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配信日:2011年1月20日

2011年は日本の閉塞感を開国で打破できるか

早稲田大学 大学院ファイナンス研究科
教授

川本 裕子


国内、国際情勢とも閉塞感の強い2010年の日本だったが、2011年の趨勢は、後ろ向きの気持ちを超え、この日本を変えてゆこうという一人ひとりの挑戦意思にかかっている。

 2010年とはどのような年だったか、と問われれば、政権交代の熱気も醒め、物事が進まない、問題が解決しない、という意味で、きわめて閉塞感の強い一年だった、ということになるのではないだろうか。これはよく言われる「ねじれ」国会のせいだけではなく、政権与党の座表軸が定まらず、政策がどちらの方向に向かっているのかよくわからないということも大きい。国会において与野党が揚げ足取りや言い訳の強弁ではなく、政策内容について実質的議論をし、合意できる部分は進め、合意できない部分はもっと議論を深めるといった「進捗感」を出してほしい、そうでなければ与野党ともに国民の信を失うというのが国民の認識だったろう。
 海外情勢も厳しいものになり、国際社会は甘くないことを国民は見せつけられた。普天間基地問題で米国との信頼関係が揺らぎ、そこを見透かすように、尖閣問題では中国が、北方領土問題でロシアがこれまでにない強硬姿勢を押し出してきた印象がある。これは経済面でも同様だ。政府・日銀が一体として成長志向の政策に取り組めない国内政治の脆弱性をつかれる形で、経済ファンダメンタルズでは説明できない急激な円高が惹起された。
 2011年の注目すべきポイントはどのようなものだろうか。日本の経済に大きな影響をもたらしかねない世界経済での動揺の懸念がある。まず、アメリカでは財政赤字が制御不能になる危険が少なからずあるので、国債価格下落と金利上昇の可能性がある。また、ユーロ加盟国の債務不履行の恐れも否定はできない。それがヨーロッパ全体の金融危機につながることも大きな懸念材料だろう。これはドイツやフランスのような大国の銀行の貸付残高などのエクスポージャーがこれらの国に対して大きいからである。先進国の異常な低金利により資本が新興国に流入し、日本の列島改造ブーム時のような過剰流動性問題が再現され、新興国のインフレが急伸する恐れもある。
 このような中で、外交面では、北朝鮮・中国・ロシアなどとの問題解決の見通しが立たず、全て問題は来年以降に持ち越しだ。日本政府の優柔不断のイメージも残り、安全保障にかかわる緊張再発の可能性もある。
 日本経済について2011年のポイントを一つあげるとすると、環太平洋経済連携協定(TPP)への参加決定ではないか。参加できない場合には日本の成長期待が一気に崩れてしまう。菅首相はAPEC首脳会議の際にTPPの協議開始を表明したが、農業団体が民主党に圧力をかける模様も報道されている。中国をはじめ新興国の経済力で大きく変化する国際情勢の下、日本の国際感覚の欠如を指摘する声も多くなっている。「農業を守るか守らないか」ではなく(日本の国民のだれもが日本の農業が壊滅していいとは思ってはいない)、競争力ある農業実現のため、国内の制度・政策をいつどのようなスピードで変えていけば対応が可能になるのか、一生懸命知恵を絞るべきだろう。昨年坂本竜馬の人気が高まったのは、今の閉塞感を開国によって打ち破りたいと思う人々の気持ちの証明なのではないだろうか。この点是非2011年も竜馬にあやかりたい。
 先行きに不安も聞かれるが、2010年は日本経済のGDP成長率見込みが実質3%程度と堅実なペースだった。サッカー日本代表はワールドカップで予想以上に頑張ったし、はやぶさも帰還して月以外の宇宙からの物質を初めて地球にもたらした。さらには日本の研究者が2人もノーベル賞を受賞し、高校生の学力も少し戻っていて期待の芽もある。来年の趨勢を決めるのは、閉塞感を嘆く後ろ向きの気持ちを超え、この日本を変えてゆこうという一人ひとりの挑戦意思の如何にかかっている。


 
 
 

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