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配信日:2010年8月20日

「2010年日本APECエネルギー大臣会合」について −エネルギー安全保障に向けた低炭素化対策に関する福井宣言−

資源エネルギー庁 国際課
地域協力推進一係長

枝 礼子


6月19日、福井にて「2010年日本APECエネルギー大臣会合」が開催されました。(1)エネルギー安全保障、(2)排出削減、(3)経済成長の3つを同時達成するようなエネルギー需給構造の将来像について議論を行い、福井宣言を採択しました。

1.「2010年日本APECエネルギー大臣会合」の開催
 今年、我が国は1995年APEC大阪会合以来、15年振りにAPEC議長を務めています。日本各地でAPEC関連会合が開催される中、6月19日、福井県にて、直嶋正行経済産業大臣の議長の下、APECエネルギー大臣会合が開催されました。福井県で初となる大型国際会議の開催ということもあり、大きく注目されました。
 この会議は、世界で最もエネルギー需要の増加が見込まれているアジア太平洋地域のエネルギー政策担当大臣が一堂に会する会議です。1996年開催の第1回シドニー(オーストラリア)会合以降、通常2年ごとに開催されてきましたが、これまで多くの実績をあげ、今回で9回目を迎えました。
 6月20日には、関連行事として、希望する出席閣僚の参加を得て、「もんじゅ」の見学及び次世代自動車の試乗会が実施されました。

2010年日本APECエネルギー大臣会合出席閣僚による記念撮影
(2010年日本APECエネルギー大臣会合出席閣僚による記念撮影)

2.3つのEと福井宣言
会合では、エネルギー安全保障(Energy Security)、地球環境問題(Environment)及び経済成長(Economic Growth)という3Eを同時に解決する方策について議論され、「エネルギー安全保障に向けた低炭素化対策に関する福井宣言」が取りまとめられました。以下、会合の主要な成果についてご紹介します。

エネルギー大臣が署名した福井宣言を手にする直嶋大臣
(エネルギー大臣が署名した福井宣言を手にする直嶋大臣)

3.エネルギー安全保障
 APECは、世界の6割のエネルギーを消費していながら、IEA(国際エネルギー機関)のような堅固な緊急時対応のメカニズムを持っていませんでした。そこで、IEAと協力しながら石油供給途絶等の緊急時対応の能力を増強することとしました。具体的には、IEAが毎年行っている緊急時対応訓練をAPECでも行うことに合意しました。すべてのエコノミーが参加を表明したのは大きな前進です。
 また、我々が経験した昨今の油価高騰を踏まえれば、エネルギー需給の緩和もエネルギー安全保障上の大きな論点であり、非在来型天然ガスのポテンシャルが注目されました。

4.省エネルギー
 APEC地域全体で2030年までにエネルギー効率を25%向上させるという省エネ目標に関し、その深堀りの検討に着手することに合意いたしました。また、昨年来、我が国は、各エコノミーの省エネ目標・行動計画を相互審査するPREE(Peer Review on Energy Efficiency)制度を主導していますが、本会合ではその成功を確認するとともに、その継続・拡充に合意いたしました。
 個別分野では、特にビルに係る省エネ機器の貿易促進のための標準及び性能評価に関する調査を実施することに合意しました。
 また、APEC地域における化石燃料、特に石炭の重要性に鑑みれば、そのクリーンかつ効率的な利用は我々の避けられない課題です。そのような観点から、いわゆる「クリーン・コール・テクノロジー」を推進するため、「石炭クリーン利用のためのイニシアティブ」を策定することに合意しました。

5.クリーン・エネルギー
 再生可能エネルギー(太陽光、風力、地熱、バイオ燃料)、原子力及びCCS(二酸化炭素回収貯留)を「排出ゼロ」という観点から、ゼロ・エミッション・エネルギーとして導入を促進することに合意しました。そのための協力事業として、直嶋大臣から、各エコノミーがゼロ・エミッション・エネルギーの導入目標及び行動計画を策定する制度の導入が提案され、合意を得ました。特に、原子力発電については、その排出削減ポテンシャルの調査の実施が合意されるとともに、新規発電所立地のためのファイナンスの重要性が確認されました。

6.APEC低炭素モデル都市プロジェクト
 都市という面的な広がりで低炭素技術を統合的に導入することを目指す「APEC低炭素都市モデルプロジェクト」を実施することを直嶋大臣が提案し、合意を得ました。今後3年程度の間に、我が国はAPECに対して10億円の拠出を行い、10〜20カ所程度を対象に、都市の低炭素化のためのFS事業を行うこととしています。中国からは第一号案件として、天津でのFS事業が提案されました。
 今回拠出することとした基金を活用する事により、地域の低炭素化が促進され、エネルギー安全保障に資することを期待しています。

(我が国の低炭素基金の拠出に係る覚書をAPEC事務局と交換)

7.我々が直面している課題
 我々は、地球環境問題の高まりと、世界全体の経済の停滞のなかで、エネルギー安全保障を確保していくという困難な課題にチャレンジしていかなければなりません。これら3Eは、必ずしも整合的であるわけではありません。地球環境問題のために二酸化炭素を削減するためには、ある程度の経済成長を犠牲にしなければならない場合があります。また、石炭はエネルギー安全保障の観点からは高く評価されますが、二酸化炭素削減の観点からは悪者です。いかに3Eを同時に達成し、持続的な安定成長を図っていくか、という課題に我々は直面しています。福井宣言では、APECにおける協力という枠組みの中での、具体的な筋道が示されたと考えています。本会合の成果が、本年11月に横浜で開催されるAPEC閣僚・首脳会議に向けて議論されているAPEC成長戦略の重要なインプットとなることを期待しています。


 
 
 

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