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シリーズ:「地域の活性化(7)」 島根県におけるRubyを中心に進めるITの振興と地域の活性化について 株式会社ネットワーク応用通信研究所 代表取締役 井上 浩【配信日:2016/06/30 No.0256-1013】

配信日:2016年6月30日

シリーズ:「地域の活性化(7)」
島根県におけるRubyを中心に進めるITの振興と地域の活性化について

株式会社ネットワーク応用通信研究所 代表取締役
井上 浩


 島根県内ではRubyを中心にITの振興が活発に進められている、その取組の経緯と地域の活性化の現状を紹介する。


 2015年地方創生元年ともいわれ、近年若者の地方移住志向が急激に高まった。

 特に2015年島根県への移住希望が全国の都道府県の中で3位に急浮上した、特徴的なのが1位長野県、2位山梨県が比較的中高年に人気なのに対し島根県への移住希望者は20代、30代で50%以上を占めていると、NPO法人ふるさと回帰支援センターの調査で明らかになった。

 人気が急上昇した原因には触れられていないが、島根県内でのIT振興が少なからず影響を及ぼしていることは想像に難くなく、ではどのようなIT振興が進められてきたのか掘り下げてみたい。

 現在GoogleやAmazonで代表されるクラウドサービスと呼ばれる形態が広がってきている、そのようなクラウドサービスに加え家電ではテレビなどにおいても根本のシステムはLinx(リナックス)と呼ばれるソフトウェアが利用されるケースが非常に増えてきている。このLinuxはオープンソース・ソフトウェア(OSS)と言う、自由に参照したり活用したり改編することが可能なライセンス形態で公開されているソフトウェアの一つである。

 島根においては、このOSSを活用してビジネスを広げる取組が続けられてきた。1996年、まだビジネス分野において Linuxがそれほど活用されていなかった時期、インターネット上初めて日本語で情報提供されたwww.linux.or.jpのサーバーが松江で立ち上がった。翌年1997年には、このポータルサイトを維持管理することも目的とした有限会社ネットワーク応用通信研究所を我々は設立した。
 ネットワーク応用通信研究所を設立した1997年、Rubyを開発したまつもとゆきひろ氏も入社している。ネットワーク応用通信研究所ではLinuxやRubyに代表されるOSSの普及発展の為の活動も行った。
 Linux は前述したように、OSSとして公開されているソフトウェアで、コンピューターを動かす基本的なソフトウェアである。Rubyはプログラム言語であり、他のプログラム言語より小規模なシステムを短時間で構築出来る特長がある。Rubyの利用事例として国内ではクックパッド・ユビレジ・マネーフォワードなどで利用されている。

 ネットワーク応用通信研究所の営業活動として、小規模インターネット・プロバイダー向けサーバーの販売、自治体向け業務システムの開発、民間企業向け基幹システムの開発、医療機関向け会計システムの開発、コンシューマー向けインターネットサービスの開発等幅広い分野のシステムを請負、LinuxとRubyを活用して構築した。また、それらのシステムの保守・運用も請負うことで継続的な売上を計上している。
 その後、OSSを活用した市場は確実に広がり、ネットワーク応用通信研究所のビジネスも拡大して行った。

 Rubyは世界中で徐々に使われ始め、2004年Webのシステムを構築するための道具であるフレームワークRuby on Railsが公開されたことで、急速に普及した。松江市ではこの普及に合わせ、Rubyを始めとするオープンソース・ソフトウェアで地域の活性化をねらったRuby City Matsueプロジェクトを2006年にスタートさせた。このプロジェクトにより、松江市駅前に交流の拠点を目指したオープンソースラボが開設された。
 また同年、このオープンソースラボを活動拠点とする「しまねOSS協議会」が発足し、島根県内におけるOSSを通じた技術力・開発力の向上を目指し、OSSの普及発展と地域の活性化を目指し活動を開始した。

しまねOSS協議会100回記念サロンの時の挨拶

しまねOSS協議会100回記念サロンの時の挨拶

 松江市によるRuby City Matsueプロジェクトに呼応するように、島根県においては、2007年 情報産業振興室が発足、情報産業に向けたIT人材育成支援事業を皮切りにさまざまな事業を展開してきた。
 松江市と島根県によるIT振興とRubyの普及により、都市部を中心に島根県内にIT系の企業が近年30社程度進出した。Rubyの普及はビジネス分野での市場拡大を伴い、島根県内での売上も年々増加してきた。Rubyの普及・発展に向けネットワーク応用通信研究所では支援を行ってきたが、より中立な組織による支援が妥当と考え 2007年7月合同会社Rubyアソシエーションを設立した。
 Rubyアソシエーションでは、コミュニティと企業、そして支援組織の連携をはかり、Rubyのエコシステム構築し、Rubyの普及・発展を目的とし支援活動を行った。Rubyアソシエーションの活動は順調に拡大し、資金的にも人的にも充実させることが必要になり、2011年には合同会社から一般財団法人へと組織を拡大させた。

 Rubyの人材不足は継続的慢性的問題として顕在化した、島根県においては地元を拠点としたIT企業に加え、30社を越える進出企業での採用計画に見合うだけの人材育成が追いつかず、自治体としてもIT振興の課題となっている。また IT先進国と言われるインドからのインターンシップ等人材育成を目的として、山陰インド協会においてもインドとの ITを軸にした交流活動を行い、人材不足への問題解決に向けての取組が始まっている。

インドからの視察団との写真

インドからの視察団との写真

 山陰インド協会は、山陰とインドとの友好的な経済文化交流の推進によって、山陰両県の産業経済及び地方文化の向上発展を目指し設立された。主な活動実績としてケララ州とのIT交流事業に加え、ODAを活用した調査事業として、水質改善事業、産業廃棄物処理事業、環境配慮型トイレ導入事業などが進められている。

 このように多方面において、OSS・Rubyを地域においてはもちろん、全国規模・全世界規模での普及・発展を目指し活動することにより、地域におけるIT産業の発展と地域の発展が実現した、以上のような多方面でのIT振興策の結果、ITエンジニアを中心にした若い世代の人達にとって魅力的な地域に映ったのではないだろうか、そして冒頭で述べた移住希望が増えた結果につながったと思われる。振り返り当社におけるビジネスもこのIT振興に歩調を合わせ今後とも拡大発展させることを目指したい。

島根で開催を続ける RubyWorld Conference 2015 スピーカーの写真

島根で開催を続ける RubyWorld Conference 2015 スピーカーの写真

RubyWorld Conference 2015 会場の写真

RubyWorld Conference 2015 会場の写真

ネットワーク応用通信研究所
山陰インド協会
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