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配信日:2011年1月20日

「政界再編元年」の予感
=流動化は必至−2011年の政治展望=

時事通信社
政治部長

山田 恵資


2010年は民主党政権の真価が問われたが、国民の期待を裏切り続けた。11年に待ち受けるのは、政界再編か大連立か、あるいは自民党政権の復活か−。今年の政治を展望する。

「何が起きるか、さっぱり読めないな」。ベテランの民主党議員の一人は、2011年の政治の先行きが不透明であることを嘆いた。09年夏の衆院選で自民党に圧勝して発足した民主党政権。10年はまさにその真価が問われたが、結局は国民の期待を裏切り続けた。待ち受けるのは、政界再編か大連立か、あるいは自民党政権の復活か−。今年の政治を展望する。

◆「小沢切り」に賭けた首相
 12月20日午前、首相官邸執務室。菅直人首相は、政治資金規正法違反罪で近く強制起訴される小沢一郎民主党元代表にまくし立てた。「あなたは『国会で決めれば説明する』と言った」「何が何でも衆院政治倫理審査会(政倫審)に出てほしい」。しかし、小沢氏は「司法で話す。立法府で証言する必要は無い」と譲らなかった。
 1時間半に及んだ会談は決裂。その後首相は記者団から再会談の意思を聞かれる、「会ってみても仕方ない」と言下に否定した。小沢氏と反小沢側の対立が決定的になった瞬間だ。首相は小沢氏の国会での証人喚問招致も辞さない構えで、さらに小沢氏への離党勧告や除籍処分も首相は視野に入れている。
 首相が「小沢切り」に走る最大の理由は野党対策だ。参院で与党が少数派に甘んじる「ねじれ国会」を乗り切るには、鳩山政権崩壊まで、民主党のドンとして君臨してきた小沢氏の排除が不可欠だ−と考えている。その背後にいたのは、反小沢の急先鋒である仙谷由人前官房長官だった。
 昨秋の臨時国会では、仙谷氏と馬淵澄夫国土交通相(当時)への問責決議が参院で可決した。野党側は両氏が辞任しない限り、通常国会の審議に応じない方針を示していた。そこで首相は、自ら小沢氏説得に自ら乗り出すことで「脱小沢」をアピール。それによって内閣支持率を回復させ、国会審議の場に野党を引き戻す−。それがこのトップ会談の狙いだった。

◆公明党対策がカギ 
 特に、菅政権が重視するのは公明党からの協力取り付けだ。現在、参院では与党が110議席と過半数(122議席)に12議席足りないが、19議席を有する公明党の同調を得られれば、過半数を超える。こうした状況を踏まえて、公明党は当初、公明党との連携を視野に入れていた。ところが、小沢氏の「政治とカネ」の問題を岡田克也幹事長に「丸投げ」したことや、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件での不手際などが響き、内閣支持率は続落。これを受け公明党は10年度補正予算案だけでなく、民党提出の問責決議でも賛成に回った。「民主政権がこんな体たらくでは、着いて行けない」。公明党からはこんな声も聞かれた。
 そこで菅首相にとって「小沢切り」は、支持率回復の最大のカードだったわけだ。ただ、小沢氏側の反発によって、党内亀裂という大きなリスクを抱え込むことにもなった。
 菅政権が仮に「小沢切り」に成功し、支持率が回復すれば公明党との連携に道が開かれる。この場合は、辛うじて菅政権は低空飛行ながら、生き延びるだろう。しかし、問題は支持率が実際に上昇するかだ。支持率が低迷したままでは、公明党との連携は困難となる。予算関連は通らなければ、民主党政権自体が瓦解する可能性が高まる。あるいは、どうにか野党の協力を得て予算関連法案を処理しても、統一地方選で民主党が大敗すれば菅政権は行き詰まり、首相は退陣に追い込まれる可能性がある。

◆政界再編か大連立か
 仮にポスト菅体制でも民主党が「脱小沢」を貫けば、小沢グループは党を割って出ることもあり得る。その場合、自民党は民主党との大連立を仕掛ける展開が想定し得る。自民党内は谷垣禎一総裁を含めて、大連立には否定的な立場が多数派だが、「小沢抜き」なら大連立容認派が増えるだろう。ただし、この大連立はいずれ衆院選までに解消することが前提だ。
 また、民主党政権に小沢氏の影響力が残るなら、自民、公明両党は民主党政権との対決姿勢を続けることになろう。当然、予算関連法案の成立は極めて難しくなる。首相は結局、野党側の協力を得ることと引き換えに、早期解散に踏み切らざるを得なくなるかもしれない。その衆院選ではかなり高い確率で民主党は敗北し、政権は自民党に戻る−。民主党にとっては悪夢のシナリオだ。
 年が明け1月14日に菅首相が行った内閣改造・民主党役員人事。内閣の要だった仙谷氏は閣外に去り、代わって仙谷氏に近い枝野幸男氏が官房長官の座に就いた。両氏とも反小沢の急先鋒である。同時に、財政再建のための消費税率引き上げに熱心な、元自民党幹部の与謝野馨氏を経済財政担当相として入閣させた。その眼目は「脱小沢」の継続と、消費税引き上げへの地ならしである。菅首相はこの2つのカードを使って、社会保障制度維持と消費税引き上げを含めた抜本的な税制改革を進めるため、野党側との超党派協議を実現したい考えだ。
 しかし、与謝野氏の起用は裏目に出る可能性もある。菅政権に一本釣りされた与謝野氏は自民党にとって「裏切り者」だ。24日召集の通常国会で、自民党はとりわけ与謝野氏をターゲットに攻勢を強めるに違いない。そうなれば、与野党協議どころか与野党対決の構図が一段と激化し、菅政権は春先に行き詰まり、総辞職か衆院解散・総選挙に追い込まれる展開もあり得る。
 一方で、自民党が政権を奪還しても、長期政権となる可能性は小さいだろう。党内改革を怠ってきたからだ。自民党政権が復活しても、やはり早晩政界は再編に向かうのではないか。
 2011年は「政界再編元年」として政治史に残る−。敢えてそう予測する。


 
 
 

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