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韓国、ベトナムで存在感増す ~進出企業は4000社突破 時事総合研究所 客員研究員 山川 裕隆【配信日:2017/09/29 No.0271-1054】

配信日:2017年9月29日

韓国、ベトナムで存在感増す
~進出企業は4000社突破

時事総合研究所 客員研究員
山川 裕隆


 韓国の存在感がベトナムで高まっている。サムスン電子やLG電子などベトナムに進出している韓国の企業数や韓国のベトナムへの直接投資額はいずれも日本を上回っている。ベトナムは生産拠点としてだけではなく、消費市場としても魅力があるだけに、同国への韓国企業進出は今後も続く見通しだ。


 ベトナムでの韓国の存在感が急速に増している。2014年から3年連続で韓国のベトナムへの直接投資額は国別でトップを占めている。韓国のベトナムへの進出企業は総合電機メーカー、サムスン電子やLG電子など計4000社を突破し、日本企業数の約2倍だ。特にサムスン電子はベトナム北部に携帯電話の大規模な生産拠点を構えており、ベトナムの携帯電話の輸出額はサムスン電子の貢献により品目別でトップの座を占めている。同国に進出している韓国企業はメーカーだけではない。小売業や外食などの企業も増加を続けており、日本企業を圧倒する勢いだ。

越への投資額、3年連続1位

 韓国企業がベトナムに増加している理由は幾つかある。1つは中国の人件費が高騰していることから、人件費が比較的安いベトナムに韓国企業の生産拠点がシフトしているのだ。ベトナムのワーカーの賃金は中国の約2分の1で安価だ。国別で見たベトナムへの直接投資額(新規と拡張を含む)は2013年までは韓国より日本が多かった。それが、2014年からは韓国が逆転し、3年連続して1位を死守している。最近ではベトナムへの外国の直接投資額の約3割は韓国が占めている。

 ベトナムに進出している韓国企業でベトナムに最も貢献しているのがサムスン電子だ。同社は2009年に、ベトナム北部のバクニン省で携帯電話の生産を開始、また2014年にはタイグエン省でも携帯電話製造をスタートさせた。

輸出額のトップは携帯電話、サムスンの貢献大

 ベトナムの品目別輸出額のトップは2012年までは縫製品だったが、2013年には携帯電話がトップの座に躍り出て、それ以降は1位を維持し続けている。ベトナムの輸出額の約2割が携帯電話で、そのほとんどはサムスン電子製だ。主な輸出先は米国や欧州連合(EU)、アラブ首長国連邦(UAE)だ。ベトナムがサムスン電子の主力生産拠点となったことから、サムスンディスプレーやサムスン電機など韓国の携帯電話関連の部品メーカーも相次いでベトナムに進出している。

 サムスン電子は携帯電話のほかに、ベトナムのホーチミンでテレビや洗濯機、冷蔵庫などの生産も2016年から始めており、ベトナム重視を鮮明にしている。サムスングループは同国で10万人以上の雇用創出に貢献、また、ハノイのノイバイ国際空港にはサムスン専用の貨物ターミナルも設置されているそうで、サムスンの影響力は絶大だ。ベトナムの国際空港やハノイ、ホーチミンなど大都市にはサムスン電子の広告看板があふれており、ベトナム人の生活に深く食い込んでいる。

ノイバイ国際空港(ハノイ)内にあるサムスン電子の巨大広告看板

ノイバイ国際空港(ハノイ)内にあるサムスン電子の巨大広告看板

LG電子、中国から生産拠点シフト

 ベトナムに進出している韓国の大手メーカーはサムスン電子だけではない。同国の大企業LG電子もベトナムに積極的に投資している。同社はベトナム北部の港湾都市ハイフォンに大規模な生産拠点を2015年に開設した。そこではテレビや携帯電話、洗濯機、エアコンなどを生産。これまで中国で生産していた携帯電話や洗濯機などをハイフォンの生産拠点にシフトしつつある。こうした動きに伴い、LG電子グループの部品メーカーもベトナムに拠点を設ける動きが加速している。

ロッテグループ企業は多店舗展開

 ベトナムに進出している韓国企業はメーカーだけではない。小売業や外食関連、ホテルの企業も積極的に出店している。ベトナムは人口が約9300万人で、東南アジア諸国連合(ASEAN)では、インドネシア(約2億4000万人)、フィリピン(約1億人)に次いで3番目に人口が多く、また、1人当たりの国内総生産(GDP)が2000ドルを突破し、消費市場として魅力ある国になりつつあるからだ。これが韓国企業のベトナム進出の2つ目の理由だ。

 最大の商業都市ホーチミンの1人当たりGDPは5000ドルを超えており、ベトナム全体水準の2倍以上となっている。韓国ロッテグループの大手スーパー「ロッテマート」や「ロッテ百貨店」、外食の「ロッテリア」、「ロッテホテル」などはホーチミンや首都ハノイを中心に多店舗展開している。店舗数が多いのがロッテリアで、両都市の街にはかなり浸透している。日本の大手スーパー、イオンや大手百貨店の高島屋もベトナムに出店しているが、店舗数では韓国企業の方が多い。

 また、韓国CJグループの系列会社はベーカリーショップ「トゥレジュール」を出店している。また、CJオーショッピングはホーチミンに合弁会社を設立し、24時間テレビショッピングを放映している。

ホーチミンにあるロッテマ―ト

ホーチミンにあるロッテマ―ト

韓国ドラマ、企業進出に弾み

 ベトナムでは、韓国ドラマが韓国企業のベトナム進出に弾みをつけている。同ドラマはベトナムでは好評だ。ドラマに出演している韓国の女優などが身に着けている韓国ブランドの服や化粧品は20代~30代を中心に人気があり、売れているのだ。韓国ドラマが韓国製品の売り上げにも貢献しているわけだ。ベトナムでテレビをつけると、同ドラマが多いのには驚く。一方、日本のドラマはベトナムではほとんど見ることはできない。

高層ビルのトップ3、すべて韓国資本

 不動産・建設関連でも韓国企業の存在が目立つ。ベトナムの高層ビルは韓国資本によるものが多い。高層ビルのトップ3はすべて韓国資本だ。ベトナムの最高層ビルはハノイにある「京南ハノイランドマークタワー」だ。72階建てで、サービスアパートのほか、百貨店、オフィス、ホテルなどが入っている。2番目に高いビルはホーチミンにある「ビテクスコ・フィナンシャルタワー」で、68階建てだ。ヘリポートまである。3番目の高層ビルはハノイの中心部にある「ロッテセンター・ハノイ」で65階建てだ。ロッテグループにとっては象徴的なビルと言われている。同グループの百貨店やスーパー、ホテルなどが入居している。

 このようにベトナムには韓国の様々な企業が進出している。ベトナムに進出している韓国メーカーのある幹部は「ベトナムは治安が良く、政治が安定しており、若い労働力が多い」ことも進出理由として挙げている。同国はASEANに加盟している国で最も安全な国と言っても言い過ぎではない。

70万人の雇用創出

 ASEAN加盟の10カ国を見ると、韓国企業が最も多い国はベトナムで、同国に長期滞在している韓国人(留学生除く)は13万人を超えており、日本人の約10倍だ。そのベトナムで韓国企業は約70万人の雇用を創出している。ベトナムは生産拠点としてだけではなく、消費市場としても魅力が高まっているだけに、韓国企業のベトナム進出は今後も続きそうだ。


執筆者プロフィール
時事総合研究所 客員研究員 山川 裕隆

時事総合研究所 客員研究員 山川裕隆
青森県五所川原市生まれ。青山学院大学法学部卒、1975年に時事通信社に入社、編集局に配属。旧通産省や農水省などを担当したほか、自動車や流通(百貨店やスーパーなど)、旧大蔵省のキャップを歴任。経済部次長や岐阜支局長などを務めた後、国際室次長に就任してベトナム速報の立ち上げに貢献。2012年からは時事総合研究所客員研究員として、東南アジア各国を時々訪問し、現地に進出している日本企業などを直接取材している。内外情勢調査会の地方支部などで東南アジアに関する講演も行っている。



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