最新号 メールマガジンの登録・解除・変更 バックナンバー お問い合わせ

配信日:2011年3月22日

農業産業化支援による地域経済活性化

経済産業省 地域経済産業グループ 地域経済産業政策課

小林 弘幸


地域を支える重要な産業である「農業」を持続可能な発展を遂げられるようにすることは、日本全体の発展において重要なことである。以下、そのための基本的な考え方とその方向性について記載しています。

 農業は、食に関わる産業であるとともに、地域を支える重要な産業である。農業は我が国の将来における有望な産業の一つと考えられるが、近年、就業者の高齢化、後継者難、低収益性など、諸課題が指摘されている。また、長年国内のみに注力し、広く海外の需要を開拓して輸出に向かう体制づくりの努力を怠ってきたことも事実である。今後の発展のために、20年後、30年後の姿を展望し、それに基づいて、若い人材が参入し、収益を拡大し、我が国を支える産業となっていくよう、環境整備を行うことが求められている。
 このためには、農業を巡る制度面での環境を整備することはもとより、それと同時に、我が国の他産業における経験をも参考に、農業の産業化、すなわち、我が国農業が収益を上げながら事業として持続可能な発展を遂げられるようにしていくことが必要となっている。
 このような中、昨年11月に「食と農林漁業の再生実現会議」が設置され、持続可能な力強い農業の確立に向けて、「農林水産業の成長産業化のあり方」等について検討が行われたところである。
 これを踏まえ、経済産業省では、農業の産業化について検討するため、昨年12月に「農業産業化支援ワーキンググループ」を設置し、経済団体等とともに本課題について検討を行い、関係者の議論に資するべく、考え方と方向性について以下のとおりまとめました。

1.農業産業化支援の基本的考え方

1.農業の産業化について、個々の主体にとっては事業経営化するということでもあり、事業経営への支援を徹底するため、他の産業と同様に、中小企業政策の活用を図っていく。
2.農業が国内の産業群と連携しながら共生し、相乗的な発展を実現するよう、製造業などの技術や経営改善等のノウハウの導入を抜本的に強化する。
3.ダイナミックに成長するアジア経済との連動が、今後の我が国全体の発展の重要な要素となる。農業分野においても、急速に拡大するアジア市場への輸出の拡大に向けて、我が国の農産物の輸出促進策を強化する。

2.農業産業化支援の方向性

(1)農業への「経営」導入
農業も、通常の事業であり、市場が求める売れるものを作ることが、発展の基礎である。
1. 常に変化し続ける消費者のニーズに合致した新商品の開発力。
2. 販路開拓を行うためのマーケティング力。
3. 経営・財務の的確な管理、資本の増強、知識の獲得、及び、市場ニーズの把握等に基づく戦略的な経営判断力。
このような「経営力」を有する、プロの農業経営者の育成強化に向けて、大胆に支援策を講じていく必要がある。

(2)消費者と農業をつなげる
農業者と消費者をつなぐ流通は、農業の産業化において極めて重要な鍵となる。誰に、何を、いつ届けるかの戦略は、付加価値を確保する上で最も基本である。産業が収益を上げるためには、意図して高付加価値化やブランド化を図ることが不可欠である。
農業においても、ブランド化や高付加価値化を図った上で、農産物をできる限り減損させることなく消費者に届けるとともに、効率的な流通システムを構築することにより、農業者の利益を確保していくことが必要である。また、それは消費者利益の増進にもつながるものとなる。
しかしながら、現状では、農業生産者自らが販路開拓を行うことは少なく、農協や卸売市場が主たる役割を果たしてきていると言われている。
こうした下では、生産者は消費者ニーズに関する情報から遮断されがちであり、消費者のニーズに合った商品の創出や高付加価値化を進めにくい。このため、農業者を消費者に直接つなげていくことにより、市場の多様なニーズをしっかりととらえ、消費者の求める新商品を創造することで、高付加価値化・ブランド化を促進するとともに、新たな売り先を拡大することにより、農業者の高収益の確保を実現する。
既に大消費地に近接した地域では、農業者自らが、農協を介さない自律的な販売ルートを開拓する動きが出てきている。また、流通産業界と連携し、より効率的で収益の拡大に繋がる流通システムを築く動きもある。さらには、商社との連携も進められている。

(3)技術革新や「カイゼン」ノウハウ等を農業へ導入する。
 製造業が国際競争力を有するに至る過程では、先端的な技術革新を実現するとともに、生産の現場における作業の見直し活動、いわゆる「カイゼン」により、飛躍的な生産性の向上が図られてきたところである。
 農業においても、生産性向上の実現のため、最新技術の導入支援、生産コストの低減、作業効率の向上、情報技術の活用を図る。
 さらに、生産現場のみならず、流通、小売等の各段階においても、効率的な流通システムを構築する。

(4)生産現場で利益が出る体質を作る
 産業の持続的発展のためには、付加価値の向上とともに、生産コストの引き下げが当然必要となる。
 このため、まず、農地集約の円滑化を通じた生産規模の拡大を推進することが重要である。
 さらに、生産コストに占める割合の大きい肥料、農業機械等の農業資材について、低コスト化を図る。
 また、バイオマスエネルギー等の農村に賦存する再生可能エネルギーの効果的な利活用を推進する。

(5)地域を世界につなげる
 国内市場の長期的な縮小が見込まれる中、海外市場、特に急速に拡大するアジア市場への輸出は、我が国農業の今後の発展に大きく影響する鍵となる。攻めの農業の実現も、輸出拡大の成否が左右すると考える。
 農産物の輸出は、農業生産の拡大により我が国の食糧自給率を引き上げるのみならず、ロット拡大による生産・流通コストの低下、国内の需給ギャップ懸念による値崩れ防止にも大きく寄与する。
 中長期的には、競争力ある農産物の輸出が大規模に行われ、農業生産が拡大するとともに、農家所得を大幅に引き上げる可能性もある。
 このため、国内生産から海外販売までのあらゆる段階において徹底した対策を講じ、必要な条件を整え、ボトルネックを克服することが肝要である。また、海外で実績のある品目別輸出促進団体などを参考としつつ、我が国において輸出を担う民間主体のあり方を検討する必要がある。
 その際、国内の地域をよく知る「地域プロデューサー」、農業者の事情をよく知る農協、中小企業の海外展開支援に積極的に取り組んでいるジェトロ及び中小機構等の関係団体、ノウハウを有する企業等による緊密な連携が期待される。

(6)産業界との連携・協力の強化
 農業が一層強い産業になるためには、産業界の協力が重要な役割を果たすと考えられる。具体的には、まず、生産・流通・販売・輸出等の事業段階におけるビジネスベースでの連携を深化することにより、ともに付加価値の増大を図ることが有効である。
 また、経済界と農業界との連携・協力等の推進などにより、産業界に従事する人々と農業・農村とのつながりを深める。これには、産業界それぞれの立場での創意の発揮が期待される。
 先般、日本経団連では、「元気なふるさと共創プラン」(仮称)を発表し、農業界との連携・協力関係の一層の拡大・強化を表明したところであり、このような動きを歓迎するとともに、当省としても必要な支援を行っていく。

3.制度環境の整備について
 強い農業、攻めの農業の実現のためには、これまで述べたような産業化支援の方向性に加えて、産業としての発展を可能とする制度環境の整備が不可欠である。
農業に関する支援策は、付加価値向上・競争力強化や輸出促進などの産業政策的な産業化支援策と、中山間地などの条件に鑑みた地域政策に分けて考える必要がある。
 また、流通に関しても、現在、農協の果たしている役割が大きい実態に鑑みれば、産業化への協力も強く期待したい。


 
 
 

〒105-0001
東京都港区虎ノ門1丁目1番20号 虎ノ門実業会館2階 一般財団法人 貿易研修センター
TEL:03-3503-6621
FAX:03-3501-0550
E-mail:iist-emg@iist.or.jp