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配信日:2011年1月20日

日本経済再浮上の為の条件

株式会社 日鉄技術情報センター
チーフエコノミスト

北井 義久


ウオン安の是正と企業の余剰資金の活用が進めば日本経済は予想外の高成長が可能

 日本経済は、引き続き踊り場にあるが不透明感は薄らいできた。まず、乗用車・家電製品の一時的な需要急増にも係わらず、百貨店・チェーンストア販売額は底這いを維持している。賃金上昇により購買力が増加に転じたことが、その背景と考えられる。一時的な耐久消費財需要急増の反動を懸念する意見もあるが、耐久消費財ブームの一巡後は抑えられていたサービス・非耐久財需要が伸びを高める可能性が高い。また、住宅投資もマンションの着工増加が全体を引き上げている。冷え込んでいたマンション建設も、昨年秋以降に大手マンション業者が購入した土地を利用したマンション計画がようやく実行に移されてきたことで、最悪期を脱しつつある。さらに、フラット35Sなどの住宅投資助成政策の効果も持家の持ち直しに貢献している。設備投資関連指標では、民間機械受注(除く船舶・電力)が8月の年率10.1兆円から9月は9.1兆円に減少しているが、第2四半期平均の8.6兆円を上回っており、増加基調は維持されている。

 一方10月の輸出数量指数は、98.5と9月の101.1を下回った。輸出数量指数は5月以降横這いから減少を余儀なくされており、世界経済の拡大テンポの鈍化、5月以降の円高の影響が続き、先行きに対する不安感の背景となっている。ただし、米国経済は企業収益の回復や銀行の貸し渋り解消がようやく雇用と投資の拡大に結びつき始めている。欧州でも、ユーロ安に支えられた輸出の増加によりドイツの景況感は統一後の最高水準に達している。中国も振れは大きいものの基調として10%前後の成長率を維持しており、年明けには日本の輸出も回復に転じると予想される。従って、2011年の日本経済は踊り場から順調な回復局面に移行する可能性が高い。さらに以下の二つのマイナス要素が解消されれば、予想外の高成長も期待出来る。

 まず、ウオン安の是正により日本の輸出競争力はかなり改善する。円レートは、対ドルでは80円台前半と過去最高の円高水準にあるが、実質実効為替レートは過去40年間の平均値に近い。一方ウオンの実質実効為替レートは、過去40年間の最低水準近くにあり、円・ウオンレートもウオンは歴史的な安値水準にある。さらに、日本・韓国の物価上昇率格差を校了して円・ウオンの適正レートを算出すると、現状のウオンは30%割安との結果が得られる。この様に、円に対してウオンが極端に安い状態が続いている為、日本メーカーは韓国メーカーに対して価格競争力を失っている。さらに、97年のアジア通貨危機前には、300億ドル前後に過ぎなかった韓国の外貨準備は最近では10倍の3,000億ドル近くに達している。韓国の名目GDPは日本の20%弱に過ぎず、日本の外貨準備1.1兆ドルに比較して韓国の外貨準備は過大であり、この間韓国政府がウオン安を誘導するために、為替介入を続けていたことは確実である。この様な人為的なウオン安が解消されれば、日本メーカーの輸出環境はかなり好転する。

 第二に、企業の余剰資金が活用されれば投資・雇用が予想外に増える可能性がある。法人企業統計ベースの企業収益は10年第3四半期に年率44兆円と、06年度のピーク60兆円の73%にまで回復している。その結果、法人企業ベースでは年率25兆円のフリーキャッシュフローが生じており、結果的に法人預金残高は08年1月の158兆円が10年10月には173兆円に増加している。景気の先行きに対する不安感から企業は手元資金を増加させているとしても、やや消極的過ぎる。この余剰資金の活用が進めば景気回復に弾みがつく。


 
 
 

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