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配信日:2010年10月20日

「今後の繊維・ファッション産業のあり方に関する研究会」報告書について

経済産業省 製造産業局 繊維課 兼ファッション政策室
繊維課長 兼ファッション政策室長

富吉 賢一


リーマンショック後の需要の激減や国際競争の激化という環境変化に対し、我が国の繊維・ファッション産業がどのように対応すべきなのかについて、研究会を立ち上げ幅広く議論を進めた。

 いわゆるリーマンショックを契機とする世界的な景気後退による需要の急速な縮小という現実は、従来からブランド力不足、非効率な流通構造、新興国の台頭による国際競争の激化などの様々な課題を抱える我が国繊維・ファッション産業を直撃しました。これは2007年に策定した「繊維ビジョン」では想定していなかった状況変化でした。そこで、各方面の有識者にご協力いただき、「今後の繊維・ファッション産業のあり方に関する研究会」を立ち上げ、産業の進むべき方向性・国の役割について改めて議論していただきました。繊維産業は、航空機用炭素繊維など大企業による最先端の素材開発から、川中中小企業によるしっかりとしたものづくり、世界でも人気を博するファッションなど、非常に幅広い分野が存在しているため、本研究会に加えて、(1)海外市場開拓促進(主にテキスタイル)、(2)ファッション振興、(3)素材・技術市場化促進についての3つのワーキング・グループを置き、それぞれ集中的に議論していただきました。

繊維産業の製造品出荷額の推移

鉱工業全体及び繊維工業の直近の生産動向

 紙面の都合上、議論の詳細は省略しますが、研究会では、「我が国繊維・ファッション産業が置かれた状況は、各地に存在する産地が消滅しても不思議ではない状況まで陥っており、これまでのやり方の継続だけでは生き残りは困難である」「生き残りのためには、事業者自らがリスクをとらなければならない」といった大変厳しい指摘・コメントが多く出されました。他方、「チャレンジする事業者にとって、アジア市場の拡大や異分野融合のポテンシャルの拡大といったチャンスも広がっている」という希望を持てるコメントを述べる委員も複数いらっしゃいました。新興国・途上国の繊維産業が実力をつけ国際競争が激しさを増す中、現実は非常に厳しいですが、市場を的確に捉え、地に足のついた泥臭い活動も積極的に行いつつ、創意工夫することのできる事業者のみが生き残れる時代に入っているのだと思います。

衣類の輸入量と輸入浸透率

 研究会報告書では、拡大するアジア市場という実態に着目し、「内需依存体質からの脱却・外需の取り込み」を大きな柱として打ち出しました。これまでの日本の繊維・ファッション産業は世界第2位の経済規模を誇ってきた国内市場を中心に組み立てられてきましたが、人口減少社会に突入した日本社会では、需要の大きな増加は見込めないため、今後の活路を経済発展著しいアジア等世界市場に見いだすことも重要な選択肢ではないでしょうか。その具体化については、「個別から連携・統合へ」を方策の一つとして掲げました。海外での新たな事業展開など中小企業一社では対応が困難な場合は、事業者同士がタッグを組んで一つのチームとしてチャレンジするといった取組が今後益々重要になってきます。その際に重要なのは、同じ目的意識を持ったやる気のある企業がチームを構成することであり、リーダー企業を中心としてチーム内での役割分担を明確にすることが必要と思われます。地域のリーダーたる企業には、チームを構成しその活動を先導する役割が期待されます。

各国のリーマンショック後の経済成長

 報告書では、その他の柱として、「トップレベルの技術を幅広い分野へ」「感性をビジネスへ・コスト競争からの脱却」などを今後の方向性として掲げました。日本の繊維素材は、炭素繊維やアラミド繊維といった最先端の素材のみならず、ポリエステルなど汎用の繊維に抗菌や消臭といった様々な機能を付加する技術に優れており、それらを環境分野や医療・福祉分野など幅広い用途(産業資材分野)に適用していくことが課題となっております。また、“クールジャパン”と言われ、日本のファッションは海外から注目を集めておりますが、海外でのビジネスに繋がっていません。こうしたビジネス化の遅れは、ファッションのみならず、日本の映画やアニメ、日本食、観光など“クールジャパン”を代表する産業共通の課題であり、経済産業省としても先ほど取りまとめた「産業構造ビジョン2010」において、海外ビジネス展開の促進など、これら感性・文化産業の活性化を強力に推進することとしております。

繊維技術マップ

各国生活者の日本製品に対するイメージ評価(PDF:153KB)

 日本の繊維・ファッション産業には、高い技術力や豊かな感性など強みと言える特質が多く残っております。激しい国際競争の中を生き抜いていくことは極めて困難ですが、これらの強みを活かしながら、必要なリスクをとって事業展開していくことができれば、日本の繊維・ファッション産業の活性化が必ず図れるものと確信しております。


 
 
 

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