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シリーズ「AI/IoTの活用から生まれる新たなビジネス」(3) ロードヒーティングをもっと多くの物件に ランニングコストの不安と負担をAIで解消 エコモット株式会社 代表取締役 入澤拓也 【配信日:2017/11/30 No.0273-1062】

配信日:2017年11月30日

シリーズ「AI/IoTの活用から生まれる新たなビジネス」(3)
ロードヒーティングをもっと多くの物件に
ランニングコストの不安と負担をAIで解消

エコモット株式会社 代表取締役
入澤 拓也


 雪国において、除雪の負担を軽減してくれるロードヒーティング。しかし、この融雪装置には、燃料価格の高騰など、ランニングコストへの不安もしばしば聞かれる。そうした中、北海道の企業が、AIを活用し、燃料費の大幅削減を実現した。“人間の作業”を、どのようにAIに置き換えたのだろうか。


 私たちが提供する「ゆりもっと」は、ロードヒーティングの稼働状況を24時間体制で遠隔で管理する、ロードヒーティング遠隔監視サービスです。現地につけたカメラで雪の状況を把握し、かつ天気予報などを活用して、遠隔でボイラーのスイッチの入り切りをします。こうした効率的な運転を行う事で、ロードヒーティングのボイラーに使われる、灯油やガスなどの燃料代を、30%以上削減することが出来ます。

ロードヒーティングとは?

 札幌市は、100万人以上の人口と、500㎝以上の降雪がある、世界唯一の都市です。つまり、「雪」といういわゆる生活にとっては厄介なものと、「都市」という機能が共存しています。降雪があっても、「除雪」つまり、雪を避けておく場所があれば、そこに溜めておいて、暖かくなるまでそこに置いておき、自然に消雪するのを待つことが出来ます。しかし、札幌の場合は、都市構造になっているため、雪を避けておくスペースが、住宅地にはあまり多くありません。

 そこで、駐車場のアスファルトの下に、温水のパイプを引いて、床暖房のような状態を作り、雪を融かす仕組み、いわゆるロードヒーティングが多く敷設されています。札幌市の他にも、小樽市や、道外では青森市などが非常に多く敷設されています。

ロードヒーティングが敷設されている駐車場の入口。敷設部分だけ雪がない

 ロードヒーティングが敷設されている駐車場の入口。敷設部分だけ雪がない。

これまでの「自動運転」が抱えていた問題

 ロードヒーティングは従来、降雪センサーによる「自動運転」で動いておりました。自動運転とは、「降雪センサー」が大きな役割を果たします。つまり雪が降ってきたという事を、センサーが反応し、ボイラーのスイッチを自動的に入れています。しかし、センサーの反応がいまいち曖昧で、雪ではなく雨の時もスイッチが入ってしまったり、また、ほんの少しの降雪ですぐ止むような雪でも、センサーが検知されればスイッチが入ってしまいます。

 また、降雪センサーには、「遅延タイマー」という機能が一般的に具備されています。センサーが「雪が止んだ」と検知した後も、「10分~180分(設定可能)は追加でスイッチを入れる」という機能です。これは、雪が止んだ後も、雪が相当路面に残ってしまい、融けきれてないことを防止するために使います。つまりは、この設定は、現地でないと行えないため、仮に「30分」と設定しておくと、どんなパラパラした雪で、全然積もらない雪でもセンサーが反応してしまうと、最低30分以上はボイラーが稼働してしまうのです。

「人間の眼」で実現した消費燃料の削減

 このように、センサーによる運転は非常に無駄が多かったのですが、「ゆりもっと」は、この問題を解消するサービスです。

 本当に、雪が残っており、運転が必要かどうかを「人間の眼」で判断することで、多少の通行の妨げにならない程度の雪は残して置いたり、パラパラした、積もらない雪の場合は、敢えてスイッチを入れないなど、人間が適宜対応し、遠隔管理を行います。こうして、燃料代の削減につながっているという訳です。

 現地には、カメラとIoT機器が敷設されており、ボイラーの遠隔操作のスイッチ、降雪センサーの反応状況などを専用のクラウドアプリケーション画面で確認することが出来ます。札幌市内でも、雪の降り方は地区によって、全然違うため、その地区ごとの特徴などを注視し、天気予報を組み合わせながら、オペレーターがクラウド画面で操作しています。現在、北海道、青森を中心に1,800物件ほどの管理を行っております。

現地に設置されるカメラ。人間の眼の代わりに雪の状況を識別する

 現地に設置されるカメラ。人間の眼の代わりに雪の状況を識別する。

人の作業をAIに置き換えられないのか?

 「ゆりもっと」は、24時間の遠隔監視サービスであることから、常に数名の監視員がいる状態を作り、かつ休日等を確保するとなると、20名くらいのスタッフが必要となります。また、冬期間だけのサービスであることから、毎年期間限定のアルバイトなどを雇用しておりました。しかしながら、昨今の社会背景から、人材難であったり、賃金の上昇など、経営側としては大きな悩みの種となっておりました。

 また、毎年オペレーターが変わるため、操作方法を教えるための教育コストがかかるほか、シーズン当初は慣れない中、オペレーターの技量により、スイッチの入れるタイミングが早すぎたり、遅すぎたり、曖昧な動作をしてしまう事もありました。

 そこで、これまで人間が行っていた作業を「AI」に置き換えられないか?という発想から、開発に取り組み、現在では、「AI」を活用し、誰でも操作が簡単に行えるようにしております。すなわち、人間の眼でやることは「雪があるかどうかを判断すること」と「これからの天気はどうなるのか?」という判断の2点です。この2つを機械的にコンピューターが自動で「認識」して、「判断」して、「決定」することができれば、AIで置き換えることは可能です。

監視ルームの様子。常に数名の監視員が24時間体制で管理する

  監視ルームの様子。常に数名の監視員が24時間体制で管理する。

AIが得意なこと、学習が必要なこと

 まず、画像に関してですが、黒いアスファルトに白い雪があるか無いかの判断をすることは、人間の顔認識をするよりも、はるかに簡単です。ただ、問題点は、黒くても「凍っている」ことがある、いわゆる「ブラックアイスバーン」状態のことがあります。その状態ではやはりボイラーのスイッチを切ることはできません。なので、凍っているか凍ってないかの判断は、光の反射で判断する独自のアルゴリズムを入れて、認識するようにしました。

 また、天気予報に関しては、気象予報データ配信会社から、1kmメッシュの現在の気温や風力、また今後の現地における天候予測のデータをAPI(※)で取得し、クラウド側にあるAIと連携させています。こうして、AI側では、「画像認識」と「API連携」により、「この物件は今スイッチを入れるべきか、切るべきか」がわかるようになります。

 こうして、人間の代わりにAIが遠隔操作をしてくれるようになれば、とても楽になるのですが、やはり「AI」というのは、「学習させる」という事も必要です。AIが「ボイラーをONしていい」と判断した実際の物件を見てみると、その物件は、お客様の方から、「あまりスイッチを入れないでほしいから、本当に通行の妨げになるときだけ入れてください。少しの雪であれば、自分たちで雪かきしますから」と言われていたりもします。

 そういう、物件に応じた事情などを、人間は理解し操作しますが、AIはそういった定性的な情報は苦手です。なので、AIに対して、「ここの物件はこれくらいにならないとスイッチを入れなくていい」と言ったことを、「学習」させてやる必要があります。そのため、今日現在は、まだ100%、AIで自動運転をやってはおらず、オペレーターに対して「気づき」を与えるシステムのような役割で動いています。

ボイラーの遠隔制御に使うIoT機器。降雪センサーからの信号をここで受ける

ボイラーの遠隔制御に使うIoT機器。降雪センサーからの信号をここで受ける。

見えてきたAI完全自動運転までの道のり

 2020年までに、AIによる完全自動運転が行えるようになれば、遠隔監視のコストも下げられ、IoT機器も廉価になっていくでしょうから、もっと多くの物件につける事が出来るようになり、より多くのCO2の排出を防ぐことが出来ます。

 エコモットは「AI×IoTで社会のインフラを作る会社」として、CO2排出のみならず、防災や事故削減、防犯、介護など、社会の課題をAI×IoTで解決し、それがインフラとなって社会の基盤になるようなサービス作りを今後も行って参ります。

※アプリケーション・プログラミング・インタフェース(Application Programming Interface)の略。WEB上に公開されたソフトウェアの一部機能。新たなサービスの開発やデータの二次利用等、誰でも外部から利用が可能。


執筆者プロフィール
エコモット株式会社 代表取締役 入澤 拓也

エコモット株式会社 代表取締役 入澤 拓也
1980年、北海道札幌市出身。2002年、米ワシントン州HighlineCommunityCollege卒、
2010年、小樽商科大学大学院商学研究科 アントレプレナーシップ専攻修了、経営管理修士(MBA)。2002年米国留学から帰国後、札幌市内のIT企業クリプトン・フューチャー・メディア(株)入社。携帯電話のコンテンツ企画・開発に従事、有料会員数10万人超を誇る「ポケット効果音」など人気サイトを手がける。2007年1月同社を退社、同2月に「エコモット株式会社」を設立。2017年6月、札幌証券取引所アンビシャス市場に上場。現在、北海道IT推進協会 常任理事 人材育成委員会 委員長、北海道モバイルコンテンツ・ビジネス協議会 副代表幹事、NPO法人札幌ビズカフェ 副代表理事等も務める。



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