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新シリーズ:「インバウンド観光推進」 インバウンドを地域へ呼び込むには ~訪日外国人旅行者(インバウンド)の現状と取組み 公益財団法人 日本交通公社 主任研究員 守屋 邦彦【配信日:2016/10/31 No.0260-1024】

配信日:2016年10月31日

新シリーズ:「インバウンド観光推進」
インバウンドを地域へ呼び込むには
~訪日外国人旅行者(インバウンド)の現状と取組み

公益財団法人 日本交通公社 主任研究員
守屋 邦彦


 観光は地域活性化の大きな力となるものであり、中でも、現在大きく増加しているインバンドは更なる成長が期待できる分野である。各地域においては、それぞれの特徴を活かした着実な取組みが求められる。


 地域の人口減少、地域経済の縮小に直面する日本において、地域を訪れる人の消費活動を活発にし、地域での雇用を拡大していくことに繋がる「観光」に対する関心・期待は年々高まっている。特に近年大きな増加傾向にある「訪日外国人旅行者(以下、特に断りのない限りは単に“インバウンド”と表記)」は、さらなる成長が期待できる分野として、国としても取組みを推し進めている。

(国は取組みをここ数年で更に強化)
 現在に続くインバウンドへの取組みが本格化してきたのは2003年の「ビジット・ジャパン・キャンペーン」(海外でのプロモーション活動や国内各地域の外国人旅行者の受入環境を整備)などからであり(なお、当時のインバウンドは年間約500万人)、その後しばらくは「インバウンドを年間1,000万人」が目標として各種取組みが進められた。その結果、10年後の2013年にはついに1,036万人と目標を達成、更に2014年以降は、円安基調やアジア諸国の経済成長に加え、ビザ緩和や免税制度拡充などの政策的な取組みによりインバウンドは急増をみせた。2015年のインバウンドは年間1,974万人、更に2016年は1~8月合計で1,606万人となっており、年間2,000万人の達成は確実な状況となっている(※1)。

図1 訪日外国人旅行者数の推移
 国はこうした状況を追い風に、観光を国の基幹産業へと成長させ、観光先進国を目指すべく「明日の日本を支える観光ビジョン‐世界が訪れたくなる日本へ‐」を今年(2016年)3月に策定した。同ビジョンでは、インバウンドを2020年に年間4,000万人・旅行消費額8兆円、2030年に年間6,000万人・旅行消費額15兆円とすることなどが目標とされるとともに、その達成に向け、公的施設や文化財、国立公園の利用促進、古い規制の見直し、富裕層やMICEなど更なる市場開拓、Wi-fiやカード決済をはじめとするソフトインフラの整備などが3つの視点・10の改革として取りまとめられた。これら改革はすでに実行され始めており、今後もスピード感を持って取組みが推進されるものと期待される。

(マーケットの状況は変化)
 東日本大震災による減少から回復した2012年以降のインバウンドの急増は、世界の様々な国からのインバウンドの増加したことによるものではあるが、特に中国人旅行者の急増により支えられた。図2はインバウンドの多い韓国、中国、台湾および北米の中で最も多い米国、欧州の中で最も多い英国の2012年12月の移動年計(※2)を1として、2016年8月までの移動年計の推移をグラフにしたものである。これをみると、インバウンドの総数の移動年計は2016年8月時点で2012年12月時点比2.7倍であるが、中国の移動年計は同4.3倍となっており、特に2014年以降に大きく上昇していることがわかる。

図2 インバウンドの国別増加率
 この急増した中国人旅行者による、いわゆる「爆買い」の影響により昨年(2015年)はインバウンドによる旅行消費額も大きく上昇し、前年の2兆278億円から約1.7倍の3兆4,771億円となった(※3)。この消費の多くは都市部の百貨店や量販店などでの家電や化粧品、医薬品といったものであった。しかし今年(2016年)に入り円高基調が続いていること、中国はじめとしたアジアにおいて経済成長が鈍っていること、更に中国では今年4月より海外で購入した商品に課す関税の引き上げもあり、こうしたお土産等商品購入による消費はやや勢いが落ちている。
 また、これだけ多くのインバウンドが訪れるようなると、日本を訪れるのは2回目、3回目といったリピーターも増加してくる。一般的に、来訪経験が増えてくると、観光行動は団体から個人へ、更に、単なる名所巡りと買物から、訪問先での様々な体験へと変化してくる。いわゆる「モノ」の消費から「コト」の消費へと変化する。

(地域がインバウンドに取組む際のポイントとは)
 初めて日本を訪れる旅行者は東京~富士山~京都~大阪のいわゆる「ゴールデンルート」を巡るが、来訪経験が増えてくると地方部へと足を運ぶようになってくる。2014年時点においても、インバウンドの観光客の2人に1人が東京・大阪大都市圏以外の地方を訪問している(※4)。こうした状況を考えれば、各地域がそれぞれ自らの特徴を活かして取組むことで、今後更なる増加が見込まれるインバンドを呼び寄せていくことは十分に可能である。その際には次にあげるような点がポイントになると考えている。
 第一に「地域に合うマーケットを探すこと」である。地域は各種製品ほどに容易に変化できるものではないため、地域を変化させるよりもまずは地域にあうマーケットを探すことが大事となる。例えば群馬県みなかみ町では、利根川の激流に目をつけたニュージーランド出身者がラフティング会社を設立し各種取組みを進めた結果、今では多くの外国人が訪れる地域なっている。その過程では、「アジア各国のインターナショナルスクールの教育旅行」とマーケットを定めた取組みを行っている。
 第二に、「こだわりや本物志向を追求すること」があげられる。一時のブームに乗った取組みでは集客効果は長続きしないため、多少時間はかかっても自地域にしかない特徴を活かす取組みを継続していくことが大事となる。例えば広島県と愛媛県にまたがるしまなみ街道では、「世界で唯一、自転車で渡れる海峡」という特性を追求し、自転車愛好家の間でじわじわと認知を高め、今では多くの外国人が訪れる場所となっている。
 第三は、「地域の推進主体が主体的に取組むこと」である。欧米の方はもとより、アジアの方も徐々に個人での旅行が多くなる中、地域側が主体となって呼び込んでくる取組みを進めることが大事となる。例えば和歌山県田辺市では、「田辺市熊野ツーリズムビューロー」を中心に、地域の様々な団体が実施する体験プログラムを集約し、外国人旅行者への情報発信・販売を行うことで成果をあげている。
 これら地域での取組みは一例に過ぎず、まだまだ様々な地域でインバウンドを呼び込むための取組みが進められている。こうした各地の取組みを単に模倣するのではなく、何が自地域にとって参考になるのか、何なら出来るのかを考えていくことが重要となる。
 いずれにしても近い将来には、当たり前のように外国人旅行者が日本の様々な地域を訪れる状況となっているはずである。地域において、早急かつ着実なインバウンドへの取組みが広がっていくことが期待される。

<注>
※1:各年の訪日外国人旅行者数の数値は、日本政府観光局(JNTO)発表数値より。
※2:移動年計:該当月を含むそれまでの12か月分を合計したもの。例えば、2012年12月の移動年計は2012年1月~12月の12か月間の合計であり、2016年8月の移動年計は2015年9月~2016年8月の12か月間の合計である。移動年計をみることにより、月による変動の影響を受けない形で月ごとの推移をみることができる。
※3:観光庁「訪日外国人消費動向調査 平成27年(2015年)年間値(確報)より。
※4:観光庁「訪日外国人消費動向調査トピックス分析 平成26年訪日外国人観光客の地方訪問状況」(2015年10月)より


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