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東北次世代移動体システム技術実証コンソーシアムと地方創生 ~国家戦略特区で進む新しいまちづくりと産業創成へのチャレンジ 東北大学 未来科学技術共同研究センター(NICHe) 教授 鈴木高宏 【配信日:2018/4/27 No.0278-1075】

配信日:2018年4月27日

東北次世代移動体システム技術実証コンソーシアムと地方創生
~国家戦略特区で進む新しいまちづくりと産業創成へのチャレンジ

東北大学 未来科学技術共同研究センター(NICHe) 教授
鈴木 高宏


 いま東北では、先進技術によるイノベーションによって地方創生を実現するための取組みが行われています。近未来技術の実証を推進する政府により国家戦略特区の指定を受けた仙台市では、産学官連携により、自動運転・ドローン飛行をはじめとした「次世代移動体システム」技術の研究開発や拠点整備が進行しています。被災地・過疎高齢化・人口減少などの地域課題を解決し、新たな産業と雇用の創出を目指すコンソーシアムの取組みを紹介します。


はじめに

 当方が東北に来てから4年となりました。この間、東日本大震災からの5年間の集中復興期間の区切りを過ぎ、新たに「復興・創生期間」へと移行しました。仙台市内にいる限りは見た目上、復旧・復興した感はありつつも、石巻、南三陸、気仙沼、福島相双地区、など数々御縁を頂いている地域だけでも機会ある毎に足を運びますと、「復興」という言葉が実感を伴うには未だ課題の多さを痛感します。

 それぞれ強力に進められていること多々ありますが、何より予算や人員の制約に左右されず、長期に持続できるための仕組みづくりを常に意識していきたいと考えています。これまでも、これからも数多くのご支援を頂けてきていることに大きな感謝を持ちつつ、今後も引き続き、より大きく連携の輪を拡げながら目指すべき道を進んでいきたいと思っております。

東北次世代移動体システム技術実証コンソーシアム

 東北大学次世代移動体システム技術実証コンソーシアムは、2016年8月に宮城県、仙台市、東北経済連合会と東北大学の協力により設立されました。契機となったのは、その前年に自動運転やドローン等の近未来技術の実証を進める国家戦略特区として仙台市が認定を受けたことでした。東北地域の企業が主体となりながら、関心を持つ全国企業や大学・研究機関等の参画を広く集めつつ、産学官連携によりその環境を活用して実証を進めることを目的としています。

東北次世代移動体システム技術実証コンソーシアム組織関連図

 地域企業については、みやぎ自動車産業振興協議会、みやぎ高度電子機械産業振興協議会、仙台応用情報学研究振興財団、みやぎ工業会など関係の地域企業団体を通じ、のべ1300社の参加を得ています。また、自動運転、ITS(高度道路交通システム)などに関しては関係各省庁が数多く、内閣官房、内閣府、経済産業省、国土交通省、総務省、警察庁、文部科学省などの中央省庁やその地方局など、コンソーシアムがワンストップ的機能を果たせるよう関係を構築しています。

 幹事会は設立の中心となった上記4者が構成すると共に、その事務局を東北大学未来科学技術共同研究センターおよび仙台市まちづくり政策局政策企画部が務め、本地域における各種の実証を推進しています。具体的な取組については、WG(作業部会)を設置し、関心ある各分野についてそれぞれ進めています。

各WGの活動

 現在、WG1(法制度検討)、WG2(自動運転実証)、WG3(飛行ロボット実証)、WG4(電池技術応用)の4つの作業部会が設置されています。

法制度検討
 WG1(法制度)は、元々、特区を推進する上で法規制緩和を行うべき事項を検討する目的から設置したものです。現段階で必要な走行実証については全国的に警察庁が認めたこともあり、自動運転を運用するビジネスモデルの検討の上で関係し得る道路運送車両法や道路運送法、またはドローンについては航空法や電波法など、より幅広い法制度検討をその範囲と考えています。また、法規制緩和に限らない検討として、例えば自動運転車やドローン等が仮に事故を起こした際を想定した模擬裁判を行うなど、理解啓発を進める取組などもその検討範囲に含めています。

自動運転実証
 WG2(自動運転実証)については、本コンソーシアムの主目的である一方、全国各地で行われている実証との差別化として、より将来的な持続性を考えた取組を意識し、かつ複数の企業・事業者等が併存できる基盤環境づくりを考えています。2016年3月に仙台市荒浜で行った公開デモにおいても、東北大のみならず他大学、民間企業による実証も、自動運転だけでなくドローンの実証も同時に行い、各種の実証が一同に行える場づくりをアピールしました。

 2017年度からは、WG2の中に5つのSWG(分科会)を設け、特に青葉山(SWG1)、仙台市特区(SWG2)、多地域展開(SWG3)とフィールドをステージ毎に分け、多地域で並行して実証・実装を推進できるようにしました。SWG2においては荒浜地区の実証フィールドとしての利活用提案を仙台市に行ったほか、同市北部の泉パークタウンなるニュータウン住宅地における新交通システム導入に向けた構想を検討し、2017年10月にはその第一弾デモを行いました。

 なお、荒浜地区は仙台市の海岸沿いの町で、東日本大震災の津波で被災し、多くの住民が犠牲になった場所です。現在、災害危険区域に指定され住むことが出来ない地域ですが、いま次世代技術を実証する場所として活用が検討されています。震災時、避難する車で道路が渋滞したため、多くの人が車内にいながら津波に飲み込まれました。各車が情報通信接続され、状況に応じて自律的に走行が可能な自動運転車は、自然災害時においても協調して渋滞を防ぎつつ円滑に避難するなど、力を発揮することが期待されています。

自動走行実験するEV車(トヨタの超小型EV「コムス」改造)整備された都市部よりも、むしろ地方でこそ自動運転車の活用が期待される。東北大学の優れたセンサ技術は、地方部に多い雨・霧・雪・砂塵など悪天候・悪条件で力を発揮する。

自動走行実験するEV車(トヨタの超小型EV「コムス」改造)
整備された都市部よりも、むしろ地方でこそ自動運転車の活用が期待される。東北大学の優れたセンサ技術は、地方部に多い雨・霧・雪・砂塵など悪天候・悪条件で力を発揮する。

 SWG3(多地域展開)においては、東大ITSセンター坂井康一准教授(前国土交通省東北地方整備局磐城国道事務所長)を座長に迎え、宮城県石巻市のほか、福島県でも南相馬市、浪江町といった相双地区やいわき市などに対する検討を始めています。特に、自動運転を含む近未来交通の導入に向けた基盤環境整備として、EV化、情報通信環境(IT・IoT化)、現地体制の整備を挙げています。最近よく言われる"CASE"(Connected, Automated, Shared, Electric)とも共通するところです。

飛行ロボット実証
 WG3(飛行ロボット実証)については、東北大学においては、自由回転可能な球形外殻を有するドローン(球殻ドローン)により検証を行いました。橋梁などのインフラ点検の際に、通常のドローンでは困難のあった狭隘部への接近、近接カメラ撮影や、接触・打音検査などの点検作業支援の実証実験が、仙台市内の橋梁にて行われるようになっています。

球殻ドローンによる橋梁点検<br> 特徴は回転球殻を装備していること。橋梁にぶつかっても、球殻が衝撃を和らげ、機体を守るため、安全、安定して飛行できる。今後、橋梁以外の建造物にも対応できるようになることが期待されている。

球殻ドローンによる橋梁点検
特徴は回転球殻を装備していること。橋梁にぶつかっても、球殻が衝撃を和らげ、機体を守るため、安全、安定して飛行できる。今後、橋梁以外の建造物にも対応できるようになることが期待されている。

 2017年5月に龍沢橋(仙台市青葉区)で実証実験が行われたほか、2018年度には年間を通じた定常的な実験を行えるよう検討が進められています。また、2016年4月にドローン活用を進めたい民間企業を中心に、ドローンテックラボ・コンソーシアム仙台が設立され、競技会(ドローンレース)の開催やドローン教室など一般への普及拡大を目指した活動も行われています。

電池技術応用
 WG4(電池技術応用)については、安全・高信頼性なマンガン系リチウムイオン電池の地方中小企業による開発製造普及を進める電池製造分科会、そうした電池の応用分野の一つとなる電気バス製作分科会、将来的にそうした電池の利活用をより拡げる上で必要となる非接触給電技術の研究開発を進めるワイヤレス給電分科会、といった各分科会での活動が精力的に進められています。これらは地域により具体的な、新たな産業・雇用を創出する事例として、石巻市の飯野川第二小学校跡地に量産工場が建設予定となっています。
東北大学製 リチウムイオンバッテリー 高性能だが異常発熱し発火する危険性があるコバルト系ではなく、あえて容量が若干劣るマンガン系の材料を採用。これまで発火事故がなく、初めて製造する中小企業でも投資負担が低く、扱いやすく、量産できる技術を同大が確立した。

東北大学製 リチウムイオンバッテリー
高性能だが異常発熱し発火する危険性があるコバルト系ではなく、あえて容量が若干劣るマンガン系の材料を採用。これまで発火事故がなく、初めて製造する中小企業でも投資負担が低く、扱いやすく、量産できる技術を同大が確立した。

おわりに

 本コンソーシアムを通じ、産官学で様々に行われている取組について情報共有と分野や組織を越えた幅広い連携を促進することで、横串を刺していければと思います。自動運転やドローンといった先進的なところが目につきやすいところですが、それがしっかりと根付くためにはその一方で着実な基盤整備と具体的な産業づくりとが重要と考えられます。現在、WG4でリチウム電池を中心とした産業づくりが実現されつつありますが、その他の要素技術についてもそれに倣って産業化・ビジネス化が行えるように進めていきます。皆様のより一層のご参画を期待したいと思います。


執筆者プロフィール
鈴木高宏
東北大学 未来科学技術共同研究センター(NICHe) 教授

 1998年東京大学工学系研究科博士課程修了、同大生産技術研究所講師。2000年~同助教授、2004年~同大情報学環にてロボット、ITSを主に研究開発の傍ら、学際的に科学技術コミュニケーション等にも取り組む。2010年~長崎県庁に出向し県幹部職員(政策監)として五島列島における電気自動車とITSの実装プロジェクトを推進、平成25年東大に復帰後、平成26年~現職。次世代移動体を主に各プロジェクトを推進する中、仙台市の地方創生特区認定に貢献、自動走行等の近未来技術の実証を推進中。

事業概要

 東北大学未来科学技術共同研究センターは、大学の研究シーズを実用化・ビジネス化・社会実装など出口化を行うため、学内から広くプロジェクトを集め、プロジェクトリーダーとなる教員には研究専念できる環境を提供しています。各プロジェクトは有期限で行われ、概ね3年目に中間、5年目に最終評価が行われます。自動運転やEV、地域交通に関してはそのプロジェクトの一つである次世代移動体システム研究プロジェクト(平成30年度からは先進ロジスティクス交通システム研究プロジェクトに更新)が進めています。


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