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配信日:2010年10月20日

海外“水ビジネス”における経済産業省の取組と展望

経済産業省 製造産業局 水ビジネス・国際インフラシステム推進室
室長補佐

佐藤 孝一


世界的に水ビジネス市場が急拡大している現状を踏まえ、経済産業省は、「水ビジネス国際展開研究会」を開催し、本年4月に報告書を取りまとめた。今後の取組とともにポイントを説明する。

 世界的な「水問題への関心の高まり」に呼応し、「水ビジネス」が急拡大している現状を踏まえ、我が国水関連産業が有する高度な技術と経験を有効に活用した水ビジネスの国際展開を推進し、我が国は世界の水問題の解決に向けた積極的な役割を担うことが期待されている。
 こうした背景から、平成21年7月、経済産業省は我が国水関連産業の国際展開を支援するための専属部署として、製造産業局に「水ビジネス・国際インフラシステム推進室」を設置した。また、同年10月には「水ビジネス国際展開研究会(座長:伊丹敬之東京理科大学大学院教授)」を開催し、平成22年4月に我が国水関連産業が国際展開していく上での課題及び具体的な方策等を掲げた報告書を取りまとめた。
 本報告書のポイントは3つある。
 1つ目は、水ビジネス市場の大宗は砂で濾して薬品を投与するだけの伝統的な水処理技術に立脚した水事業であること。つまり、今後、水事業への参加を拡大するには、事業リスクを適切に判断し、プライム・コントラクターとして事業権を確保することが鍵となる。一方、我が国企業が優位な水処理機器・技術の活用が期待できる分野は、今後急速に成長することが見込まれるものの、現時点では市場全体に占める規模は小さい。今後の新興国企業の台頭による厳しい国際競争にさらされることも踏まえれば、この分野での成功には、将来的なニーズに対応したコア技術を握り、これらの技術についてライフサイクルの観点から従来型の技術と比較して遜色ないコストを実現する等の対応が求められる。
 2つ目は、スエズ、ヴェオリアに代表される欧州水メジャーが市場に占める割合は、2001年の7割をピークとしに減少傾向にあること。これは、市場の太宗において企業が技術等によって差別化を図ることが困難になってきており、シンガポール、韓国等の新興国企業や現地企業が相手国の実情に見合った提案力や価格競争力で欧州水メジャーを上回り受注を増加させていることが要因と考えられる。
 3つ目は、我が国水事業は長らく公営事業とされてきた背景から、我が国企業には運営・管理技術・ノウハウの蓄積がないこと。我が国企業は、海水を淡水化する水処理膜に代表される水処理機器、漏水管理・耐震化に代表される水処理技術の分野において、他国に優位な機器・技術を有していることは確かではあるが、水ビジネス分野で最もバリューチェーンが大きいとされる運営・管理の分野では素人同然であり、「和製水メジャー(日本企業群)」を単に構築するだけでは、国際入札市場において、応札する資格がない。
 地産地消とされる水ビジネス市場において、我が国企業が優位な地位を築くためには、運営・管理実績・経験を有する海外企業とのジョイントベンチャー又はM&A、国内地方自治体と協業して事業を受託するなど、我が国民間企業に同実績・経験を移転することが不可欠となっている。また、技術の押し売りではなく、相手国の実情・ニーズに応じて、必要となる要素技術を柔軟に組み合わせた水循環モデルの提案を行っていくことが重要となっている。
 本報告書の取りまとめを契機として、総務省は地方自治体水道事業の海外展開検討チームを発足し、今年5月、地方自治体の海外展開を地方公営企業法上の附帯事業として位置づけたほか、海外展開する第三セクターへの職員派遣スキームを整理した。また、政府は、平成22年6月に閣議決定した新成長戦略において、日本の技術・経験をアジアの持続可能な成長のエンジンとして活用し、水インフラ整備支援に官民あげて取り組むことを掲げるとともに、長年縦割り行政だと批判されてきた関係省庁が一体となり、今年7月に海外水インフラPPP協議会を発足し、官民の情報共有を目的としたプラットフォームも構築してきている。また、民間ベースでは、新興国の水処理企業と連携して他国の水処理事業への参入する取組や、産業革新機構や地方自治体と連携して他国の水処理企業を買収する取組など、一部の積極的な民間企業を中心に、具体的な官民連携事例もでてきており、我が国企業を取り巻く環境はこの一年でも急激な変化を遂げている。
 経済産業省としても、ビジネスの最先端の動きを捉えるとともに、水ビジネス国際展開研究会報告書に掲げた7つの行動計画を通じ、自らリスクを取って海外に進出しようとする我が国企業の海外展開に最大限の効果が得られるよう全面的に後押ししてまいりたい。


 
 
 

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