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グローバル化する社会で活躍する日本人の育成で大切なこと ニッセイ基礎研究所・主席研究員アジア部長 新潟大学大学院教授 平賀 富一 【配信日:2018/1/31 No.0274-1063】

配信日:2018年1月31日

グローバル化する社会で活躍する日本人の育成で大切なこと

ニッセイ基礎研究所・主席研究員アジア部長
新潟大学大学院教授
平賀 富一


 少子高齢化という課題を抱えつつも、グローバル化する社会、特にビジネス界で活躍し貢献する日本人の育成に当たっての重要点は何か


 わが国の企業活動がグローバル化し、さらに、国内でも、観光・投資分野などインバウンドのビジネス機会も増加するといった環境変化の中で、その中核を担うべき有能な人材、いわゆる「グローバル人材」(日本人・非日本人)の育成・獲得・活用の重要性がさらに高まっている。

 前回の弊稿(2017年4月28日付「多国籍人材の能力・個性を活かす『新たな日本的経営』への期待」)では、日本企業のグローバル化における人材面の課題について、外国籍の人材(高度外国人材)の活用に関する観点を中心に述べた。

 本稿では、少子高齢化という課題を抱えつつも、グローバル化する社会(特にビジネス界)で活躍し貢献する日本人の育成について、筆者が重要と考えている点について述べたい。

1. グローバル化における人材面(日本人)の課題

(1)海外勤務者について
 各種の調査結果において、日本企業のグローバル化が進展し、それを推進する上での最大の課題は人材であるとされており、特に、日本人のグローバル人材の育成・確保には以下のような課題が指摘されている。

a. 海外駐在員については、第一に、その高齢化傾向が指摘されている(労働政策研究・研修機構の調査によれば、93年の平均年齢41.3歳が2006年に46.1歳へ上昇しており、その後の他機関の調査でも同様の指摘がされている)。

 第二に、単身赴任者の比率が非常に高いことも特徴である。この点で対照的な例が韓国であり、将来の就職に有利な条件となる子供の英語力を、企業の費用負担や補助で身に着けるチャンスとして海外勤務に家族を帯同することに積極的である。その結果、インドやインドネシアなど多くの地域で、現地在住の邦人よりも韓国人の方が大きな数となっており、現地でのプレゼンスが大きい。

b. 若手社員の多くが海外勤務を敬遠する傾向にある。直近の調査結果でも、新入社員の60.4%が「海外で働きたいとは思わない」と回答している(2017年10月公表の産業能率大学による「第7回 新入社員のグローバル意識調査」による:図表-1参照)。

図表-1 海外勤務についての意向 (2)海外留学者と語学力について
 グローバルに活躍する人材を育てる大きなベースと考えられる海外への留学者数も、中国・韓国などの増加とは対照的に減少・伸び悩みという傾向にある(UNESCOによるデータ参照:図表-2)。

図表-2 日中韓の海外留学者数(大学・大学院レベル)の推移  加えて、重要なコミュニケーションスキルの強化という観点で、英語力を例に見ると、我が国の水準は世界的に下位に低迷している(留学に必要な英語力を測る試験であるTOEFLの2010年の国別ランキングで、日本は、世界163か国中135位、その内、アジア30か国中の27位となっている)。
 
2. 動機付けとモチベーションを向上の重要性

 上記1.の諸課題・問題点の解決・改善に当たっては、第一に重要なことは、若者たちの海外勤務や海外での起業、内外問わずグローバルなビジネスに対する意識づけを変え、動機付けを行い、モチベーションを向上させることであると考える。

 筆者は、複数の大学でグローバル経営に関する講義を担当しているが、そのような科目を受講している学生、中でも海外での滞在経験のある学生の相当数が、開講当初に、「日本は良いコンビニがあって便利だし、安全で衛生的なので、わざわざ海外に行く必要はないと思う」と述べるのを聞いて驚くことも多い。バブル崩壊後の時代に育った日本の若い世代は繁栄の時代を知らず、自信がなく内向きと言われる傾向に納得することも多い。

 しかしながら、当初は、上記の発言のように、海外勤務などグローバルな業務に対してネガティブな印象や思考を持っていた受講生たちの多くが、講義が進む中で、日本や自らの置かれた情勢・環境やチャンスなどを知ると、海外での勤務・留学や、英語をはじめとする語学力の強化についてポジティブな見方や姿勢へと変化し、グローバル企業や、国内で外国人客への積極的な対応を行う企業への就職する人が多くなっている。

 さらには、卒業後わずかな期間で、海外で起業を行うという例も複数経験している。受講生の講義の最後のコメントの代表例は、「中学・高校などもっと早い段階でこんな話を聞きたかった、そうすればもっと海外留学や勤務にも積極的になれたと思う」というものである。

 この点に関し、上記の産業能率大学の2017年「第7回新入社員のグローバル意識調査」でも、全体では60.4%が海外での勤務に消極的な回答となっているが、その内訳をみると興味深いことがわかる。留学経験者は76.5%という多数が海外勤務に前向きな回答であるのに対し、留学経験の無い層の7割が海外で働きたくないと回答しているのである。また、海外で働きたくない理由として、語学力に自信がないとの答えが最多であり。同大学は、留学経験の有無と、語学の習熟度が新入社員の海外志向に影響を与えているとの分析を行っている。

 さらに同調査では、「日本企業はグローバル化を進めるべきだと思う」と回答した割合が79.5%と過去最高となるなど、新入社員のグローバル意識にポジティブな変化が見られていると指摘されており、上記に述べた筆者の大学での経験や認識とも合致している。

3. おわりに

 グローバル人材の候補たる若者世代には、現在のわが国を取り巻く世界の姿、日本の代表的グローバル企業の創立者の高い志・発展の歴史や企業活動での世界への貢献・影響力、グローバル化の進展とその中での日本人・日本企業の役割やチャンスをきちんと教育・伝達し、より多くの者が内外のグローバルな勤務での活躍やキャリア形成の意義・効用などに気づき、考える機会を、早期(できれば中学・高校時代)から与えることが有用であろう。

 そのためには、当該内容を教育カリキュラム(総合学習の時間の活用や特別授業も含む)の中に含めることが必要と考える。こうして学び理解した目的意識、意義、自覚をもって、語学力・異文化対応力の強化や、海外留学・海外勤務に関する制度や支援の充実を図ることが有効だろう。その際には、日本の文化・歴史など自国について十分な知識・理解をもってもらうことが必須であろう。

 アジア諸国の経済発展と市場の拡大等のトレンドを展望すれば、将来のチャンスが非常に大きい日本の若者に対して、政府・企業・教育研究機関・マスコミや家庭が連携して、環境整備や支援の制度・仕組みの充実、ロールモデルやベストプラクティスの積極的な紹介などを行うことによって、グローバルに学び、働き、貢献することの意義や面白さを早い段階からきちんと伝えることが何よりも大切であると考える。


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