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配信日:2010年12月20日

「クール・ジャパンへの取り組み」

経済産業省 製造産業局 クール・ジャパン室
クール・ジャパン戦略担当

石原 誠太


アニメ、ファッション、食文化等のクール・ジャパン分野が今後の我が国の成長産業の一つとして発展拡大していくための方策について、本年6月に閣議決定された新成長戦略における取り組み、産業構造審議会のもと議論され取りまとめられた産業構造ビジョンでの報告を御紹介させていただきます。

はじめに

 韓国、台湾、中国をはじめとする新興国の台頭により、自動車、家電のみに頼った経済成長は難しくなっている。コモディティー化していく製造分野において、コスト競争のみでは、新興国等との競争は困難なものになっており、また金融のみで食べていけるほど日本の金融の規模は大きくない。
 このような状況下において「これから、若い人の働く場、活躍する場をどこに求めるのか」、「日本人はどう飯を食っていくか。」という課題に対し、先の6月に産業構造審議会においてまとめられた産業構造ビジョン中で、「インフラ」「環境エネルギー」「医療・介護」「先端分野」と並ぶ5本柱のうちの一つとして打ち出されたのが、この「クール・ジャパン戦略」(文化産業立国戦略)だ。同戦略は政府全体の新成長戦略においても重点分野として位置づけられている。

クール・ジャパンとは

 我々は、クール・ジャパンを「世界が共感する日本」「世界がほしがる日本」と定義し、また、そうした日本の良さや日本のDNAを我々日本人自身が再発見し、「世界の手が届くところ」に届け、「世界を呼びよせる」ための戦略をクール・ジャパン戦略として打ち出した。
 クール・ジャパンの源泉となるのは、「自然風土の中で洗練された美意識」、「伝統の保持と外来文化の受容・革新」、「成熟した消費生活・精神文化」、「海外で人気の現代文化・食文化」等の、日本に脈々と受け継がれてきた文化力、「中小ものづくり企業の匠の技」、「地域で活躍する人材力、現場力」、「伝統と技術を守る伝統工芸」等の地方や中小企業に眠る底力、「どこでも得られる最高のもてなし」、「安全で清潔な生活環境」、「丁寧な仕事とコミュニケーション」等にみられる安全、清潔、丁寧、おもてなしの心といった無形資産だ。
 技術も商品もいつか真似されるが、これらは容易に真似できないものである。日本人にとって当たり前のものも多いが、これらがもととなったアニメ、ファッション、食文化、地域産品、インテリア・日用品の分野は、外国人に高く評価され、メディアで取り上げられてきた。
 「クール・ジャパン戦略」においては、(1)日本の良さの再発見と良さを伸ばす取り組みの強化、(2)世界に届ける仕組みづくり、(3)日本への来訪促進の3段階に分けて戦略実施をしていく。これらの取り組みを通して、日本をより面白くし、世界がほしがる日本を世界に届けることで、海外ビジネス展開やインバウンドの観光振興につなげ、若者や地域の雇用創出につなげる。

クール・ジャパンの現状と課題

 海外で人気の高い日本のアニメ、ファッション、食文化だが、これらは必ずしもビジネスに繋がっていないのが現実。例えば、コンテンツの分野においても、日本のアニメ、漫画、映画は人気が高く、アニメのキャラクターに扮するコスプレのイベントは海外でも大変人気が高いにもかかわらず、日本のコンテンツ分野での利益はアメリカより一桁低く、関連商品の売上げも上がっていない。ファッションの分野では、中国始めアジアでは日本のファッション雑誌の人気が高く、ファッション雑誌の売上げ1〜3位を独占しているにもかかわらず、実際に雑誌で紹介されているファッション(=日本のアパレル産業)は売れていない。また、食の分野では、世界中いたるところに日本食レストランが有るにも関わらず、日本人オーナーの割合は1割に満たず、実際に日本食で稼いでいるのは中国や韓国資本という状況。
 この原因は、担い手が中小企業や若者で、海外進出する経営体力やノウハウがないことにある。ファッション・アパレル分野では8割が20名以下の小さな事業者であり、また、コンテンツ分野ではプログラマーの46%が30歳未満の若者。クール・ジャパンと呼ばれる産業分野の活路は海外にしかないというのは一致した認識ではあるものの、中小企業が多いクール・ジャパンの担い手たちには、海外展開の資金力、ノウハウ、人材、情報、経験が不足している。
 本来、こうした事業者の海外展開は民間により担われるべきところであるが、ロットが小さく間尺に合わないためビジネスとしては扱われないのが現状。また、これまでの政府の取り組みについても、「既存の見本市などに単発で出展するだけでは、効果が薄い。」「現場にお金が行き渡るような制度設計を考えるべき。」等の意見が出ており、10年単位で海外展開を支援する仕組みが必要。

海外展開に向けた解決策

 経済産業省では、こうした課題を解決し、海外で人気の高いクール・ジャパンを新たな輸出商品につなげ稼いでいくために、10年単位の長期ビジョンに基づいたブランド戦略、販路開拓、マーケティング、プロモーションを一貫して支援し、担い手である職人、クリエイター、中小企業を世界市場へ結びつける。具体的には、複数ブランドを束ねて、共同アンテナ・ショップを設置し、期間限定で集中的にテスト販売し、PRもまとめて行って話題を作る(例:「HARAJUKU STREET FASHION」など)。また、実際に売れることを見せ、現地小売商・ネット事業者との提携を進める。プロジェクト管理の核は現地にネットワークを持つ流通業者等が担う。
 その第一弾として、平成23年度事業では、アジアをはじめとする新興国中心に、重点市場・分野毎にコンソーシアムを公募し、海外展開の成功事例を生み出す。産業構造ビジョンにおいて、ターゲットとなる市場と分野の潜在力と、日本企業の参入可能性をまとめたところ、重点市場と分野の組み合わせが全部で約30あった(資料1参照)。それをもとに、来年度事業では、特に優先すべき10チームを選定したうえ、重点的にプロジェクトを実施していく予定。選定においては、本年11月より開催されている「クール・ジャパン官民有識者会議」で出てきた提言をもとにして優先順位を決定していく。
 実施にあたっては、民間の知恵と創意が最大限生かされるよう、プロジェクト管理はとりまとめ企業に委託し、現地に強い販売ネットワークを持つ流通事業者としっかり手を組んでやっていく。現地の流通網をしっかり掴んだ人を見つけ、彼らが核となり全体のマネージをすることがプロジェクト成功の鍵となる。
 具体的には、日本の美意識や生活をどのように海外消費者に見せるか、どの購買層に何を訴求するか、といった全体設計をしっかり行い、相手国の地元で評価が高い商業施設に出店する。現実の販売とネット販売を連動して消費者向けの試験販売を行うことで、直接的に進出市場の消費者に浸透させるとともに、関連情報サイトビジネス等サービス業の海外進出を側面支援する。こうした取り組みを通じて、海外ビジネスに長けた意欲のある若手クリエイター等を育成するのがねらい。
 ターゲット市場×分野の例としては、「東南アジア×食分野」などが候補として考えられるが、中国、台湾、シンガポール、タイ等のアジアでは、富裕層、中間層を中心に、「安全・安心」な日本食へのニーズが高まってきている。例えば、中国では日本メーカーの牛乳が「日本の安心ブランド」ということで、値段は5倍近くするにもかかわらず、売上げが順調に伸びている。また、B級グルメも高い人気で、例えば熊本発のラーメン屋が、中国やアジア、アメリカ等で現地資本と手を組み、まさに破竹の勢いで店舗の拡大を続けている。このような事例を世界中に量産し、日本がクール・ジャパンで食べていけるようにすることを目指している。

おわりに

 「クール・ジャパン戦略」とは国のブランディングをしっかり行い、日本の文化力と中小企業の底力を使い、海外の需要を獲得しようという戦略である。クール・ジャパンを一過性の流行にするのではなく、20年、30年後に日本の産業の新たな柱とするため、関係者および関係省庁と連携しながら、大きな潮流にしていく必要がある。
 
 
 

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