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配信日:2010年9月21日

「資生堂が体現する、成功する中国ビジネスへの軌跡と取組み」
株式会社資生堂 技術企画部海外技術企画室長 高橋 理佳 氏インタビュー


長期低迷する日本経済からの脱却に向けて、新興国市場の獲得は大きなカギを握っています。躍進する中国経済の下、ビジネスの成功に向けた熾烈な競争が繰り広げられる中、ブランド価値を確立し、2ケタ成長を遂げる資生堂。現在、中国の化粧人口は1億人といわれ、2015年には2億人、20年に4億人と大幅な増加予想も出ています。そこで、今後さらなる成長が期待される資生堂の中国でのビジネス展開について、資生堂の研究開発を中心に人材育成等を交えお聞きしました。

資生堂・中国事業概略

日本国内第1位の化粧品メーカー。1872年東京・銀座に「資生堂薬局」として創業。1897年化粧品業界に進出、化粧水販売を開始。1981年に中国でのビジネスを開始。91年、北京に「資生堂麗源化粧品有限公司」を設立し合弁事業をスタートさせる。中国の高成長に伴う化粧品市場の拡大で、現在中国での売上高700億円、近年は毎年2ケタ成長を続け、仏ロレアル、米P&Gとのシェアを争う中国のトップブランドとなっている。


― 中国を早くから販売市場としてとらえてきたことについてお聞かせください。
株式会社資生堂 技術企画部海外技術企画室長 高橋 理佳 氏高橋:まず、資生堂の創業は西洋薬局でしたが、その社名は中国の『易経』という古文書から取ったものなのです。「大地の徳はなんと素晴らしいことか。万物はここから生まれる」という句から、あらゆるものを融合させて新しい価値を創造したいという創業者の思いを込めた社名が「資生堂」です。
 そのような経緯もあり、中国の方のために中国で事業を始めたいとの思いから、1981年に北京の高級ホテルの限られた場所で、化粧品60品程の規模で輸入販売を実験的にスタートさせました。その後、北京市傘下の工場で9年間にわたり生産技術協力を行い、その結果、現地で製品を生産する化粧品ブランド「華姿(ファーツー)」が誕生しました。
 そして、91年には北京市の北京麗源公司との合弁会社で、販売と生産をする製販一体の「資生堂麗源化粧品有限公司」(以下SLC)を設立し、その後94年に中国の専用ブランドである「AUPRES オプレ」を発売しました。
 資生堂が非常に特徴的なのは、現地法人を設立する前から10年間にわたり生産技術協力を現地工場において行ってきたということ、91年から始めた中国人の肌研究を基礎にオプレを開発したことです。長期間でのこのようなアプローチは、たぶん欧米他社とはまったく異なるアプローチではないかと思います。

― そういった中で、御社の中国での研究拠点である中国リサーチセンターは、どのような役割を担っているのでしょうか。
高橋: 中国リサーチセンターは北京にありますが、中国には実は四つの拠点があります。一つは、最初に建てた製販一体の合弁会社であるSLCですが、もう一つ、中国における生産拠点のひとつである子会社「上海卓多姿中信化粧品有限公司(SZC)」の工場が上海にあります。研究拠点が一つと工場が二つあるわけです。また、2003年にはそれらの親会社といえる100%出資のホールディングカンパニー「資生堂(中国)投資有限公司」( 以下SCH)を上海に設立しました。
 中国リサーチセンター設立当初の主な目的は、中医学や漢方などの中国独特の素材や技術を研究することでした。それをグローバルに活用して製品を作ろうということが当初の目的だったのです。日本で販売しているブランド「シノアドア」は、その実例です。
 ただ、その後の中国の経済発展などの情勢の変化に伴い、中国向けの専用ブランド製品の開発へとその目的が変化していきました。現在はむしろ中国ビジネスのための、中国国内のブランドの製品開発へと軸足はかなり移っています。 
 また、今の中国リサーチセンターは、製品の処方開発のみでなく、中国人の肌の研究、化粧の嗜好性の研究等とともに、いくら中身がよくても、それをわかりやすくお客様に伝えないと、お客様には理解していただけない。そういうものをソフト情報と私たちは呼んでいるのですが、そのソフト情報の開発などが中国リサーチセンターのメイン機能です。

― リサーチセンターの規模はどのくらいのものですか。また、人材育成、人材確保という点をお聞かせください。
高橋:現在、スタッフは30人弱でその大部分は女性です。日本人はトップと次の部長クラスの男性3名、その下のグループリーダーは全員が現地の中国人です。将来的には、徐々に現地化する予定で、今後は部長クラスの幹部社員への登用も考えています。人材確保の面では、技術系かつ日本語のできる人材を探すのには大変苦労しました。現在、研究員の半分以上は日本語を話します。現地スタッフと日本語でコミュニケーションできることも、少なからず製品開発する上で役立っていると思います。
 資生堂が中国で非常に信頼される企業になっているのは、欧米メーカーとは異なる日本の文化や資生堂がもつ独特の文化的なものが評価されて、信頼感につながっているのだと思います。当社が培ってきた「おもてなしの心」を中国人スタッフに理解してもらうところが大事であり、「企業文化」を中国の皆さんに知っていただくことが重要です。そういう意味で、人材育成は中国事業ではとても重要です。リサーチセンターに限って言えば、日中間の研究所では人的交流なども実施し、資生堂の文化の浸透や技術向上等に役立てています。
 さらに人材育成では、リサーチセンター以外でも、営業とかBC(ビューティーコンサルタント/美容部員)への教育を熱心に行っています。現場の第一線である店頭に出て行くBCの人たちに、十分に資生堂のおもてなしの心をわかっていただくよう教育し、営業についても資生堂流を指導しています。人材育成には大変力を入れていて、08年には上海に研修センターを開設し、そこで社員、販売員、取引先のチェーンストアの方を対象にした教育も行っています。
 離職率は、日本ほど低くはありませんが、現地の方がブランドイメージのある当社で働くことへの誇りが、離職率を低くするには一番大きいのではないかという感じがします。

― 中国での今後に向けた戦略についてはいかがでしょうか。欧米メーカーとの競合などはいかがですか。
高橋:販売戦略については、基本的に日本と同じで、中国でもチャネル別のブランドマーケティングをやっています。たとえば最初の「オプレ」でのデパートビジネスはどちらかと言うとプレステージ層を中心にしてやっています。ミドル&マス層では、大きく分けて専門店とスーパーやドラッグストアなどのオープンチャネルがあります。また、薬局で取り扱う薬粧ブランドでは「DQ(ディーキュー)」を展開しています。
 当社ではこのようにチャンネル別に多くの製品ブランドを持っているので、それを最適に配置し、資生堂グループとして、その総力をどうやって発揮していくのかが、今後の成長のキーファクターになると考えています。
 また、当社は「ハイ・イメージ」「ハイ・クオリティ」「ハイ・サービス」を「3高」と呼び、長年にわたり中国でブランドイメージを確立してきました。この高ブランドイメージを武器に、資生堂流のおもてなしの心に基づいた高品質製品を提供することが、欧米メーカーとの差別化になっているかと思います。
 今の中国の化粧品市場ではロレアルと資生堂がシェアを争っている状況ではありますが、中国の地場メーカーも増え、競争は激化しています。また、その中で、中国政府が製品の安全性や原料の品質などの規制を強化しています。それに伴い、事前許可制の販売制度をもつ中国において、申請許可の審査が非常に厳しくなっており、事業展開にも少なからぬ影響があります。

 

― 御社はCSR活動も盛んと伺っていますが。
高橋:資生堂の場合、海外進出での基本理念が三つあります。一つは資生堂が持つオリジナリティを大切にすること。それから進出国、現地でのリソースを最大限に活用すること。3番目として、ビジネスオンリーではなくて、良き企業市民を目指して現地に根付く活動を忘れないこと。この三つを基本理念としてやっています。CSR活動はそれに沿ったもので、経済的な価値だけではなく、社会的な存在意義も高めていくとの事でCSR活動にはかなり力は入れています。
 具体的には、美容基礎情報が載った小冊子を発行したり、あるいは美容講座の開催をお手伝いしたり、皮膚疾患をお持ちの方のための化粧品づくりや美容技術の普及なども行っています。09年4月にはそのためのライフクオリティービューティセンターを上海に開設しました。
 また、文化的な活動としては、上海万博への協賛や、上海美術館での企画展なども開催しました。

―今後のビジネス展開についてお聞かせください。
高橋:今後は中国市場で大きな購買力をもつ若い人をどう取り込んでいくかが問題だと思っています。20代、30代前半の経済力のある若者をどう取り込んでいくかが、中国ビジネスでの成長のカギを握ると思います。
 また、アジア人とひとくくりで言っても、肌は多種多様です。アジア人の肌を一番良く知っているのは資生堂の強みであり、アジア人の肌のエキスパートを自負しています。多様な気候風土や民族を抱えた中国での経験がアジアでのビジネス展開にも生きてくるものと思います。

―お忙しいところをありがとうございました。
 
 
 

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