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配信日:2010年8月20日

「日本発・新空調システム「ネオホワイト(CHS)」で国境を越えた省エネを目指して」
JFEエンジニアリング(株) 新空調システム事業部 部長代理(海外事業統括)原 直樹氏 インタビュー

地球温暖化対策として、省エネルギーは世界的に急務の課題です。JFEエンジニアリングが実用化した新空調システムは、その優れた省エネ性により、CO2排出削減に貢献すると国内外から大きな注目を集めています。その開発の経緯や、特徴、今後の展開について伺いました。

JFEエンジニアリング(株)プロフィール

エネルギー・環境関連設備や、鋼製構造物、産業機械設備などの設計・建設を行う、JFEグループの総合エンジニアリング企業。空調冷水温度域(7~8℃)で、冷水の2〜3倍の冷熱密度を持ち、潜熱蓄熱可能であり、流動性にも優れている新しい冷熱媒体「ネオホワイト(水和物スラリ)CHS(Clathrate Hydrate Slurry)」を用いた蓄冷空調システムを、NEDO((独)新エネルギー・産業技術総合開発機構)と共同開発。冷熱を大量消費する産業でのコスト低減、電気事業会社における負荷平準化など、省エネ事業の発展に寄与している。


─はじめに、御社の活動内容は、鋼構造物分野から環境・エネルギー分野まで非常に多岐に及んでいますが、総合エンジニアリング企業として発展された背景を教えてください。
原:
 わが社はもともと、鉄鋼と造船の技術をルーツに持つ会社で、パイプライン、プラント、橋梁など、社会インフラ整備に貢献する事業を行ってきました。戦後日本の高度経済成長期に合わせて国内外での事業を進めてきましたが、いまや公共事業が減り、国内需要が落ち込む中、今後はこれまで培ってきた技術に加え、わが社が保有する日本最先端の廃棄物リサイクルや省エネルギー技術なども時代のニーズと変化に合わせて、積極的に海外事業展開を推進していきたいと考えております。
 特に、JFEグループのような重厚長大産業は、様々な商品を生産する過程で多くのCO2を排出します。企業の責任として、CO2排出削減のため省エネ技術を磨いていき、地域社会に貢献していく中で、ネオホワイト(水和物スラリ)技術も生まれてきました。

──その水和物スラリを活用した「ネオホワイト蓄冷空調システム」を開発するに至るきっかけは何でしたか。
原:
 もともと製鉄所内で利用する冷熱媒体を研究することが発端でした。工場内には冷水などの冷熱を利用する多くの設備があります。その中で大きな冷熱を運べる冷熱媒体があれば搬送エネルギーの削減に有効ということは古くから認識されていました。これに対して、わが社では1996年に大きな冷熱を持つ化学物質の文献調査から始め、1997年からNEDOと水和物スラリの基礎研究を開始し、2000年から実用化研究を経て、2004年にTBAB (tetra-n-butylammonium bromide)を利用した「ネオホワイト蓄冷空調システムCHS」の初号機開発・事業化に成功しました。

──「ネオホワイト蓄冷空調システム」の特徴や環境面での影響について教えてください。
原:
 (財)省エネルギーセンターの調査によると、空調設備にかかるエネルギー消費は、ビル全体の37〜49%を占めていると言われています。空調分野のエネルギー削減は、エネルギー全体量の削減に大きく寄与するというのがまず1点目にあります。
 2つ目に、空調用消費電力は、日中の12時から2時のあたりにピークが訪れます。発電設備はピークに合わせて建設されますので、ピークを削れば設備容量を小さくでき、かつ、稼働効率を高めることができます。これは電力の負荷平準化といわれています。この負荷平準化と省エネ・省CO2化に貢献するというのが、このネオホワイト蓄冷空調システム(CHS)の主目的です。
 ガスや水は、ためておくことができます。一方、電気の場合も、蓄電池や揚水発電等のためる技術がありますが、電気そのものを安価にためることが難しいため、冷水や温水でためる技術が普及しています。ネオホワイト蓄冷空調システムCHSは、水和物スラリという熱媒体を使って、夜間の動力で熱媒体を冷やしてためておき、ためておいた水和物スラリの冷熱を昼間に放出するというコンセプトです。昼間のピークに合わせてエネルギーを消費していく場合、ピーク出力をピークに合わせて大きく変動させる必要がありますが、夜間にためておくということは、夜間にはただためていけば良いので、冷凍機を高効率で一定の運転をすることができ、省エネが図れます。さらに、安価な夜間電力を有効利用できるのも魅力的です。

──その新しいシステムが実用化に至るまで、どのようなご苦労がありましたか。
原:
 これには営業面と技術面がありますが、ここでは営業面についてお話します。
これは世界初の技術ですので、まずはお客様に安心してお使いいただけることを説明するところから始めなくてはなりません。このため、まず自社ビルに全面的に導入し、実際に使いながら多くの方に見て頂き、ご説明申し上げてきました。
 また、省エネという言葉や概念は各国様々で、単品の技術だけの説明に留まらずに、無駄を省くことがいかに得かという、いわば「啓蒙活動」も必要でした。例えば、ビルの施設維持費が減ることによるメリットや、CO2削減効果は当然として、CSRのPR等、数字で表れないメリットなどを説明する必要がありました。ただし、数字で表れないところは、説得力を持たせるのが非常に困難でした。

──同空調システム導入の代表例は、川崎市アゼリア商店街(川崎駅地下街「アゼリア」)ですが、この他、どのようなところで導入されていますか。
原:
 オフィスビルや工場内のオフィス棟が多く、特に工場は省エネ法改正に伴い、第二種指定工場(燃料等(熱)の年度使用量が原油換算1,500kl以上、又は電気の年度使用量が600万kWh以上の工場・事業場)には省エネ義務が発生しますので、出来る分野からの省エネ着手は進みつつあると考えております。最近の例では、国内ではイトーヨーカ堂上大岡店、海外ではタイのバンコク郊外でEGAT(タイ発電公社)への導入があります。後者はNEDOの国際モデル事業の一環として進めており、来年の5月に完工して運転を開始する予定です。東南アジアでは、タイを始めとし、シンガポール、マレーシア、インドネシア等、これからどんどん普及を進めていきたいと考えています。また、アメリカでは西海岸、カリフォルニアを中心として、この省エネ技術を広めていきたいと思っています。カリフォルニアは電力の需給が逼迫しており、昼間と夜の電力単価の差が大きく開いているので、ネオホワイト蓄冷空調システムCHSが活かせるのではないかと考えております。

──今後、御社の省エネ技術を世界でどのように展開していきたいですか。
原:
 基本的には、単体の技術であれば類似技術はたくさんありますが、複数の省エネ技術をパッケージにすると活きてくるという考え方で進めたいと思っています。
 例えば、ネオホワイトは、水に比べて冷熱密度が2〜3倍あるために、ためておくスペースを単なる冷水に比べ半分以上節約できます。そのスペースに別の省エネ技術の置場を確保して、複合的なパッケージにすることができます。
 省エネは効果が見えにくいため、関心を高めるのに工夫が必要です。ネオホワイトで夜間に蓄熱したものを昼間に最適なタイミングで放出することや、その他のパッケージ技術を「見える化」して、常時一般の来訪者やビル利用者にも分かりやすく伝えることを提案していくようなことも考えております。
 最後に、私がこの仕事を進める上でモットーとしているのが、「省エネ事業に国境はない」ということです。それは、日本の優れた技術を普及させるのに国を問わないということだけではありません。それぞれの国にはユニークで、その国ならではの省エネに対する工夫があります。いろいろな国の技術や工夫を交換して、時には一緒に展開してみるのも面白いと思います。なぜなら、環境対策は地球全体の重要なアジェンダですから。

──まさに技術も国境がないということですね。ありがとうございました。
 
 
 

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