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北海道は日本の中のモンゴル~経済交流の足がかりは共通点にあり 北海道モンゴル経済交流促進調査会 事務局次長 ガンバット ウスフバヤル 【配信日:2018/4/27 No.0278-1076】

配信日:2018年4月27日

北海道は日本の中のモンゴル~経済交流の足がかりは共通点にあり

北海道モンゴル経済交流促進調査会 事務局次長
ガンバット ウスフバヤル


 IISTは北海道経済産業局と共催で、北海道とモンゴルの経済交流を促進するため「北海道におけるモンゴル国との経済産業連携構築推進事業」を昨年度に続いて実施しました。2017年度の取組みついて、通訳兼コーディネーターとして参加したモンゴル出身のガンバット ウスフバヤル氏のレポートを紹介します。


 北海道といえば何が思い浮かぶだろうか。答えはそれぞれ違うと思うが、共通して言えるのはきれいな自然、豊かな食べ物、人情味ではないだろうか。不思議なことに、モンゴルについても同じことが言えるのである。モンゴル国内では北海道についてモンゴルと気候がもっとも似ていることから、日本の中のモンゴルだと言われている。気候が似ているということはどういうことなのか、そこにはどんな共通点があるだろうか。

 私は北海道に住んで10年目になる。北海道大学に留学したのがきっかけで、北海道にはモンゴルのために参考になる何かが必ずあると思った。大学卒業後は日本の社会をもっと知りたい、北海道とモンゴルの架け橋になりたいと思い、札幌での就職を決意した。仕事内容は北海道とモンゴルを結ぶ、経済交流窓口の開設を担当している。その中で2016年から貿易研修センターと経済産業省北海道経済産業局の協力で実施している「北海道におけるモンゴル国との経済産業連携構築推進事業」に通訳、コーディネーターとして関わってきた。

 このレポートでは、北海道とモンゴルが持つ共通点に焦点を当てながら、本事業2年目となる2017年度の具体的な成果について紹介しつつ、最後に北海道に住むモンゴル人としての視点を述べたい。

モンゴルの首都ウランバートル

モンゴルの首都ウランバートル

北海道とモンゴルをむすぶ2つのミッション

 本事業の活動は大きく分けて2つである。

 一つ目は、9月に実施した北海道からモンゴルへのミッション派遣である。当調査会会長らをモンゴルに派遣し、現地でビジネスフォーラム、ビジネスマッチングなどを開催することにより、経済交流を更に拡大することを目的としている。主要産業が農牧業であるモンゴルにおいて、9月は収穫時期であり、学校も新学期がスタートする時期であるため、都市部では若者の熱気が溢れる。実施にふさわしい時期だ。

ウランバートル中心部

ウランバートル中心部

 もう一つは、モンゴルからのミッション受け入れである。モンゴルから産業振興や経済・貿易等に詳しい有力者を北海道に招き、モンゴルの経済状況や北海道との連携が可能な分野の情報提供を受ける。さらに関係機関・企業等との意見交換や視察を通して、北海道の技術・製品への理解を深めてもらうことを目的としている。こちらは、北海道における寒冷地技術、冬季の観光、雪の有効活用を参考にしてもらえるよう、さっぽろ雪まつりが開催される2月に実施した。

ミッションがきっかけ~北海道とモンゴルの企業同士の連携

 モンゴルへのミッション派遣は昨年に続いて実施され、北海道からは関係機関の他、道内の民間企業も含め、27名が参加した。首都ウランバートルで開催された「モンゴル・北海道ビジネスフォーラム」には現地の行政、経済界から約100名が集まるなど、昨年を上回る人数となり、現地でも大きく報道された。

ビジネスマッチングの様子

ビジネスマッチングの様子

 今回のミッションにおける大きな成果として、北海道とモンゴルの企業間連携がある。その一つが若手建築士の受け入れだ。モンゴルでは冬の間(10月~2月)はどの分野においても作業はほぼ停止してしまうため、北海道における寒冷地技術が注目されている。そうした中で、技術を移転すべく自社の職員を研修生として派遣したいと希望する企業からの要望に対応した形だ。研修生の受け入れは日本語ができることが前提となり、範囲は限られるが、重要な第一歩だと期待している。

若手建築士育成で覚書締結、左:日本都市設計(株) 代表取締役社長 武部 幸紀氏、右:モンゴル建築士協会会長 E.フレルバートル氏

若手建築士育成で覚書締結
左:日本都市設計(株) 代表取締役社長 武部 幸紀氏
右:モンゴル建築士協会会長 E.フレルバートル氏

 もう一つは、モンゴルの経済・ビジネス情報発信に関する報道機関同士の連携である。寒冷地対応技術を始め、IT、観光、環境、人材交流等、モンゴル国内の経済・ビジネス情報を北海道に提供し、北海道建設新聞社は自社の新聞紙面やサイトに掲載し、発信すること等について覚書を交わした。

 北海道を訪れるモンゴル人は、「知り合いがいる」、「大学間の提携があった」など、何らかのつながりがあって訪れる人が多い。観光地としても、留学先としても、北海道はまだ充分にモンゴルで知られていないのである。しかし、北海道はモンゴル人にとって住みやすいなど、寒冷地技術の他にも、モンゴルやモンゴル人に通じる魅力が沢山ある。このような報道機関同士の連携を通して両地域の知名度が上がり、人的交流が盛んになれば非常に有意義であろう。

経済・ビジネス情報発信で覚書締結、左:モーニングニュースペーパー報道会社副社長 Z. ボルギルマー氏、右:(株)北海道建設新聞社 代表取締役社長 荒木 正芳氏

経済・ビジネス情報発信で覚書締結
左:モーニングニュースペーパー報道会社副社長 Z. ボルギルマー氏
右:(株)北海道建設新聞社 代表取締役社長 荒木 正芳氏

モンゴルで始動!新たなプロジェクト

 2016年11月にモンゴル側に設立された調査会の活動も紹介したい。その設立目的は北海道との連携・交流を目指すモンゴル側会員企業のための様々なサポートであるが、モンゴル国内において会員企業同士の連携による共同プロジェクトが生まれつつある。具体的には食肉加工工場とソバ栽培に関する動きである。

 まず食肉加工工場については、北海道の技術と衛生対策を導入した工場をモンゴルに設立するプロジェクトだ。そしてソバ栽培については、ウランバートル近郊にある栽培地で技術提携や投融資、販売チャネル開拓につなげるプロジェクトである。いずれも将来的には国内消費だけでなく輸出も目指している。

ミッション時の食肉加工工場見学の様子(札幌市内)

ミッション時の食肉加工工場見学の様子(札幌市内)

 2月のモンゴルからのミッション受け入れでは、こうしたプロジェクトを念頭に食肉加工工場や製粉工場の視察が実施された。ミッション参加者からは、「徹底した衛生管理の重要性について改めて認識した」、「天然の羊腸の日本への輸出など事業化に向けた具体的な話ができた」、「いつかモンゴル産のジンギスカンを作りたい」などの感想があった。

 北海道の名物料理といえばジンギスカンである。モンゴルで羊肉は主食の一つだが、タレにつけて食べる習慣が実はない。ジンギスカンはモンゴル人からすると普通の焼肉だが、食べてみれば羊肉とタレの相性が抜群で、羊肉の新しい食べ方に驚き、食を通して北海道に親しみを持つモンゴル人は多い。

ウランバートル郊外(テレルジ)

ウランバートル郊外(テレルジ)

入口に立ったばかりの北海道とモンゴルの企業関係

 このように、北海道とモンゴルはその気候が似ていることから人・物・技術など様々なところに多かれ少なかれ共通点がある。その共通点を活かした民間企業同士の「連携・共同」が実現されつつある。それは、本事業を通して様々な取組みが2年にわたり実施され、まさに「百閒は一見に如かず」で、ミッションを通して北海道とモンゴルの企業が双方に実際に足を運び、訪れたからである。

 一方で、これまでの幅広い活動を通してようやく入口に立つことができただけ、といっても過言ではない。言い換えれば、北海道とモンゴルの企業はお互いが持つ寒冷地ならではの共通点を知り、「知人」にはなれた。しかし言うまでもなく、本当の意味での「パートナー」になるためには、今までの取組みを辛抱強く継続していくことが重要である。その際には同じことを繰り返すのではなく「狭くて深い活動」を重ねていく必要があると考える。

 言葉の問題、意思疎通の欠如、温度差などの課題は残されたままであるが、北海道とモンゴルが持つ共通点がより効果的に活かせられれば、いずれも解決されていくであろう。将来的には個々の企業間のビジネスだけでなく環境問題、インフラ整備、人手不足など双方の地域が抱える課題の解決にもつながることを期待している。


usukhbayar-ganbat
執筆者プロフィール
ガンバット ウスフバヤル
北海道モンゴル経済交流促進調査会 事務局次長

1984年 ウランバートル市生まれ。2000年 モンゴル国立科学技術大学外国語学部入学。卒業後、当時のモンゴル国食料農牧業省での秘書業務を経て、2006年 JICA技術協力プロジェクトの職員となり、農業への造詣を深める。 2009年 北海道大学大学院農学院に入学、2016年に博士課程を修了。元自民党幹事長であり、在札幌モンゴル国名誉領事を務める武部勤氏の勧めで、札幌第一興産(株)入社。北海道モンゴル経済交流促進調査会事務局次長。プライベートでは中学時代の同級生と結婚、三児の母である。

関連ページ

■平成29年度国際経済産業交流事業(北海道局)
「北海道におけるモンゴル国との経済産業連携構築推進事業」


■平成29年「アジア有望指導者招聘事業モンゴル招聘事業」


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