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配信日:2010年9月21日

調和とバランス
国際教育者招聘プログラム ( IEJ2010 )

ビーチビュー小学校
校長

シャロン クーパー


(財)貿易研修センターは、海外進出日系企業の駐在員子女を教えている教師を対象とし、日本の教育制度や文化について理解を深めてもらうため、国際教育者招聘プログラムを2010年6月27日から7月8日にかけて行いました。この度、アメリカミシガン州から参加されたシャロン・クーパー校長先生から、所感をご寄稿いただきました。

 「Fantastic!」「素晴らしい!」この驚くべきInternational Educators to Japan Program(IEJ:国際教育者招聘プログラム)を形容するにふさわしい最上級の賛辞はどの国の言葉にも決して多くは存在しないでしょう!細部にわたって注意深く念入りに計画されたプログラムが気遣いあるプロの方々の手によって実施され、日本人の温かいホスピタリティーや配慮に支えられて成功裏に終わり、IEJ 2010参加者は日本の教育システムや文化について理解を深めることができました。私達の日程は多くの様々な体験に満ちていましたが、どこにいても調和とバランスという一貫したテーマを感じることができました。

 私達は、3つの市の小学校・中学校・高等学校でビジターとして歓迎を受けました。各校で教職員の皆さんが積極的に生徒の学習に関わっている姿からは、学校への誇りが感じられました。東京の立会小学校では担当教員が水泳の授業を教え、アメリカのジャズ演奏もされた歓迎コンサートでは校長先生が自らスクール・バンドを指揮し、保護者は楽器のセッティングを担当していました。生徒は班ごとに協力してクラス活動にあたり、給食の準備、ゲームの運営、校舎の清掃などをしていました。私達が東京、ホームステイの実施された豊田市、そして美しい京都で訪問したすべての公立・私立学校で、生徒に向けた個々の高い達成目標が学校コミュニティーへの共同責任と調和し、全体としてのバランスが保たれていたと思います。
 
 日米の教育システムには構造上いくらかの違いがありますが、お会いした日本の教育者たちとは共通点が多く見受けられました。立会小学校の星野校長先生が、自らの学校理念について、生徒たちには学習する楽しみを覚えつつ必要なスキルを身に付けてほしいというアメリカの教育者と同様の生徒への期待を語っておられました。
 日本の学級での模擬レッスンは貴重な教育体験でした。私はほんの少しばかりの日本語を交えながら英語で授業を行い、コミュニケーションの助けになるよう視覚教材やジェスチャーを活用しました。英語圏の学校で学ぶ日本人生徒がいかに不安な思いをしているかを痛感した今、勤務校の日本人生徒がよりスムーズに言葉の壁を乗り越えられるよう、この新たな認識を役立てたいと思います。海を隔てて遠く離れた存在のIEJ参加者と日本の先生方でしたが、私達はある共通の認識で結ばれていました。教職の最大の喜びは、生徒と信頼関係を築き、彼らが新たな概念を理解する “Ah-ha” moment(「わかった!」という瞬間)を経験することである、というものです。生徒達には世界共通の理解の絆が感じられます。光り輝く好奇心、不思議に思う心、学びへの意欲、そして心地よい微笑みに国境はありません!

立会小学校でデモレッスンを行うSharon先生
立会小学校でデモレッスンを行うSharon先生

 プログラムのハイライトはホームステイで日本人家庭に招かれたことでした。私の受け入れ先であった豊田市の家族はホスピタリティーにあふれていて、滞在が快適で思い出深いものとなるよう様々な気遣いをしてくれました。心尽くしの料理も沢山ご馳走になりました。アメリカの若い世代の家庭同様、忙しいながらも、学業、様々な活動、家族と過ごす時間のバランスを取っていました。私達は写真を見せ合い、犬を連れて散歩に出かけ、授業やドッジボールの練習のために学校に足を運んだりしました。私は日本語がほとんどわかりませんでしたが、ホストファミリーはアメリカで3年間暮らした経験があり、いくらか英語を話せたので互いの意思疎通には差し支えありませんでした。伝統的な寿司でもてなされたステイ初日の夜から最後に一緒に写真を撮るまで、時は瞬く間に過ぎました。
 
 文化や歴史についてさらに学ぼうとIEJ参加者達は多くの神社仏閣を訪れ、又、日本企業も見学しました。国の歴史や伝統的価値観が尊重されていることは、旅を通じて手に取るようにわかりました。東京の浅草、豊田市の松平、広島近郊の宮島、京都の金閣寺や清水寺を訪れた私達は、神社や寺院で人々が手水を口に含んだり、お香を浴びる風景を目にしました。
 
 日本企業についてさらに学ぶため、私達は東京の鈴乃屋を訪問し、着物着付け体験という記念すべき貴重な機会を得ました。 小泉会長が、伝統的価値観の調和と尊重、又、大きな近代都市というものの影響について例を挙げて説明してくださいました。夏の旅を通じて、私達は多くの人が浴衣を着たり、宗教的伝統を祝ったり、最新のファッションに身を包んで友人と陽気に浮かれ騒ぐ姿を目にしました。トヨタの工場では、複雑で洗練されたロボット操作による組み立て作業を見学することができました。作業は、従業員の生産の効率性に寄与すべく配慮のなされたものでした。昨今の厳しい経済情勢によって、トヨタからデトロイトに至るまで自動車産業は変化を余儀なくされています。競争本位の排他的な労働環境ではなく、協力的で信頼に満ちたスピリットを従業員間で育むことが求められているのです。テクノロジー・エコロジー・ヒューマニティーとの調和というテーマは、京都で訪れた京セラでも見て取れました。 京セラは、成功は科学的発展と人の精神の向上とのバランスによってもたらされるという基本的教義を掲げる、ファインセラミックスで有名な企業です。

鈴乃屋での着付け体験
鈴乃屋での着付け体験

 私達の最も貴重な体験の一つは、広島の原爆ドーム、平和記念公園及び資料館の見学でした。勤務校から生徒達による平和へのメッセージが書かれた折り鶴を持参していた私は、世界各国から贈られた折り鶴のそばにそれを並べました。松尾さんという被爆者の方が、科学的進歩と人間性尊重との調和を維持することの大切さについて私達に語ってくれました。メッセージの中で松尾氏は、平和や相互理解を実現する方法は友人を一人ずつ増やしていくことですよ、と力を込めました。彼は異文化をつなぐ教育者である私達に、できるだけ多くの友人、とりわけ異文化圏の友人を作るよう生徒達に勧めなさい、と促しました。私達は友情を通じて理解し合い、協力関係を築いていきます。IEJ 2010の参加者は北アメリカやヨーロッパから参加していますが、今では日本の人々とのつながりができました。参加者は様々な経験や出来事を共有し、友情を育み、互いに家族のように接しました。アメリカの文化人類学者Margaret Mead(マーガレット・ミード)は次のように述べています。「熱意を持った少数の人間が集まれば世界は変えられるということを決して疑ってはならない。実際、それ以外の方法で世界が変わった例はない。」

原爆の子の像の前にて  

原爆の子の像の前にて
デトロイトの生徒たちが作成した折鶴をもって

 この素晴らしいIEJ プログラムを終えた今、 日本で得たバランスと調和についての新しい知識や理解を生かし、アメリカで学ぶ日本人生徒の力になりたいと思います。 又、全世界に平和や相互理解を広めるための友人作りに積極的に取り組むことを生徒や自分自身に課すという、広島で与えられた課題にも挑戦していくつもりです。

(原文:英語)


 
 
 

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