| 最新号 |この記事のカテゴリー: アジア・国際オピニオン・論説 |
IIST e-Magazineのバックナンバー:| カテゴリー検索 | キーワード検索 | |
2010年度以前 (IIST ワールドフォーラムメールマガジン) のバックナンバー:| キーワード検索 | 時系列検索 |

  • このエントリーをはてなブックマークに追加


IIST e-Magazine (本記事の英語版はこちら)

急ピッチで変化するラオス =ビエンチャン市内、新車多く渋滞も= | (株)時事通信社 時事総合研究所 客員研究員 山川 裕隆【配信日:2014/06/30 No.0232-0932】

配信日:2014年6月30日

急ピッチで変化するラオス
=ビエンチャン市内、新車多く渋滞も=

(株)時事通信社 時事総合研究所 客員研究員
山川 裕隆


 タイプラスワンで注目されているラオス。首都ビエンチャン市内は新車やATMが思った以上に多く、近代化の波が押し寄せている。電力は豊富で、隣国に売電。ただ、タイにあまりにも近いため、同国への出稼ぎ者が多く、日本企業はワーカー集めに苦労している。


 このほど、初めてラオスを訪れた。訪問前は「近隣の国に比べて発展が遅れている国」という認識だったが、全くその認識は正しくなかった。ミャンマーやカンボジアは中古車が圧倒的に多いが、ラオスは新しい車が多く、人口約80万人の首都ビエンチャン市内は渋滞しているところもあった。また、現金自動預払機(ATM)やガソリンスタンドはビエンチャン市内ではかなり目に付いた。ラオスは急ピッチで変化していた。
 ラオスの新車販売台数はここ数年、年間3万台前後で推移している。同国は人口約650万人で、東南アジア諸国連合(ASEAN)では、ブルネイ、シンガポールに次いで人口が少ない国だ。9000万人の人口を擁する隣国ベトナムの昨年の新車販売台数は11万台強なので、ラオスはベトナムに比べて人口の割合からすると新車が売れている。

ビエンチャン市内でも交通渋滞

ビエンチャン市内でも交通渋滞

◇立派なトヨタやベンツの販売店も
 ビエンチャン市内では独ベンツやトヨタ自動車のレクサスのほか、超高級車のポルシェまで走っていたのには驚いた。中心街には立派なトヨタやベンツの販売店まであった。日本人の現地駐在員は「ラオスは最近、バブルの状況にある。その恩恵を受けている不動産業者らが高級車を買っているようだ」と解説してくれた。
 昨年のラオスの1人当たりの国内総生産(GDP)は1500ドルで、ビエンチャンは約2倍の3000ドルだという。3000ドルを超えると車が売れると言われており、まさにビエンチャンは車が売れる時代に入っているわけだ。

ビエンチャン市内にあるトヨタ自動車販売店

ビエンチャン市内にあるトヨタ自動車販売店

◇中古車は輸入禁止
 ラオスでは中古車がほとんど走っていない。自動車業界関係者によると、ラオスは中古車による交通事故が多発したため、2012年6月から中古車の輸入を禁止しているそうだ。また、中古車を輸入すると、燃費が悪い古い車も入ってきて、排ガスによって環境を損なうことも禁止の理由のようだ。ミャンマーやカンボジアは圧倒的に中古車が多いが、ラオスは両国とは明らかに違う。また、ビエンチャン市内はベトナムのハノイ市やホーチミン市のように、街がバイクであふれていることもない。両都市に比べ、ビエンチャン市内は整然としている。

◇ATM、多数設置
 ビエンチャン市内には、ATMがあちこちに設置されていた。ミャンマーの大都市ヤンゴンやカンボジアの首都プノンペンに比べてかなり多い。地方の都市にまでATMが浸透しているのには驚いた。また、ガソリンスタンドも意外と多い。自動車だけではなく、バイクも増加していることから、ガソリンスタンドが増えているようだ。
 さらに、ビエンチャン市内には立派な医療施設があった。また、中国企業が大型ショッピングセンターやオフィスなどから成る「ワールドトレードセンター」を建設中だった。ラオスにも近代化の波が押し寄せていることを実感した。

◇タイやベトナムに売電
 そのラオスに、日本企業の進出がここ数年増えている。同国のメリットは、(1)賃金がタイの3分の1と安い(2)電力が豊富である(3)ベトナムからミャンマーを結んでいる「東西経済回廊」の中継地である(4)タイ語とラオス語は似ており、タイ人がラオス人を研修できる(5)治安は良く、政情は安定している(6)災害が少ないーことなどが挙げられる。
 ラオス南部の都市パクセから中部の中心都市サワナケットまで車で約5時間かけて移動したが、ほぼ道路と平行して送電線が完備されている。ミャンマーやカンボジアと違って停電はほとんどなく、タイやベトナムなどに売電している国だとは聞いていたが、それらを見て納得できた。また、同国は電力料金が周辺国に比べて安いのも魅力だ。
 このほか、日本の現地駐在員は「最近、カンボジアでは現地に進出している日本や台湾など外資系企業の工場でストライキが増えているが、ラオスではストライキは起きていない」とストライキがないことも同国のメリットとして挙げている。

◇タイから工場分散の動き加速
 このため、失業率が1%を切り、人手の確保が厳しくなっているタイに工場がある日本企業は、ラオスに工場を分散させる「タイプラスワン」の動きが活発化している。特に11年秋にタイで洪水があったため、洪水以降、タイに工場がある日本企業のラオスへの進出は増加している。また、タイでクーデターが発生し、当分の間、政局は混迷することから、さらにラオスに工場を分散化させる動きが加速しそうだ。
 縫製メーカーだけではなく、自動車部品メーカーや電子部品メーカー、カメラメーカー、かつらメーカー、運送会社、旅行代理店などさまざまな業種の日本企業がここ数年の間に、ラオスに進出している。タイの洪水で被害を受けた大手カメラメーカーのニコンはタイで生産していたデジタル一眼レフカメラの一部工程を移管して、昨秋からラオス工場で生産を始めた。ワーカーは約500人で、日本人は常駐していないという。工長長や総務部長らはタイ人だ。タイ語とラオス語は似ているため、タイ人がワーカーを指導・教育している。

昨秋操業を始めたニコンのラオス工場

昨秋操業を始めたニコンのラオス工場

◇日本企業100社突破
 トヨタ系の大手自動車部品メーカーのトヨタ紡織もラオスに進出、4月から自動車用シートカバーの生産を開始した。ラオスに進出している日本企業は100社を超えた。今年に入ってからも三菱マテリアルがラオスに進出すると発表、さらに大手かつらメーカーのアデランスが12年からラオスで委託生産していたが、同国に全額出資子会社を設立、自社工場を設け、今年9月に稼働させることを公表した。
 現在、日本―ラオス間を結ぶ直行便はないが、昨年12月に、両国首相が直行便を念頭に航空協定の正式交渉を開始することで一致。それを受け、両国が事務レベルでの協議を行っている。また、日本貿易振興機構(ジェトロ)は4月、ビエンチャン市内に事務所を開設した。こうしたことから今後、日本企業の同国への進出はさらに増えそうだ。

◇賃金3倍のタイに出稼ぎ
 ただ、ラオスにもデメリットがある。人口が650万人と少ない上、賃金がラオスに比べて約3倍の隣国タイへの出稼ぎ者(約50万人)が多く、ワーカーの確保が容易ではない点だ。このため、ラオスに進出している日本企業のワーカーの賃金は月額約1万5000円で、ミャンマーやカンボジアに比べ約5000円高い。ラオスの最低賃金は62万6000キープ(約82ドル)なので、ほとんどの日本企業の賃金はそれを上回っている。
 なぜ、最低賃金でワーカーを雇用するのが難しいのだろうか。ラオスはタイに隣接している。例えば、中部都市サワナケットから日本の支援で造られた第2メコン友好橋を渡ると、簡単にタイに行ける。タイの賃金はラオスの約3倍なので、サワナケットからタイに出稼ぎに行く人が多い。ラオスからタイへの出稼ぎ者は約50万人に上るという。

◇容易でない1000人以上の雇用
 こうした状況から、ラオスに進出している日本企業はワーカーを集めるのに苦労している。同国に進出している日本のあるメーカー幹部は「経営上の最大の課題はワーカーの確保だ。タイへの出稼ぎ者が多く、タイの賃金以上に賃金を支給しないと戻って来ない」と嘆いている。また、別の日本メーカーの社長は「人材派遣会社を利用したり、ラジオを利用してワーカーの募集をしているが、思うように集まらない」と話している。
 ある部品メーカーの社長は「募集キャラバン隊を編成して、村長などにあいさつに行き、募集活動の許可をもらった上で、地区リーダーに人を集めてもらい、会社説明会を実施している。その説明会には親も一緒に参加するケースが多い」という。このように、あの手この手を駆使してワーカー集めをしているが、それでも思うように集まらないため、賃金を上げざるを得ない状況だ。また、「ラオスは人口が少ないことから、1000人以上を雇用することは容易ではない」(日本人駐在員)。ラオスはメリットが多い国だが、同国への進出を検討している日本企業はそうしたデメリットも念頭に置く必要がありそうだ。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
(本記事の英語版はこちら)


| 最新号 |この記事のカテゴリー: アジア・国際オピニオン・論説 |
IIST e-Magazineのバックナンバー:| カテゴリー検索 | キーワード検索 | |
2010年度以前 (IIST ワールドフォーラムメールマガジン) のバックナンバー:| キーワード検索 | 時系列検索 |