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日本企業、カンボジアから撤退の動き プノンペンのイオンモール、売り場で明暗 時事通信社・時事総合研究所客員研究員 山川 裕隆【配信日:2017/01/31 No.0262-0263-1029】

配信日:2017年1月31日

日本企業、カンボジアから撤退の動き
プノンペンのイオンモール、売り場で明暗

時事通信社・時事総合研究所客員研究員
山川 裕隆


 カンボジアは急速に変化している。最低賃金は4年前に比べ2倍以上にアップ。首都プノンペンにはイオンの大型ショッピングモールが開業。また、市内はマンションやビルの建設ラッシュで、高級車も増加している。


 人口約1500万人のカンボジアを訪問し、日本企業の動きや首都プノンペン郊外にある大型工業団地「プノンペン経済特区(SEZ)」、プノンペンに開業したイオンのショッピングモールなどを取材した。カンボジアの最新状況をお伝えする。

◇最低賃金、4年前の2倍超
 タイを拠点に一部の生産工程を隣国に移す、「タイプラスワン」の国として注目を集めているカンボジア。そのカンボジアで日本企業の撤退が増えている。2016年の最低賃金が4年前に比べて2倍を超え、採算が取れなくなったのが原因のようだ。同国に進出している日本企業は約250社あるが、賃金が安いことだけで同国に進出するのは避けた方が良い。
 カンボジアの最低賃金の推移を見ると、2012年が月額61ドルだった。それが、2013年には同80ドル、2014年には同100ドル、2015年には同128ドル、2016年は同140ドルと年々増加を続けている。ベトナムの最低賃金は地域によって4段階に分かれており、2016年のカンボジアの最低賃金はベトナムの2番目に高い地域の同賃金とほぼ同額だ。
 カンボジアにはSEZが38カ所ある。そのうち日本企業が入居しているのは「プノンペンSEZ」や同市から南西約230キロの場所にある「シアヌークビル港SEZ」など9カ所あるが、それらのSEZに入居していた日本企業のうち、撤退したのは計20社を超えている。業種別では縫製やかばんのメーカーなど労働集約型企業が目立つ。

◇従業員数、半分に削減の企業も
 日本企業の入居が最も多いプノンペンSEZに入っている、あるメーカーの現地法人幹部は「わが社がカンボジアで操業を始めた2012年の最低賃金は月額61ドルと安かったが、2016年はそれに比べ2倍以上となった。賃金アップのスピードは予想よりも早い。賃金上昇に対応するため、ピーク時に260人いた従業員を半分の130人にまで減らした」と大幅な人員削減により何とか乗り切っている実態を明かしてくれた。
 カンボジアの最低賃金は2017年1月から、さらにアップして153ドルになった。同国では2018年に、5年に1回の総選挙がある。前回の2013年の総選挙では野党が躍進した。このため、与党は国民の支持を得るため、2018年に最低賃金をさらに上げる可能性もある。そうなると、カンボジアに進出している日本企業の中には人員削減の対応だけでは耐え切れない企業も出てきそうで、同国から撤退する企業はさらに増えることが予想される。

◇人気のプノンペンSEZ
 カンボジアで最も日本企業に人気があるSEZはプノンペンSEZだ。ここに入居している企業は81社(2016年10月現在)、うち日本企業は45社で半分以上を占めている。同SEZはプノンペン中心地から約18キロ、車で45分と便利な場所にある。設立は2006年で、開発主体はプノンペンSEZ社。出資比率は現地資本が78%、株式会社ゼファーが22%。住友商事が販売代理店だ。
 同SEZの総開発面積は360ヘクタールで、東京ドーム77個分の広さだ。第1期(面積141ヘクタール)は完売済みで、第2期(同162ヘクタール)もほとんど完売しているため、第3期(同57ヘクタール)を開発中だ。借地料は1平方メートル70ドルで、50年間のリース契約となっている。
 
プノンペン経済特区の正門

プノンペン経済特区の正門

◇総従業員は1万6000人超
 日本企業は味の素や小型モーターなどを生産しているミネベア、自動車用ワイヤーハーネス製造の住友電装などが入っている。日本以外では台湾や中国、シンガポール、米国などの企業も入居。米国企業では清涼飲料大手のコカ・コーラも入っている。同SEZの総従業員数は1万6000人を超えている。ワーカーの月額賃金は平均約180ドル(諸手当含む)だという。
 プノンペンSEZが日本企業に評判がいいのは(1)発電所や下水処理施設、通信施設などが完備され、停電はほとんどない(2)日本料理店やコンビニ、銀行などが入っている(3)プノンペンに近いーことなど他のSEZに比べて利点が多いからだ。プノンペン市内にはイオンのショッピングモールや日揮が中心となって2016年10月に開業した、高度な医療サービスを提供する病院などもある。日本企業のある駐在員は「プノンペンは数年前に比べて生活しやすく、便利になった」と話していた。

プノンペンのイオンモール

プノンペンのイオンモール

◇フードコート賑わい、日本の専門店苦戦
 プノンペンに2014年6月オープンしたイオンモールも視察した。同モールは、イオンにとってはカンボジア初の店舗だ。モールは4階建てで、延べ床面積は約10万平方メートル。年中無休で、2015年の売上高は40億円、2016年は43億円の見通しだという。
 開業時は日本からのテナントは49店出店したが、外食の店舗を中心に減っていた。その理由について、カンボジア在住のある日本人は「賃貸料に対して、売り上げが思ったように伸びなかったためで、撤退した日本企業がかなりある」と説明してくれた。
 平日の夕方訪問したが、家電量販店ノジマの店舗や女性下着販売のワコールのショップは閑散としていた。一方、食品売り場は午後6時ごろから客が増え、レジにはかなりの客が並んでいた。また、フードコートは若い人や家族連れの客などでほぼ満杯の状態。ゲームコーナーも若い人たちで賑わっており、フロアや売り場によって客数の多い、少ないがはっきりしており、明暗が分かれている。日本企業では居酒屋の和民や100円ショップのダイソー、牛丼の吉野家、旅行代理店のHISなども入居している。

◇アイススケート楽しむ若者
 モールの4階には大型アイススケートリンク(面積約1000平方メートル)もあった。平日の午後5時半ごろだったが、若者らが楽しそうに滑っていた。入場料は1時間でスケート靴を借りて10ドルで、カンボジア人にとっては高い。利用者は富裕層の子供とみられる。
 プノンペンは人口約180万人だ。核家族化が進んでおり、外食や中食をとる人が増えている。イオンではそうしたニーズに対応していくほか、ベビーグッズや美容・健康に関する商品も増やしていく方針だ。同社は2018年にはプノンペン郊外の新興住宅街に2号店を出店する計画だ。

イオンモールのアイススケートリンク

イオンモールのアイススケートリンク

◇マンション、ビルの建設ラッシュ
 4年ぶりにプノンペンを訪問したが、市内は高層のマンションやビルの建設ラッシュで、びっくりした。建設しているのは中国企業が多かった。また、トヨタ自動車の「レクサス」やドイツのメルセデスベンツ、BMWの高級車も増えており、自動車販売店も増加した。プノンペンの街は急激に変化している。

プノンペン市内に建設中の高層マンション

プノンペン市内に建設中の高層マンション


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