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連載 (全4回) 「ASEANの経済統合と日系企業の動向」 第3回:アジア地域統括本部拠点を巡る動向 | 株式会社ニッセイ基礎研究所 上席研究員 アジア部長 平賀 富一【配信日:2014/6/30 No.0232-0934】

配信日:2014年6月30日

連載 (全4回) 「ASEANの経済統合と日系企業の動向」
第3回:アジア地域統括本部拠点を巡る動向

株式会社ニッセイ基礎研究所 上席研究員 アジア部長
平賀 富一


 アジア・アセアン域内に企業が複数の拠点を保有し、その地理的な分散と役割・機能が多様化・複雑化する中で、標準化・効率化と現地適応化を両立させるために重要な地域統括本部拠点の要点を述べる。


 前回は、日本企業のアセアンへの進出が進展し、同一企業で複数の拠点を所有するようになると、初期において各拠点の独立性が強くバラバラな存在であった状況から、各拠点が国際的な分業などを目的として有機的に連携・関係するようになる傾向について、自動車産業などを例に挙げて述べた。
 本稿では、アジアやアセアンの域内に同一企業が複数の拠点を保有し、それらが、地理的に分散し、役割・機能が多様化・複雑化する中で、「標準化・効率化」と「現地適応化」という国際ビジネスの重要な2つの命題を両立させる上でも重要な役割を持つと考えられるアジア地域統括本部拠点についてのポイントについて述べることとする。

1. 地域統括本部(Regional Headquarters)について
 自社グループが事業を展開する重要な地域(アジア、北米、中南米、欧州など)を管理の対象として、当該域内の自社グループの子会社・関連会社等の事業や諸機能(下記に詳述)の統括、調整、支援などを行う拠点であり、地域統括会社と呼ばれることも多い。企業における国際ビジネスの拡大や進化につれてその必要性や重要度が高まる傾向にあり、海外売上の比率が30%以上になると地域統括拠点の設置が増えるとの情報もある。また、日本企業のみならず、アジア・アセアンへの欧米韓中などの諸国の企業の進出が増加する中、それら企業によるアジア地域統括本部拠点の設立も増加している。
 地域統括拠点設立の目的は、本社と現地拠点の間に存在し、本社よりもより現地拠点に近いところで、企業グループの大局に立って、経営における重要事項の意思決定、ガバナンス、業務の標準化・効率化、現地拠点へのサポート、支援を行うことであり、特に企業グループとしての効率的なサプライチェーンの構築・管理、統一的なマーケティングやブランド力の浸透・強化、資本の有効活用や税負担の効率化などで効用が大きいと考えられる。
 統括本部の対象となりうる機能には、資材の調達、流通、経営戦略・計画の策定・実行・管理、持株会社としての役割や傘下拠点の管理、リスク管理、生産計画・管理、資材調達、域内市場動向の分析、研究・開発(サービス商品の開発も含む)、金融・資産運用、マーケティング、ブランド管理、人事・研修、法務、税務・会計、IT、事務処理などがある。
 実際の地域統括拠点がどの役割を担っているかは、各企業の業種・製品・商品、ニーズやその国際ビジネスの発展段階などにより異なり、上記の機能の全てを所管するケースから一部の機能を所管するケース、さらに一部の機能(例えば研究開発や教育・研修、事務処理など)を異なる別の地域の拠点に担当させるケースなどのバリエーションが見られる。
 
2. 多くの地域統括拠点が所在する国・地域
 現在、非常に多くの企業がアジア統括本部拠点を設置しているのはシンガポールと香港である。両者は、国際的なビジネス、金融、物流の中心地であり、主要市場へのアクセスのしやすさ、税制面や政府による各種支援などのメリット、高水準の法務・会計・IT関連サービスの他、有能な人材が集積し、業務遂行や生活面でのインフラなどが整っている等の点で多くの強みを有している。下表のようにシンガポール・香港が、国際競争力やビジネスに適した国・地域のランキングで世界のトップ水準にランクされていることはその証左でもあろう。


※1 タイについては、現時点では20%の軽減税率が適用されている。
※2 http://www.doingbusiness.org/reports/global-reports/doing-business-2014
※3 http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/corporation/248.htm

 上記2ヶ国・地域のいずれを選択するかについては、各企業にとって様々な観点があろうが、傘下の現地拠点の所在地や事業対象(候補)地域の戦略的重点や方針により、シンガポールは東南アジア、インド等南アジアやオセアニアとの関係を重視する企業、香港は中国本土や台湾などとの関係をより重視しつつ東南アジアを対象としたい企業に選考される傾向があると言えよう。
 以上の2か国・地域に加えて、前号で述べたように自動車など製造業の産業集積を重視する企業の多く(トヨタ、ホンダ、デンソー等)がタイをアジア地域の統括拠点としている。シンガポール・香港との比較でのタイのコストの低さも強みである。同様に、費用対効果面でのメリットがあり、加えて、英語の通用度の高さ、アジアの縮図とも言われる民族的多様性などを考慮してマレーシアを選択する事例も増加しつつある(アセアン域内の統括本部を設置しているイオン・大正製薬やアジア域内の研修を置く三井住友銀行などの事例がある)。さらにマレーシアについては、近年注目されるイスラム金融・保険や食品等のハラル等の面でのイスラム市場との親和性も利点として挙げることができよう。
 いずれにせよ最終的にどの国・地域を域内の地域統括拠点として選択するかは、各地の投資環境や提供される諸条件(政府による税制その他の各種優遇策など)と自社の目的・ニーズなどを十分に勘案することが大切であると考えられる。
 参考までに、上記4ヶ国・地域の地域統括拠点を含む投資の受入れに関する政府のホームページ(URL)を以下に紹介する。

 シンガポール:http://www.edb.gov.sg/content/edb/ja.html
 香港:http://www.investhk.gov.hk/ja/
 タイ:http://www.boi.go.th/index.php?page=index&language=ja
 マレーシア:http://www.mida.gov.my/jpn/index.php

3. 終わりに
 以上、本稿では、アジア地域統括拠点に関する基本的なポイント、現況等について述べた。重要なことは、統括拠点設置の目的を明確にした上で、各企業の戦略や国際ビジネスの発展段階に整合した立地や当該統括拠点が所管する機能を選択する必要があると考えられる。地域統括拠点が、本社と現地の生産・販売等各拠点を有機的に連携させる、意味ある「連結ピン」の役割を果たし、当該企業グループ全体の収益性・効率性の向上を図るためには、本社と地域統括本部、現地各拠点の間で、業務の重複や意思決定の遅れといった問題を生じさせない組織・体制、権限と調整のあり方が重要であろう。

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