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配信日:2010年7月20日

平成21年度ものづくり白書について

経済産業省 製造産業局
政策企画官

川上 一郎


政府では、毎年、「ものづくり基盤技術振興基本法」の規定に基づき、「ものづくり白書」をとりまとめ、閣議決定をした後に、国会に提出を行っております。ものづくり白書においては、我が国ものづくり基盤の現状と課題について幅広く分析を行っております。本稿では、本年6月にとりまとめられた平成21年度ものづくり白書の概要について、御紹介させていただきます。

1.平成21年度ものづくり白書について

 我が国製造業の状況をみると、2008 年秋のいわゆるリーマンショックを契機に発生した世界同時不況に伴い生産が急速に減少した後、2009 年春以降持ち直してきていますが、その水準は依然低く、雇用情勢も総じて厳しい状況が続いています。世界同時不況は、我が国製造業に大きな影響を与えましたが、同時に、世界同時不況は、我が国ものづくり産業にとってグローバルな規模で進んでいる変化、すなわち、先進国市場の成熟化とアジアをはじめとする新興国市場の拡大が顕著となる一方、韓国や中国をはじめとするアジア諸国におけるものづくりの競争力が向上してきているなど、今世紀以降進展していた我が国ものづくり産業を取り巻く環境変化を明確に示したといえます。また、世界同時不況に至る過程において、資源環境制約が経済活動に大きな変化をもたらすことを、世界経済は身をもって体験しました。
 今回のものづくり白書は、このように、内外経済が大きく変化する中でとりまとめられました。そのため、我が国ものづくり産業の現状や直面する課題と展望についても、こうした変化と情勢を踏まえたものとなっています。そうした中で、この白書で一番打ち出したかったメッセージは、「我が国ものづくり産業は、グローバルな規模で進行している変化に対応すべく、事業戦略を再構築していくことが求められている。このような変化への対応は、収益基盤を見直し、構築する上で絶好の機会であると同時に、今後の中期的な成長力を決するという点で重要な意味を持つ。」ということです。
 本白書では、各種統計、アンケート、先進的事例等を通じ、こうした課題への企業の取組状況等について分析しています。

2.平成21年度ものづくり白書のポイント
 それでは、我が国ものづくり産業の現状と課題について分析を行っている第一部各章の主な内容を簡単に御紹介させていただきます。

 まず、第一章では、世界同時不況からの我が国製造業の持ち直しの特徴を分析し、我が国製造業が自律的な回復を図る上での課題について検討するとともに、今回の世界同時不況を乗り越えていくための企業の事業再構築に向けた取組と課題について分析・整理しています。分析の一例として、今般の生産の持ち直しの特徴を分析したのが次のグラフになります。これは、過去の景気回復局面と足下での持ち直し局面における生産動向を業種別の寄与度で比較しています。このグラフを見ただけでも、今回は、経済対策の効果に加えアジアの旺盛な需要に支えられている輸送機械工業の生産増加が我が国の生産を牽引しており、過去の景気回復局面とは大きく状況が異なっていることが理解いただけると思います。この他、本章では、輸出動向や為替変動の影響、企業収益・設備投資・M&Aの動向の他、我が国製造業各社の次なる事業戦略の見直しの状況等についても分析を行っています。

 第二章では、第一節で、我が国ものづくり産業が直面する国際的な構造変化を俯瞰した上で、第二節以降で、「グローバル市場の変化に対応する我が国ものづくり体制」の在り方、「次世代産業を構築していくための取組」、「資源環境制約への対応」を取り上げ、我が国ものづくり企業の取組と課題を示しつつ、ものづくり力をいかして引き続き付加価値を獲得していくための方向性について記述しています。

 世界のマーケットをみると、先進諸国市場の成熟化に対して、新興国市場は人口増加や所得上昇に伴って伸張しシェアを拡大させ、生産拠点から市場としての存在感を増しています。しかし、我が国の輸出の増加は先進国経済の拡大程度に留まっており、世界の成長市場を十分にとらえきれていない状況です。また、中国をはじめとするアジアにおいては、製造技術の組み合わせ型への対応等から世界に占める生産のシェアが拡大傾向にあります。次のグラフは、輸出特化指数というものを用いて各国の中間財の輸出競争力の推移について分析したものですが、日本の競争力が依然強いとされる中間財も、韓国や中国などが次第に競争力をつけ、国際分業が進展する中で産業基盤が高度化しつつあることがわかります。我が国製造業には、こうした競争環境の変化に加え、資源環境制約の一層の高まりや高齢化の進展等の環境変化を踏まえ、グローバル市場で付加価値を獲得していくための事業戦略の再構築が求められています。

グラフ2 中間財の輸出特化指数の推移

 続いて、第二節「グローバル市場の変化に対応する我が国ものづくり体制」の在り方ですが、先ず、これまで日本企業が主たる対象としてきた国内や先進国市場と異なる新興国市場を獲得していくために、市場のニーズに応じた価値と価格の製品を供給する体制を構築することが必要となります。製品開発、応用設計(モデルチェンジ)等の現地化を進める意向は伺えますが、調達や販売網の活用等、現地企業との連携を進めていくことが求められます。一方で、新興国市場における日本企業の主たる競争相手は、台頭の進む中国や韓国・台湾企業ですが、日本企業同士が競合しているという構図も消えていないこともわかります。国内市場と同様に棲み分け等の意識を持った経営戦略が求められるでしょう。我が国製造企業の有する高い技術力を付加価値に結びつけていくためには、自社技術の優位性を確保していくことが求められますが、製品のみならず、従業員や退職者といった人を通じた意図せざる技術流出が依然として多いのもまた事実です。我が国製造業が、引き続き高度な部材・製品の供給基地たるためには、立地競争力を高めるとともに、技術流出防止やすり合わせ力等の国内拠点の強みの発揮のほか、サービス等も含めて収益源の幅を広げる取組、価格競争に陥らないよう製品価値の訴求力を高める等の工夫も欠かせません。
 第三節「次世代産業を構築していくための取組」では、資源・環境問題の高まりや少子高齢化等の構造変化が顕在化させる新たな市場ニーズの変化に柔軟に対応し、新たな雇用と需要を創出する次世代産業を構築していく上で、製造企業にとっては研究開発や企業連携をはじめ、次世代産業で重要となるコア技術を押さえていくための取組が求められます。また、既に諸外国で進められているように、立地支援策をはじめ次世代産業を育成するための諸環境整備も重要となってきます。
 さらに、第四節「資源環境制約への対応」では、資源環境制約の高まりが企業経営に与える影響に加え、これに対する我が国製造業の対応状況を分析するとともに、省エネ・省資源性の向上に係る技術や製品を普及させるための諸課題を整理し、資源環境制約の高まりを背景とした我が国製造業の強みと課題を示しています。
 その他、ここでは詳細については省かせていただきますが、第三章では、依然として厳しい雇用情勢の中での人材育成等の取組について分析するとともに、ものづくり基盤技術の強化の観点から能力開発施策の方向性について記述しています。また、第四章では、我が国の製造業を支える人材育成とイノベーションを生み出す科学技術が重要であるという観点から、社会人・職業人として自立できる人材の育成に向けたキャリア教育・職業教育の取組と、企業だけでは担えない分野を対象とした政府研究機関や大学による研究開発の取組について記述しています。

本白書が皆様の御参考になれば、幸いです。

平成21年度ものづくり白書掲載HP:
http://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2010/index.html


 
 
 

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