のアセアン諸国のランキングは、マレーシア12位、シンガポール16位、カンボジア17位)。

わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告:2013年度海外直接投資アンケート調査結果(第25回)p.20  今回の調査結果を見ての印象を総論的にいえば、これまで首位を独走してきた中国について、人件費の高騰など投資環境の相対的な魅力低下が見られる一方、アセアンは6億の人口規模を有し経済発展により富裕層・中間層が増えており、親日的な国が多い等の点で、有望投資先としての重要度がより増しているといえる(各国の経済規模や発展度、国際的な位置づけなどは下表をご参照)。

アジア経済の概観(77KB)

2. 3つのグループ別にみた特徴点
 アセアン10ヶ国の内ブルネイを除いた9か国を3つのグループに分けて、それぞれの特徴点などを鳥瞰すると概略以下のようなポイントが指摘できよう。

(1)インドネシア・ベトナム・フィリピン:いわゆる「チャイナ・プラス・ワン」戦略の重要対象国の代表であり、人口が多く若年者が多い。その結果、人口ボーナス(人口構成において、生産年齢人口が従属人口(高齢者と子供)より多く豊富な労働力で高度の経済成長が可能)を長く享受でき、労働コストも中国やマレーシア・タイなどに比べ低廉であることが高評価のポイントになっていると思われる。さらに消費市場の拡大傾向にも注目が集まっている。特に上記調査で初の首位となったインドネシアについては、政治の安定化傾向、経済発展による中間層の増大傾向の中で、アセアン最大の人口(2.4億人)を有する国であることが、同国市場をターゲットとする企業(サービス業も含む)にとっての重要性や魅力となっている。ベトナムについても中国などに比べコストが低廉で勤勉な労働者の存在は、生産拠点として重視されている。特に韓国サムスンによる携帯電話工場の新設は同国の輸出を大きくけん引し、同社の輸出が国全体の輸出の1割以上を占め、同国が2012年に20年ぶりの貿易黒字化を実現した大きな要因となったことは象徴的であると言える。また、近年有望投資先として再評価されつつあるフィリピンは英語の通用度が高いメリットが大きく、BPO産業(会計・財務などの事務作業、アニメ制作、ソフトウェア開発、コールセンター等)の重要な拠点にもなっている。

(2)タイ、マレーシア、シンガポール:アセアンでの経済発展度が高いこれら3国について、タイは言うまでもなく、「アジアのデトロイト」として、自動車産業を代表とするわが国企業の一大集積拠点としての重要性が大きく、過去クーデターや洪水などがあっても日系企業の進出は増加トレンドを示してきた(ただし、現状の政情不安再燃による経済・投資面への影響は要注目である)。マレーシアは、一人当たりGDPが1万ドル水準を超える経済発展の中、産業の高度化を志向しており、日本企業の進出も小売業(同国2位のイオンが代表)や外食、金融など各種サービス業の進出、英語が広く通じる環境を活かしたアセアン域内における事務・サービスの拠点や従業員教育の中心的な拠点となる事例が増えている。また、シンガポールとの国境に近い広大な土地に展開するイスカンダル開発計画など大胆な取組みを推進し、多くの企業の誘致に努めている。さらにアジア域内のみならず、今後の中東やアフリカなどの市場展開にも重要になるイスラム教徒の市場開拓や同教信者の観光客の受け入れには、イスラムの教えに沿った食品等であるハラルについての理解と対応が必要であるが、同国はその点で他をリードしている。シンガポールは、一人当たりGDPがわが国の水準を超え、アセアンのみならず国際的な金融センター・ビジネスセンターとして、また優れた制度・システムや言語環境、治安の良さ等外国企業・外国人の仕事のしやすさなど多くの項目の高評価でその国際的な競争力は常に世界のトップレベルにランクされており、各国を代表する企業の地域統括本部や調査・研究拠点としての位置づけが大きくなっている。

(3)カンボジア・ラオス・ミャンマー:アセアンの後発加盟国であるCLM諸国は、経済発展は後発段階であるが労働コストが低廉であり、多くの企業が新たな生産拠点や消費市場として注目し、参入する動きが見られている。中でもタイに拠点を置く製造業の企業が、元々タイで行っていた業務の中で、労働集約的な業務を3国に移す「タイ・プラス・ワン」という動きが特に注目されている。

 上記の動向・変化は、2015年のアセアン経済共同体の発足、FTA・EPAなど貿易自由化や経済連携強化に対応する効率的なサプライチェーンの構築(中堅中小企業の進出増)など域内での分業化や製造拠点の再配置の動き、各国での富裕層・中間層の拡大を捉えた消費市場を狙っての生産拠点の設置・増設や各種サービス企業の進出増といった動きに呼応したものであるといえる。そのような環境下で、各国の地場企業、日米欧中韓などの外資企業に加えて、アジアの有力企業の域内他国への進出も増加しており企業間の競争はより激しいものとなっている。さらに、それら有力・優秀企業を自国に呼び込もうとする各国の積極的な取組みも要注目であり、次回以降それらの諸点を踏まえてより詳しく述べることとする。
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