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福島、東北に新しい花を咲かせよう 医療機器関連産業拠点化に向けた取組みと将来展望 | 公益財団法人医療機器センター附属医療機器産業研究所 客員研究員 石橋 毅【配信日:2014/7/31 No.0233-0937】

配信日:2014年7月31日

福島、東北に新しい花を咲かせよう
医療機器関連産業拠点化に向けた取組みと将来展望

公益財団法人医療機器センター附属医療機器産業研究所 客員研究員
石橋 毅


 東北地方産業競争力協議会※において、医療機器産業が自動車産業に並ぶ戦略産業の一つとして位置づけられ、東北地域が一体となって取組みが提案されているところである。果たして東北は医療機器分野で産業復興を成し遂げることができるのか。
 本稿では、福島県を中心に東北地域での医工連携、医療機器関連産業集積に向けた取組みと、医療機器関連分野が東北地域の成長産業となるための課題と将来展望について述べる。

※東北7県知事、企業経営者等で構成(共同事務局:秋田県・東北経済連合会・東北経済産業局)


1)東北地域の医療機器産業の特徴
 東北地域の2012年の医療機器生産金額は、福島県が全国4位、青森県が12位、秋田県14位、岩手県、山形県及び宮城県が全国の中位にある。地域全体としては、全国の13.1%を占める。10年間の推移では、福島県の伸び率が200%と断トツであり、製造販売メーカーからの受託生産額も全国1位である。東北地域に立地している著名な医療機器メーカーを挙げると、青森オリンパス(2002)、ニプロ大館工場(1981)、タニタ秋田(1993)、トプコン山形、チェスト宮城工場、会津オリンパス(1969)、白河オリンパス(1978)、ジョンソン・エンド・ジョンソン須賀川事業所(1972)、日本ベクトン・ディッキンソン福島工場(1971)などがある。

東北地域における医療機器生産金額の推移 (厚生労働省 薬事生産動態統計年報より)
2)福島県及び東北地域における自治体の取組み
 各自治体への産業集積を促進させるためには、ぶれないビジョンと緻密な戦略が必要だった。福島県における医療機器産業集積に向けた取り組みは、2005年に遡り、全国的にもいち早く医療機器分野にフォーカスした取り組みを実施してきた自治体の1つである。ここで他の自治体と違いは、日大工学部(郡山市)と福島県立医大の歴史ある医工連携とは別のスキームとして、異分野製造業の医療機器分野への新規参入支援を強力に進めた点である。その理由は、2005年の薬事法改正であり、製造販売業と製造業の2つの許可制度が導入され医療機器製造の全面アウトソースが認められたからだ。県ではこの追い風を肌で感じ、大胆に新規参入を促進させる舵をきった。未知なる産業に挑戦する異分野企業に対し、医療ニーズ・市場、製品試作・性能評価補助金、薬事法許認可支援、医療機器メーカーとの商談促進と一貫した支援を展開したのだ。それらの取組みが功を奏し、この8年で福島県内の医療機器製造業者数は1.6倍の56社に増加した(支援開始前 2005年:35社 2013年:56社)。

 特筆すべきは、郡山市で毎年開催している「メディカルクリエーションふくしま」である。医療技術・部材供給展といえば、首都圏開催のMEDTECJAPANやメディカルテクノロジーEXPOを思い出す方が多いかもしれないが、実は福島が元祖である。
 かつて、医療機器メーカーへ部材を供給する企業が技術力を展示することは秘密保持の観点からもタブーであった。医療機器メーカーはひっそりと部材供給企業を囲い込みたいからだ。しかし、イノベーティブな製品を次々と市場に送り出すためには、際立つ技術力をオープンするカルチャーが日本にも必要であるとの業界関係者の要望に応え、福島県は、設計・製造展示会を国内で最初に手がけた。本展示会は今年で10年連続10回目の開催となる。是非、業界関係者の皆さんには足を運んで頂きたいイベントの一つである。 

メディカルクリエーション会場

メディカルクリエーション会場

メディカルクリエーション ミニロゴ

メディカルクリエーション
ミニロゴ


 一方、東北全域に目を向けると、青森県ウェルネスランド構想、いわて医療機器事業化研究会、秋田メディカルインダストリ・ネットワーク、やまがた置賜メディカルテクノネット、仙台フィンランド健康福祉センタープロジェクトと各自治体独自の特徴を活かした取組みがある。さらに、東北経済産業局が東北6県各担当者で構成される東北地域医療機器産業支援ボードを設置し、日本医療機器工業会等会員メーカーと地域企業との交流・ビジネスマッチングに力を注いだことで、医療機器分野への新規参入を目指す地域企業への景気付けは、東北全土へムラ無く広がった。

3)震災後における自治体の取り組み
 原発事故に伴う風評被害に苦しむ福島県であるが、これまでの産業集積の取り組みを後退させないよう、政府の復興予算を活用し、医療機器開発を手がける県内企業に事業費を助成し支援を継続している。この補助制度は、テーマ1件あたり最大3億円と超大型支援であり、単なる試作開発に止まらず、事業化に必要な知財・薬事戦略にも費用を充てることができ至れり尽くせりの制度設計がなされている。現在46テーマが採択され、県内企業が医療機器メーカーと連携して製品化を進めている。
 併せて、医療に応用できる優れた加工技術の輸出を狙った海外展開に着手した。原発事故で世界的に知名度をあげた「フクシマ」であるが、デメリットもときにはメリットにもなる。世界最大級の医療機器展「MEDICA」への福島県ブース出展では、毎年大きな注目を集めているほか、ドイツNRW州との技術交流も本格化している。

海外展開(ドイツメディカ展示会出展)

海外展開(ドイツメディカ展示会出展)

 現在、福島県が最も力を注いでいるのが、2018年の開所を目指す国内初の「医療機器開発・安全性評価センター(仮称)」の整備である。この施設は、本国医療機器産業の弱点ともいわれている治療系医療機器の市場巻き返しを図る開発拠点という位置づけだが、併せて、福島県内への医療機器産業の集積を強く引き寄せる役割を果たすものとして期待が寄せられている。
 東北全域では、東北大学医工学研究科を核とした地域イノベーション戦略支援プログラム「知と医療機器創世宮城県エリア」が復興プロジェクトとしてスタートした。同大学臨床研究推進センターはアンメットニーズを発掘するバイオデザイン部門を立ち上げ、市場性の高い優れたアイディアを生み出す環境と事業化支援の仕組みを整えた。少し離れて青森県では、「青森ライフイノベーション戦略」を推進すべく、地域企業と首都圏医療機器メーカーとのパイプを太くする技術交流が盛んであるほか、米系大手GEヘルスケア・ジャパン社が青森県と連携し、過疎地の新たな医療モデルの構築を進めている。地域企業の開発製品・技術の活用可能性も併行して検証する取組みは、全国の自治体に先駆けた挑戦であり、地域企業の技術がどのように過疎地医療に還元することができるのか注目したい。

4)課題と将来展望
 復興予算のおかげもあり、福島県では、医療機器メーカーの新規進出や大型の設備投資が途切れることがなく、明るい兆しも見えてきた。オリンパス社は、会津・白河の両工場に約180億円を投資し内視鏡の生産能力を3割増やす方針を打ち出した(2012.12)。富士システムズ社は、白河市へ医療用カテーテルの第2工場を建設(2012)。福祉用ロボットスーツ「HAL」で知られるサイバーダイン社(つくば市)やニチオン(船橋市)は、郡山市に新工場を建設する予定だ(2014.7)。
 一見華やかに見えるが、復興予算も底をつけば震災復興の機運はいずれ終わる。そうなると自治体の企業誘致はそう簡単にはいかないであろう。今後、10年、20年と長期的な産業振興・集積を進めていくには、「常に産業界がリードし、官と学もそれを理解し、協力する'真の産学官連携'」が必要であると筆者は考えている。何をどう進めればよいか、常に地元で医療機器開発・生産に取り組む工場・事業所、工業会メンバーの声に耳を傾けながら共に発展させるべきである。
 拠点化・産業集積のあり方、それは企業の数を単純に増やしていくことではない。産業界においては、工場や事業所の開発人材、エンジニア、品質保証人材等を育てること。自治体においては、事業化支援を手がける人材、コーディネート人材、薬事人材等を育てること。つまり「産業集積=人材の集積」なのである。福島、東北にはその下地が確実に醸成されてきている。医療機器関連産業の新しい種はまかれた。これから東北でその花は咲く。
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