最新号 メールマガジンの登録・解除・変更 バックナンバー お問い合わせ

配信日:2010年8月20日

「2010年版エネルギー白書」について

資源エネルギー庁 総合政策課 調査広報室

安冨 万記


本年6月15日、2010年版エネルギー白書が閣議決定・報告されました。
今回は、初の試みとして主要国のエネルギー安全保障を定量的に比較するとともに、再生可能エネルギー導入拡大に向けた各国の取組を紹介しています。

(1)各国のエネルギー安全保障の定量評価による国際比較

エネルギー安全保障とは?
 エネルギー安全保障とは「国民生活、経済・社会活動、国防等に必要な『量』のエネルギーを、受容可能な『価格』で確保できること」と考えられ、その強化のためには、エネルギー自給率等の改善を図ることとともに、エネルギー安全保障を脅かしうる「リスク」を低減することを目指していくことが基本となります。

定量評価の考え方

 下図のようなエネルギーのサプライチェーンを想定し、その各段階について例えば国産・準国産エネルギー資源の開発・利用についてはエネルギー自給率を、海外エネルギー資源の確保についてはエネルギー源及び輸入相手先の多様化等を基軸指標に定め、それらを時系列で数値化し、国際比較を行っています。

我が国の今後のエネルギー安全保障強化に向けた政策の視点は?

 定量評価の結果、日本のエネルギー安全保障の現状はこのレーダーチャートのようになりました。そして、赤い矢印で示すとおり、国産資源に乏しい我が国は、必要量の確保を図るとともに、資源価格上昇、資源ナショナリズムの高揚、新興国の需要急増による需給逼迫リスク等への抵抗力を強化していくことが重要で、そのために以下に示す政策の視点が必要となります。

目指すべきエネルギー安全保証のかたち

1.自主開発権益を含む自主エネルギー比率の向上

 非化石エネルギーを含む国内資源の開発により一次エネルギー自給率の向上を図るとともに、海外自主開発権益を含む自主エネルギー比率の向上を推進します。第一次オイルショック、湾岸戦争の際には、権益を保有しない産油国からの原油輸入量が減少した一方で、権益を保有する産油国からの輸入量は増加した実績もあり、自主エネルギー比率の向上はエネルギー安全保障の強化に資すると考えることができます。

有事における自主開発原油輸入量

2.我が国企業の権益確保に向けたリスクマネー供給支援の推進

 我が国が必要なエネルギー資源量を確保するためには、海外への依存が不可避であり、エネルギー源の多様化、またエネルギー資源の輸入先の多様化により、リスク分散化を図ることが必要になります。輸入先の多様化に際しては、産資源国のカントリーリスクを考慮する必要があります。自主開発権益の確保により輸入先多様化を推進する場合、今後アクセスできる権益が比較的カントリーリスクの高い国・地域に存在するケースが多く、そのリスクを資源開発企業のみで負うことは困難です。したがって、国としてリスクマネー供給支援、貿易保険等によるリスクテイク、あるいは適切なリスク管理体制の整備等を推進することが必要です。

3.チョークポイントリスク低減と備蓄の整備

 我が国はエネルギー資源の海外への依存度が高く、チョークポイントリスクそのものを完全に回避することはできません。そのためにシーレーンの安全確保に向けた国際協力を推進するとともに、有事の海峡封鎖により供給途絶またはエネルギー資源供給の停滞に備えて、石油・天然ガスの国家備蓄を着実に整備しておくことが必要です。

(2)再生可能エネルギーの導入動向と今後の拡大に向けた取組

 1970年代の二度のオイルショック以降、石油から石油代替エネルギーへのシフトが進み、我が国の石油依存度は低減しましたが、石炭や天然ガスも含めた化石燃料への依存度は依然として8割を超える高水準です。こうした中、「エネルギー源の多様化」、「効率性の確保」、「地球温暖化対策への貢献」等の観点から原子力や再生可能エネルギー等の非化石エネルギーの導入促進が急務となっています。

再生可能エネルギーに関する国際的関心の高まりについて
 世界全体の一次エネルギー供給に占める再生可能エネルギーのシェアは拡大傾向にあります。中国、インド等の新興国のエネルギー需要急増、エネルギー資源獲得競争の激化によって化石燃料の価格は上昇しており、そうした影響を受けにくい再生可能エネルギーの需要は今後拡大する見込みです。

1.投資動向について
 化石燃料の価格が高騰し始めた2005年頃より再生可能エネルギー関係の投資額は増加傾向にあります。雇用創出・産業育成等の観点から、各国政府が積極的な財政出動を行っていることが呼び水となり、民間資金の投入も拡大しています。

2.国際動向について
 太陽光、太陽熱、風力等の分野において、先進国をターゲットとした展開が積極化しています。地域別に見ても、欧米諸国では近年活発な投資が行われており、再生可能エネルギーの注目が高まっているといえます。我が国企業も、技術力の強みを活かして、海外企業との合併や事業運営の取組が進展しています。電力会社、商社、メーカー等が海外発電事業に参加する形態も増加しています。

<我が国企業による展開の例>(pdfPDF:148KB

再生可能エネルギーの導入動向について
 我が国では再生可能エネルギーの導入が進んでおり、導入実績や将来見通しは主要各国に比べて遜色ないと考えられます。一方、その導入には、出力の不安定性やコスト高、立地制約といった課題が常に存在しており、こうした実態を踏まえて導入拡大に向けた対策を講じていくことが重要となります。

 主要国においても、地理や気候の違い、資源保有・利用状況、社会経済規模等の条件により、導入形態やポテンシャルは大きく異なっています。こうした条件や再生可能エネルギーの特性を踏まえた導入推進が重要になってきます。

 世界の主要国における再生可能エネルギーの導入促進施策は、主に以下の2つに大別されます。

1.RPS制度
量による規制:電気事業者に一定量以上の再生可能エネルギーの利用を義務づけ

2.固定価格買取制度
価格による規制:電気事業者に一定の価格での再生可能エネルギーの買取を義務付け

 これら2つの制度について、IEAは「既存電源との価格差が少ない技術については、RPSが適していて、太陽光発電等の既存電源との価格差が大きい技術は補助金、固定価格買取制度が適している」としています。

我が国の再生可能エネルギー導入拡大に向けた新たな政策展開について

 今後の導入飛躍のための制度的対応としては、各エネルギー源の特性に合わせ、規制、支援等の有効な施策を講じる必要があり、以下の視点が重要です。

1.我が国の実情に応じた固定価格買取制度の実施
 太陽光普及のため、太陽光発電の余剰電力買取制度を開始(2009年11月)。
全量買取制度については、本年7月に開催された「再生可能エネルギーの全量買取に関するプロジェクトチーム第5回会合」において具体的な制度イメージを決定。
 今後それに基づき詳細な制度設計を進めていく予定。

2.次世代・エネルギー社会システムの構築
 再生可能エネルギー導入拡大に伴う電力系統対策や需要サイドのエネルギーマネジメント。

3.地理的条件等を踏まえた制約条件の緩和
 例えば、自然公園への風力発電の導入拡大など制度・社会的課題の解決。

 今回のエネルギー白書では、上述のとおり、我が国の今後の資源・エネルギー政策の方向性の基盤となる重要な調査・分析を行いました。我が国を取り巻くエネルギー情勢や今後のエネルギー政策の方向性等について少しでもご理解いただけましたら幸いです。


 
 
 

〒105-0001
東京都港区虎ノ門1丁目1番20号 虎ノ門実業会館2階 一般財団法人 貿易研修センター
TEL:03-3503-6621
FAX:03-3501-0550
E-mail:iist-emg@iist.or.jp