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モンゴル「ジェットコースター経済」との付き合い方 (2) 公益社団法人 北海道国際交流・協力総合センター 調査研究部 研究員 吉村慎司【配信日:2017/05/31 No.0267-1045】

配信日:2017年5月31日

モンゴル「ジェットコースター経済」との付き合い方 (2)

公益社団法人 北海道国際交流・協力総合センター 調査研究部 研究員
吉村慎司


 モンゴルと北海道の間でビジネス交流促進の動きが盛んになってきた。企業人の往来、両地域でのイベント開催などが相次ぎ、実際の契約に結びつく例も出てきている。前266号に続く後編


【2】北海道とモンゴルの交流
 日本の中でも北海道は、モンゴルとの交流が最も盛んな地域の一つである。もともとJICAの研修員受け入れ事業などで北海道の農業・酪農業界はモンゴルとの接点があったが、2010年前後から建設業関連の道内企業によるモンゴル進出例が増え始めた。2013年秋に日蒙両政府が「戦略的パートナーシップのための中期行動計画」を発表したときには、「農牧業の知見を共有する」「民間企業との協力を発展させる」という内容で北海道の名前が盛り込まれた。

 道内の官民が集まり、モンゴルとの経済交流を進めようとする団体を立ち上げたのが2016年2月のことだ。名称は「北海道モンゴル経済交流促進調査会」。音頭を取ったのは在札幌モンゴル国名誉領事館(名誉領事=武部勤前衆議院議員)で、メンバーは経済産業省北海道経済産業局、北海道、札幌市、筆者が所属するHIECC(北海道国際交流・協力総合センター)など約20の企業・団体である。こうした動きを背景に同年夏、貿易研修センターと北海道経産局が冒頭に記した「連携構築推進事業」をスタートすることとなった。以下に、同事業の一環として両地域で実施した2つのビジネスイベントについて紹介する。

●モンゴルで「北海道ビジネスフォーラム」
 9月20日、ウランバートル市内でモンゴル外務省と北海道モンゴル経済交流促進調査会が「モンゴル・北海道ビジネスフォーラム」を開催した。調査会の会長である武部勤氏がモンゴルの元外務大臣、ロブサンワンダン・ボルド国会議員と親交が深いことから、この会合が実現した。

北海道からフォーラムに参加したのは調査会の会員を中心とする19人。当日は、会場のモンゴル外務省大ホールに地元経済人や行政関係者約150人が集まり、両地域からビジネス連携の可能性についてプレゼンテーションを展開した。

 プレゼンでは北海道側からHIECC、札幌商工会議所、ソフトウェア開発のイークラフトマン(本社札幌市)、介護施設運営のエムリンクホールディングス(本社北見市)などの代表者が登壇。モンゴル側は外務省貿易経済協力局、モンゴル商工会議所などの代表者が発表した。全体を通して約3時間の、熱気あふれる会合となった。フォーラムについては現地の新聞やテレビなど主要メディアが大きく取り上げた。

特筆すべきはイークラフトマン社である。同社の新山将督社長はプレゼンの中で地元のIT企業との協業という具体的な提案をし、休憩時間には関係者が同社長のもとに列を作った。同社はこの休憩時間に出会ったModiw Softというソフト会社と、2カ月後に業務提携した。日本からの発注に沿ってモンゴルでソフトを開発してもらう格好だが、すべてのやりとりがネット経由で行われるため距離が問題にならず、互いにメリットが大きいという。新山社長は「初めてのモンゴル渡航でビジネスのことは何も期待していなかった」というが、IT分野での日蒙協力という一つのモデルケースが誕生することになった。

●モンゴル企業来日、札幌でビジネスイベント
 ウランバートルでの北海道フォーラムから約4ヶ月半後の2017年2月7日、今度は札幌で「北海道・モンゴルビジネスフォーラム」が開かれた。モンゴルから前述の国会議員ボルド氏のほか、同国の民間企業13社から14人が来日した。この企業団は、北海道側調査会のモンゴル側カウンターパートという位置づけである。モンゴル経済界の重鎮でもあるボルド議員が中心となって前年11月に立ち上げたグループで、IT、衣料メーカー、家電販売チェーン、観光など幅広い業種がメンバーとなっている。北海道側・モンゴル側ともに、両地域におけるビジネスの窓口役を担うねらいだ。訪問団は札幌入りの翌日にあたる6日午前、ちょうど初日を迎えた「さっぽろ雪まつり」を視察。ボルド氏は雪まつりの開会式に武部氏と並んで登壇した後、高橋はるみ知事や秋元克広札幌市長を表敬訪問した。

モンゴルビジネスフォーラムの様子(2017年2月)

モンゴルビジネスフォーラムの様子(2017年2月)

雪まつり視察後はビジネスマッチングイベントである。調査会は、来道するモンゴル企業のプロフィールに基づいて、ビジネス連携可能性がありそうな道内企業に事前に声をかけていた。まず、レジャー施設、農業設備、金融など様々な道内企業10社が自社の事業をモンゴル企業団にプレゼンテーション。その後、あらかじめ設定していた組み合わせで日蒙企業がテーブルを挟み、商談に臨んだ。

 フォーラム本番は7日午後、札幌中心部にあるホテル内宴会場で開かれた。来日したモンゴル企業全社が順々に登壇し、スライドを交えてビジネスの概略を説明。会場に足を運んだ道内のビジネス関係者50人強が熱心に耳を傾けた。このほかJICAによる最新のモンゴル経済レポートや、調査会の活動報告についての説明もあった。最後は調査会とモンゴル側カウンターパートとの間で協力の覚書を締結。代表者として武部・ボルド両氏がサインを交わした。フォーラム中の休憩時間、あるいはイベント後の懇親会を通して、名刺交換や商談が活発に行われた。

MOU締結

MOU締結

【3】まとめ
 変化の激しいモンゴル経済だが、足下は低迷が続いている。消費の減速、政府の財政赤字など、懸念材料を挙げればきりがない。しかしながら、筆者は2016年度の貿易研修センター事業を通じ、不景気の中でも積極的に行動して将来を切り拓こうとする若いモンゴル人ビジネスパーソンと数多く出会った。産業の多様化を探りながら、また、中国でもロシアでもない「第三の隣国」として日本との協業を望むモンゴル。中長期的に取り組むのであれば、日本企業にとって多様なビジネスチャンスが広がっているのではないだろうか。1、2年の短期投資で利益を取りに行くなら、ジェットコースター経済に振り落とされることになるだろう。

 では今何ができるのか。日本側に求められるのは発想の転換である。これまでの日本、とりわけ地方における対外ビジネスといえば、日本の特産品を外国に売り込むことに主軸を置いていた。だがモンゴルでは買い手の絶対数が少ない上、ここ数年は現地通貨の相場も下がっている。「いい製品を持って行けば必ず売れる」式の単純な輸出では、ごく限られた富裕層に一時的に売れることはあっても、長続きするビジネスには育たないであろう。筆者が提案したいのは以下の発想である。

(1)モンゴルの企業・団体の収入増を助けること
(2)これを実現する過程で、日本側も利益を得ること

 例えば、日本の技術を使ってモンゴルで生産し、中国やロシアに売るといったビジネスである。単なるモノ売りではなく、国の発展と併走するようなビジネスを組み立てることこそ、世界が日本企業に求めていることではないだろうか。

モンゴルからのミッションメンバー

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