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シリーズ「インバウンド観光推進」(No.10) かすみがうら市:「旬のフルーツ」×「サイクリング」で光らせる地域の魅力 かすみがうら市役所 地方創生・事業推進担当 西山 正 【配信日:2018/1/31 No.0274-1066】

配信日:2018年1月31日

シリーズ「インバウンド観光推進」(No.10)
かすみがうら市:「旬のフルーツ」×「サイクリング」で光らせる地域の魅力

かすみがうら市役所 地方創生・事業推進担当
西山 正


 自然豊かで、果樹や農水産物などの地域資源に恵まれながら、知名度の低さが課題の茨城県かすみがうら市。観光入込客数は茨城県の中でも下位に甘んじている。農水産品のブランド化と観光交流人口の拡大の2つを兼ねた地方創生への取組みを紹介する。


 昔から「西の富士、東の筑波」と並び称された筑波山に連なる山々と、国内第2位の面積を誇る霞ヶ浦に面した茨城県のかすみがうら市。東京から高速道で約1時間半の距離にある当市は、自然豊かで、梨・栗をはじめとする果樹やサツマイモ、レンコンなどの農産物、霞ヶ浦で水揚げされるワカサギやシラウオ等の水産物など地域資源に恵まれています。また、観光客を惹きつけるスポットも多く、例えば、市内には約50か所の観光果樹園が点在するほか、霞ヶ浦の沿岸には総延長約180kmものサイクリングコース「つくば霞ヶ浦りんりんロード」が整備され、週末には多くのサイクリストが訪れています。

市内丘陵地帯より望むかすみがうら市。霞ヶ浦に向けて開けた広大な平地に田畑や牧草地が広がる。

市内丘陵地帯より望むかすみがうら市。霞ヶ浦に向けて開けた広大な平地に田畑や牧草地が広がる。

見過ごされていたかすみがうら市の地域資源

 しかし、市内で生産される農水産品の大半は、これまで農協や卸業者を通じて「茨城産」として首都圏に流通してきました。そのため、「かすみがうら市産」ブランドで店頭に並ぶ農産品は少なく、農水産業、特に果樹生産や水産業における収益性は高くありません。また観光分野についても、観光果樹園は経営者の高齢化により減少傾向、「りんりんロード」に集まるサイクリストも大半は市内を素通りするだけ、ということもあり、観光入込客数は県内下位(44市町村中35位)にとどまっています。このような背景から、1995年以降人口減少の始まったかすみがうら市にとって、農水産品のブランド化や観光交流人口の拡大を通じた地域経済の活性化は、市の地方創生に向けた重要課題となっていました。

 そこで当市は、2015年、農水産品など地域資源に対する首都圏ユーザーの関心度を分析した市場調査や、女性グループやファミリー層を招いてのモニタリングツアー、ワークショップの実施などを通じて、地域資源とサイクリングを組み合わせた観光プログラムを企画しました。そして翌2016年4月、このサイクリングプログラムを中心事業に、地域資源を活かした飲食事業や、農水産品の加工・販売事業を行う「株式会社かすみがうら未来づくりカンパニー」を市と民間企業、地元金融機関の共同出資により設立しました。

サイクリングと共に果物狩りを楽しむプログラム参加者たち。たわわに実った梨もかすみがうら市の特産の一つ。

サイクリングと共に果物狩りを楽しむプログラム参加者たち。たわわに実った梨もかすみがうら市の特産の一つ。

重視するのは地元生産者との連携

 現在、同社は霞ヶ浦湖畔の歩崎公園に立地する市交流センターを拠点として、季節の果物狩り・地産地消グルメ・サイクリングを組み合わせた体験型観光プログラム「かすみがうらライドクエスト」のほか、地産地消のレストラン「かすみキッチン」、地産品販売の「かすみマルシェ」などの事業を展開しています。

 事業の実施にあたって同社が最も重視しているのは地元生産者との連携です。例えば、ライドクエストは立ち寄り先として市内観光果樹園約20か所と提携、かすみキッチンの食材についてはその約8割を地元農水産業者から調達しています。また、地産の果物や米を原料にしたビールや日本酒の製品化にも取り組むなど、同社のビジネスの拡大により、地元生産者にも経済効果が波及する仕組みづくりを目指しています。

 一つひとつは魅力的でも、地域にバラバラに存在していることでその魅力をユーザーに伝えきれていなかった資源(農水産品や観光スポット)を、ユーザーの嗜好をふまえながら効果的に組み合わせ、デザイン性を高めて提供することでファンを増やしていくのが、未来づくりカンパニーが得意とする手法です。その手法が最も発揮されている事業が、体験型観光プログラム「かすみがうらライドクエスト」だと言えるでしょう。

体験型観光プログラム「かすみがうらライドクエスト」

 「ライド」は自転車に乗ること、「クエスト」は宝さがし、「ライドクエスト」はその名のとおり、参加者の皆さんに自転車で地域の宝を楽しんでもらうプログラムです。プログラムは季節ごとにコースを変えながら通年で開催されています。例えば、2017年の夏から秋にかけては、観光果樹園での果物狩り、ラマの飼育施設での動物とのふれあい、パワースポットとして評判の古墳での散策などを組み合わせた全長約50キロメートルのロングコース(※)です。皆さんにお楽しみいただいたコースの一例を少しご紹介しましょう。
※全長約25キロメートルのショートコースもあります。

かすみがうら市交流センター。50キロメートルのコースをここからスタートする。手ぶらでBBQを楽しむことも出来る(要事前予約)

かすみがうら市交流センター。50キロメートルのコースをここからスタートする。手ぶらでBBQを楽しむことも出来る(要事前予約)

 参加者の皆さんは、霞ヶ浦が眼下に広がる霞ヶ浦随一の景勝地、歩崎(あゆみざき)のかすみがうら市交流センターからスタートします。歩崎は、その眺望の素晴らしさから茨城百景にも選ばれています。出発してしばらくは湖岸沿いの「りんりんロード」をサイクリング。透明度の低い霞ヶ浦も、快晴の日は青空が映えて目にまぶしいくらいの青さで目前に広がります。その後、湖岸を離れて坂道を上がると、のどかな農村の風景に心がなごみます。

のどかな農村の風景。秋には黄金色に実ったまぶしい稲穂が一面に広がる中を自転車で走りぬける。その先には筑波山が美しい山容を見せる。

のどかな農村の風景。秋には黄金色に実ったまぶしい稲穂が一面に広がる中を自転車で走りぬける。その先には筑波山が美しい山容を見せる。

 しばらく走るとまっすぐな農道が数キロメートルにわたって続く絶景ポイントに差し掛かります。道の両側に広がるのは広大な畑や畜舎。まるで北海道のような風景の中、遠くには特徴的な2つの頂を持つ筑波山の稜線がくっきりと見えます。スタートから25キロほど走ると、折り返し地点の観光果樹園に到着。梨やブドウ、栗など季節の果物狩りを楽しんだ後には、未来づくりカンパニーによって果樹園に配達された特製ランチと果物のスムージーでお腹を満たします。

 コース後半では、途中にある市の施設で足湯に浸かって元気を回復。少し離れた福祉施設ではアニマルセラピーのために南米原産のラマが飼育されていて、参加者の皆さんは動物とのふれあいを楽しむことができます。コース終盤のクライマックスは6世紀に築造された富士見塚古墳。全長約80メートル、県内最大級の前方後円墳に、歴史に詳しくないサイクリストも思わず興味をそそられます。円墳に登れば霞ヶ浦の入江が目の前に美しく広がり、古墳独特の神秘的な雰囲気も相まって、心が癒されていくのを感じます。

6世紀初めの築造と推定される富士見塚古墳。冬の晴れた日には、標高35mの墳頂から、その名の通り富士山をも望むことができる。向こうに広がる水辺は霞ヶ浦。

6世紀初めの築造と推定される富士見塚古墳。冬の晴れた日には、標高35mの墳頂から、その名の通り富士山をも望むことができる。向こうに広がる水辺は霞ヶ浦。

 坂を下って湖岸のサイクリングコースに出ると、残りはあと数キロ。夕日が映える湖の風景を楽しみながら走って、歩崎の交流センターにゴール。ほどよくお腹も空いてきたところで、お待ちかねのディナータイムとなります。交流センター2階の「かすみキッチン」で、地産の農水産品をふんだんに使ったヘルシーメニューのコースを満喫し、デザートには参加者の皆さんが自ら作ったフルーツピッツアを楽しみます。気がつけば日も暮れて、満月の明かりに照らされた湖面を眺めながら味わう食後のコーヒーはまた格別です。

 このように、地域に点在する宝を自転車で結ぶことによって、かすみがうら市では、地域資源を点ではなく面でお客様に楽しんでいただけるようになりました。まだまだPRが十分ではなく集客に苦労している状況ですが、参加いただいた方の満足度は高く、リピーターも現れてきています。今後もより満足度の高いプログラムを目指して、新しい地域の宝を発掘し、磨き上げていきたいと思います。


かすみがうら市について
茨城県南部に位置し、人口約4万2千人のかすみがうら市は、山と湖の恩恵である温暖な気候を活かした「果樹のふるさと」として、梨・ぶどう・栗・柿・イチゴの収穫体験が楽しめます。霞ヶ浦湖岸では質の良いレンコンや米が生産され、またワカサギやシラウオなど豊富な水産資源による佃煮等の製造も盛んです。 明治期に当地で考案された風力による漁船「帆引き船」は今も観光客向けの操業が人気を博し、また湖岸で開催される、国内では珍しい公道での自転車耐久レース「かすみがうらエンデューロ」は、全国から多くの参加者を集めています。


関連サイト
かすみがうら市観光協会(日本語)

(株)かすみがうら未来づくりカンパニー(日本語)

“Let's go on an adventure! Kasumigaura City, Ibaraki-ken, Japan”(日本語・英語)

かすみがうらエンデューロ(日本語)

かすみがうらエンデューロ(Facebook)


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