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平成29年度国際教育者招聘事業(IEJ) 「ようこそ」から仲間へ――日本での10日間がいかに私の人生を変えたか カルバーデイ小学校(米国、カリフォルニア州アーバイン) 校長 アロン イェッツァー【配信日:2017/09/29 No.0271-1056】

配信日:2017年9月29日

平成29年度国際教育者招聘事業(IEJ) (1)
「ようこそ」から仲間へ――日本での10日間がいかに私の人生を変えたか

カルバーデイ小学校(米国、カリフォルニア州アーバイン) 校長
アロン イェッツァー


 IISTは2017年6月18日~6月29日に日本人子女教育に携わる欧米の先生方・教育関係者を招聘する「IEJプログラム」を実施しました。このプログラムは、海外の教育者に、日本の教育環境、歴史・文化に触れて頂き、その経験を教育現場で活かして頂くことを目的としています。今年参加された28名のうち3名の参加者がプログラム所感を寄稿しました。その3名の記事を、本271号と次272号(2017年10月31日配信)の2回に分けて掲載します。今回はそのうちの1本、カルバーデイ小学校(米国カリフォルニア州アーバイン)のアロン・イエッツァー校長による記事をご紹介します。


どこから始めようか。

 はじめて外国へ旅する私のわくわくした気持ちは、想像を超えていた。海外への渡航経験を持つ人たちからは、何をどのようにすれば良いか、アドバイスやお薦めの情報をもらった。学校では、米国で暮らす日本人に話を聞いてみたが、彼らは皆、日本は素晴らしいものばかりで、日本人は想像もできないようなかたちで面倒をみてくれるだろうと安心させてくれた。そして私はロスアンジェルス空港に向かい、南カリフォルニアからの7人のプログラム参加者と合流し、飛行機に乗った。機上で受けたおもてなしと親切が、その後10日間の前兆であるとは、ほとんど分かっていなかった。13時間後、東京に着陸し、税関を通過した。そしてその後に数多く出会うことになる、今回の冒険のガイドの一人目に出迎えられた。

 私たちが日本文化に向き合う最初の挑戦が、ホテルのフードコートで待っているとは思ってもみなかった。私たちの冒険は、自動販売機でどうやって食事を注文するか、について解明することから始まった。(※各カウンター毎に設置された自販機で食券を購入し、食券と引き換えに呼び出し受信機をもらい、呼び出しバイブがあれば、カウンターで受信機と引き換えに料理をもらうシステム。) 私たちは、よそ者に見えただろう、というのも、皆がいとも簡単そうに食事を注文しているその方法が、分からなかったからだ。しかし、そこに意味があった。私たちを心許ない気持ちにすることで、私たちの学校へ転校してきた日本人家族が、どのような気持ちで現地の習慣や生活に適応しているのかを理解するために。空腹を満たすため、食事を注文するときにまず戸惑うことが、そのような理解を促すために敢えて最初の体験として用意されたものではないことは想像に難くない。しかしその体験のおかげで、私たちには、その後出会うことに対して心を開き、謙虚であろうとする心構えができたのである。

 朝のオリエンテーションでスケジュールの概要説明を受けた後、予定されていた数々の学校訪問のうちの最初の学校を訪れた。(そこで私はかつての教え子に出会った!)小学校の校長である私は、学校訪問が自分の滞在中、もっとも興味深い部分になると思っていた。日本の学校運営について、内側から観察できる機会である。教師が何をどう教えるのか、生徒が何をどう学ぶのか、校長はどのように学校を運営するのか。私には多くの疑問があった。

 • 学校の環境と課程は、自分たちのものとはどう違ったか。
 • 生徒は、効果のある学習指導内容にどのようにアクセスしているか。
 • 生徒は、米国の生徒と比較してどのような行動をとっていたか。
 • 日本での日本人の生徒は、私たちの学校にいたときと同じ態度をとっていたか。

 そして、様々な学校訪問を通じて私が得た最も大きな収穫は、次の点である。

 子供は子供である!
 • 子供は同じものを欲しがる。
 • 子供は同じように行動する。
 • 子供は認められたい。
 • 教師は関係を築きたい。

広尾学園中学校・高等学校(東京都)

広尾学園中学校・高等学校(東京都)

 私がいくつかの新たな発見をしたのも事実である。先端技術でこれほど知られている国ならば、今回目にしたものより、もっと多くの(※IT等への)アクセスが生徒に与えられていると想像していた。生徒はもっと型にはまっていると想像していたが、実は全く反対であると気がついた。生徒は騒がしく、おしゃべり好きで、非常に活発であった。これは日本人の生徒が米国に来たときの行動とは大きく違っており、「なぜか?」という疑問を私に投げかけた。生徒は教師に対し、強い尊敬の念を示していた。生徒が夢中になって話し込んでいても、教師はすぐにその注目を集めることができるのである。遊びと厳格さのバランスが保たれており、生徒はそのバランスをとることができると信じられていた。訪問先の学校は全て、集団社会を中心とした価値観の上に築かれているように思えた。誰もが、みんなにとって一番良いことをするのが当たり前で、各個人は集団社会において、欠くことのできない構成要素なのである。人格形成に焦点を置くことが、各個人のゆるぎない基盤作りに役立っており、このことは、日本滞在中に学校の内外で目にしたあらゆるものに見て取ることができた。文化全体がこの価値観を学び取っているのは明らかで、レストラン、路上、地下鉄の駅等、場所を問わず、私たちが訪問したどこでも、人々は皆のためになるように、と行動しているように思えた。このようにして、彼らは個人および全体にとって最適な環境を、結果的に作り上げていたのである。

品川区立立会小学校(東京都)

品川区立立会小学校(東京都)

 学校訪問の他にも、日本の文化と生活習慣を実際に体験することができる機会があった。一行は新幹線で広島に行き、平和公園を訪問した。私は、亡くなった人々のために建てられた記念碑に感銘を受けた、そしてそれ以上に、広島が悲惨な原爆の記憶を、私たちが協調して生きていかねばならないというメッセージを発信するために大切にしている事実に心を打たれた。

原爆ドーム(広島県)

原爆ドーム(広島県)

 私たちは、行く先々の街で寺院や神社を訪れ、この国の宗教と文化の伝統を実際に見ることができた。史跡を訪れ敬意を表する人の列は途切れることがなかったが、訪問者の多さにもかかわらず、各所で静謐さが感じられた。全てが自然に流れるようであった。カメラで写真を撮る観光客と、聖地を訪れる地元の人々の穏やかな共存。このような尊敬すべき組み合わせを、私はそれまで見たことがなかった。私は宮島厳島神社の造りと、非常に存在感のある東大寺の大仏に驚き、東大寺の僧侶に特別に案内され、拝覧した際には、謙虚な気持ちを覚えた。

宮島(広島県)

宮島(広島県)

 ホストファミリーとの時間はこの上なく楽しかった。私は夫婦と3人の子供との2日間の同居生活を経験した。彼らの手厚いもてなしと歓迎は、私の緊張をほぐし、私が一観光客から地域住民へと変わる機会を与えてくれた。会話に苦労しながらも、子供たちとゲームをし、家族と夕食をとっていると、コミュニケーションには言葉を超える方法が数多くあることに気が付いた。私たちは微笑みと笑いで通じ合い、私は一瞬たりとも不安を感じることはなかった。赤の他人に門戸を開き、あのような体験をさせてくれた彼らに感謝している。

 幸運にも2日間の自由行動日があった。京都での1日と東京での1日である。この文章を書く目的は、私の経験を言葉に綴るためであるとは分かっているが、それは不可能に思われる。運がよかったのかもしれないが、両方の街で過ごした時間は、常に驚くほど素晴らしかった。私たちは歩き、バス、地下鉄、タクシーを利用し、両方の街を回り、1歩目から5万歩目までの全てを心に刻み込んだ。私たちのグループはたびたび、「これ以上良いことはあり得ない。」と口にしたが、その後、もっと良いことが待っていたのである!食べ物、店、混みあった道を歩くこと等々…行ったところ全てで楽しんだ。英国風パブでは地元の人たちとカラオケを歌い、三代にわたる家族経営の店で神戸牛の鉄板焼きとステーキを味わい、前衛的なコーヒーショップを見つけ、居酒屋では誕生会に参加するように誘われた!私たちは歓迎されているばかりでなく、地域の一員になったような気がした。

 到着したときから感じた温かさとおもてなしは、それまでの私の経験とは全く異なっていた。ガイド付きツアー、学校訪問そして自由時間といった様々な組み合わせは、日本の文化、習慣、生活を経験するために完璧なバランスを与えてくれるものであった。この目を見張るような体験について、IEJ(国際教育者招聘事業)には感謝してもしきれない。主催者とツアーガイドの方々、誰一人として外すことのないように、この冒険を決して忘れる事のないものにしてくれた全ての方に、この感謝の気持ちを伝えたい。知っておいて頂きたいのは、私は今回学んだことを持ち帰り、米国で暮らす日本人の生徒と家族が、より快適に感じられるよう、彼らが必要なことを支援します。私が日本で感じたように、米国で彼らが歓迎されていると感じられるように。

(原文:英語)
※は、編集者注


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