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配信日:2010年11月22日

医療・介護・健康関連分野における新たな産業創出にむけて

経済産業省 商務情報政策局 サービス政策課
企画一係

藤岡 雅美


少子高齢化や国民の生活様式の変化に伴う「医療、介護、健康関連分野」のニーズの拡大等は、当該分野が日本経済の成長を牽引していく可能性を示している。新たな産業の創出により、多様なサービスが提供できる体制を構築し、成長を促進していく事が重要である。

●はじめに
 我が国は世界のどの国も経験したことのない高齢社会を迎えているが、2030年には、欧米先進国のみならず、新興国も高齢化時代を迎えると予測されている。今後、日本が高齢化時代の経済成長・社会保障モデルをどう打ち立てていくのか、世界は期待をもって見つめている。

●量的・質的に拡大する消費者ニーズと消費力のある潜在的市場の存在
 1)医療、介護、健康関連分野におけるサービスニーズの拡大・多様化

各国の高齢化率(総人口に占める65歳以上人口の推移)



 日本は、戦後、国民皆保険制度を始め、世界に誇り得る医療制度を構築してきた結果、国民の平均寿命は世界一となった。他方で、現在では、食生活の変化等を背景に、脳卒中や心臓病等の“生活習慣病”が顕在化し、今では死因の多くを占めるようになった。このような疾病構造の変化に伴い、従来の医療への期待が、疾病予防、疾病管理、リハビリ、介護予防、看取り等、広範で、個々人の生活感や人生観を踏まえた多種多様なものへと広がりを持ち始めているのである。

 2)消費の主役となりうる高齢者
 このような多様な需要に対し、全て公的負担の枠内で対応しようとすれば、財源的に供給のプライオリティ付けをせざるを得なくなり、需要に応えられない結果となる可能性がある(2015年、年金・医療・福祉等の社会保障給付費は117兆円に達すると推定)。
 一方で、同年、団塊世代全てが65歳以上となり、総額で54兆円もの退職金が支払われる。そこに、さらに年金と、この世代に蓄積される資産・貯蓄が加わることになる。実際、65歳以上の貯蓄額は、全世帯より500万円以上高い。

世帯の貯蓄分布

家計消費に占める60歳以上の高齢者の消費割合と消費額の推計

 こうした背景から、今後、我が国の家計消費に占める高齢者消費の割合は、40%台にまで突入していく。このような状況に鑑み、今こそ、消費の中心的な担い手として高齢者を捉え、「自らのライフスタイルを維持するために、医療・介護・健康関連サービスを消費する」という考え方を、我が国経済の中にきちんと構造化するべきである。
 加えて、医療・介護・健康関連サービスは内需を喚起するだけではなく、雇用創出効果が最も期待できる分野であり、産業化を推進していくべきである。
(図1:PDF 187KB)

●新たなサービスの創出事例
 健康・医療分野では、平成21年度事業によって、疾病予防等を包括的に支援するサービスの創出の芽を育てている。例えば、熊本県旧植木町では、地元の医療機関に蓄積された住民の健康データを地域のサービス事業者が活用できるようにしたことで、様々な健康サービスが生まれた。例えば、運動サービス事業者が疾病予防・介護予防等に効果のある運動サービスを、配食・給食事業者が健康状態に対応した弁当・健康メニューを、温泉旅館が温泉を使った健康療法をそれぞれ提供している。また、運動サービスの利用に応じて商店街で利用できる健康マイレージを発行することで、住民が自ら取り組みやすい環境整備も行っている。

●おわりに
 我が国は、国民皆保険制度の下、低コストで質の高い医療サービスを国民に提供してきた結果、世界一の健康長寿国になった。また、国民の生活様式の変化に伴い、医療、介護、健康関連分野におけるサービスニーズは多様化しており、公的保険制度を中心とした医療・介護等の持続的な供給を確保することは困難になってきている。しかし視点を変えてみると、このようなニーズの拡大や、消費の主体となりうる高齢者の存在は、医療・介護・健康関連サービス市場が今後大きく伸びる可能性を示している。
 経済産業省では、医療・介護・健康関連サービス産業を日本の成長牽引産業として明確に位置付けるとともに、民間事業者等の新たなサービス主体の参入を促進し、雇用や所得の創出に繋げるとともに、安全の確保や質の向上を図りながら、利用者本位の多様なサービスが提供できる体制を構築することで、国民生活を向上させていきたいと考えている。
図2:PDF 267KB


 
 
 

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